この間、自治体クラウドについていろいろ考えてしまったので、思うところをつらつら書いてみる。
クラウドの論点は、いろんなところでズレやすい感じになっているが、HaaS(IaaS)やPaaS、SaaSがごちゃ混ぜになったり、パブリッククラウドとプライベートクラウドの区別なく語られるケースも多くて、議論が散漫になるよね。。。
自治体クラウドを導入すると、何が良いんだろう?
今「自治体クラウド」として多く語られていて、長崎県などが導入実験しているのは、自治体がクラウドサービスを構築する「プライベートクラウド」。この場合、よく言われる「データがどこにあるかわからない」「誰がどう管理しているのかわからない」というような、クラウドでよく問題視されるようなセキュリティやガバナンスの問題は、だいぶ小さくなる。何せ、今まで通り、システム基盤やデータは、クラウド構築者(自治体)が保持することになるのだから。
プライベートクラウドを構築して、いろんな自治体に共同利用してもらうことで、固定費に対するスケールメリットを出したり、業務の標準化による効率化を行おう、というのが狙い。あと、市民サービスの均質化もあるかも。
Weekly Memo:動き出した自治体クラウド市場 (1/2) – ITmedia エンタープライズ
財政に余裕がないんだ。税金だし有効に使わなきゃいけない。クラウドってそういうのに役立つの?
役立つはず。上記の通り、利用側は利用料を支払う代わりに、システム構築費や運用費は不要になる。安めのPCとブラウザさえあれば、業務は済んでしまうかもしれない。ただし、規模の小さい自治体は、注意が必要になる。都道府県CIOフォーラムでも言われているが、現在の目安では10万人規模はないと、コストメリットが出しづらいようだ。今の現状から見ると、長崎県の事例のように、広域自治体が構築して、基礎自治体や他県に共同利用を求めるのが、バランスとしては良い気がする。
ハードウェアやOSなど、持っている資産を最小化することが目的なら、いきなり自治体クラウドを考えるんじゃなくて、民間のクラウドサービスを利用したり、仮想化でハードウェアリソースを集約するような動きから検討するのも良い。何十とシステムを保持している自治体なら、一定の効果は出せるかもしれない。
どうすれば自治体クラウドは実現できるの?
ハードルはいろいろ有る気がする。まずは、複数の自治体が方向性をひとつにすること。自治体クラウドは、誰かが構築して、それを利用する複数の誰かが必要になる。つまり、需要と供給がちゃんとそろわないと、成立しないことになる。「僕が作ります」とか「あなたが作ってくれたら、ちゃんと利用します」という流れが、自治体間で形成されることがスタートになる。
次に大きなハードルに思えるのは、業務の標準化。自治体の業務なんて、だいたい一緒でしょ?みたいなイメージがあるが、どうやらそうではないらしい。どこにでもある、財務系の業務をとっても、各自治体のこれまでの慣習や担当者の属性によって、微妙な違いがあるそうだ。こういう小さな差異が、システムを使用する上では結構支障になる。大小あるだろうけれど、日ごろの業務が変わることによる混乱や抵抗に対して、それを擦り合わせる調整コストを無視することはできない。これをどうクリアするかも、大きな課題だろう。
とりあえずこんなもんかなあ。
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