格差社会では、都市に移り住めばいい

アゴラ : 「地域間格差」はもっと拡大すべきだ – 池田信夫を読んで、なるほどとうなってしまった。
 
 
人が移住する理由は受動的
 
岐阜に移り住んでから、ふと、人が移動する理由を考えてみた。この間、都道府県の所得格差を調べてみて思ったが、人が効率を求めるならば、格差を訴える前に、その場所に移り住んで、高い所得の恩恵に預かるのが合理的な行動だ。
 
しかし、現実はそうではない。小さい頃に住んだ場所、実家が近い地域、会社の就職先、転勤先。実際にこうやって書き出してみると、人が住む理由は、結構受動的。

この人口の都市集中が都市と地方の格差を拡大したことは事実ですが、それがなぜ悪いのでしょうか。格差が問題なのは地域ではなく、個人です。いくら村がさびれようと、移動の自由があるのだから、職のある都市に移住すればいい。人口が減って困るのは、村役場の公務員だけです。
アゴラ : 「地域間格差」はもっと拡大すべきだ – 池田信夫

地域間格差が問題視される論理は、そもそも「都市も地域もある程度平等でなければならない」という前提に立っている。それが正しいかどうかを根詰めて議論してもキリがない気がするが、マクロ的視点でみれば、無理やり平等にしなくても、人は良い環境を求めて移動する、ということだ。
 
移住はしたくないけど、良い生活はしたいから税金で助けてください、では成り立たない。郷土愛で残るのも結構だが、資本の効率性を国家的視点から考えると、人を集めてコンパクトな都市を形成し、情報も資産も労働力も集約させることが、「強い都市」の形だろうと思う。これは、実際に東京に住んでみた経験から思うことだ。
 
 
日本の都市は公共投資が低いのか

たとえばロンドンから郊外に出ると、建物がまったくなくなり、田園風景が広がります。これはゾーニングによって都市の境界を決めているからです。ところが日本では、東京からどこまで郊外に行っても、切れ目なく住宅が続きます。これは大規模な戦争を経験しなかったため、城壁としての都市がなく、農村の田畑の上にそのまま家が建ち、スプロール的に都市化したからです。このため薄く広くインフラが必要になり、公共投資の効率が悪い。高速道路や新幹線や光ファイバーを津々浦々まで引く必要はないし、財政的にも不可能です。
アゴラ : 「地域間格差」はもっと拡大すべきだ – 池田信夫

公共投資の効率性については、ちゃんと考えたことがなかったな。言われてみれば、そういうゾーニングは行われていないし、コルビジュエや他の人たちが唱えたような、都市形成の論理についても、日本ではあまり考えられてこなかったイメージがある。
 
ただ、日本も昔は城下町があり、囲いがあり、ヨーロッパとかと同じようにゾーニングが行われていたと思うのだけれど。どこから変化してしまったんだろうか。明治維新の改革からだろうか?それとも戦後の高度経済成長からか?調べてみても面白いかもしれない。
 
 
結論:主体的に住む場所を選ぼう
 
それぞれの人が、いろんな理由があって住む場所に住んでいると思うのだが、資本の制約がある以上は、万人に平等に、とはいかない。田舎で残りたいのであれば、多少の所得の低さや社会インフラの未熟さは、受け入れなければならない。民主主義や資本主義は、完璧な社会システムではないけれど、それに代わるベターな仕組みが開発されていない限りは、この現実は前向きに受け止めるべきである。
 
そういう自分の状況を思ったときに、いろんな事情はあったにせよ、自分は自分の場所で、東京から岐阜の場所に移り住んできた。特に後悔も不満もないし、穏やかな空気ときれいな夕焼けに、心が豊かになる気さえする。
 
自分の人生なのだから、住む場所も自分で選べばいい。

クックパッドに学ぶ徹底した顧客思考

condesign / Pixabay

最近テレビにも取り上げられている、クックパッド。本も結構評判よかったので購入して読んでみた。率直な感想としては、結構面白い。なんでこんなにメディアに注目されているか、がよくわかる。感じたことをいくつかメモ。

会社に自分の人生を預ける恐怖

クックパッドの社長佐野さんは、就職するときに、自分の人生というか金銭的バックアップを両親に依存していることに気づく。そして、どこかの企業に就職することが、自分の人生を会社に預けることになる、ということに恐怖を感じた、という言う。それが起業に踏み切る一因になったというのだ。

いずれは、自分も今の会社を離れると思うと、こういう考え方は、背中を押してもらえる。そう。自分の人生は自分でコントロールするべきだ。

説明が不要なまでに追求した「分かりやすさ」

社長佐野さんの顧客思考が徹底している。600万人というユーザに利用されていることははったりでもはりぼででもない。「料理を楽しむ」ことを助けることが目的、という分かりやすいビジョンを定め、そのビジョンに従いながら、試行錯誤して今のサイトを築いてきたことが、この本を読むことでよくわかる。

サイト構成やユーザのレシピの見やすさ、レシピのアップ方法の全てが、ユーザが直感的に理解でき、楽しめるよう工夫されているらしい。また、サイトのレスポンスも非常にこだわっており、実際に表示してみたが、実際に速い!これぐらいスピードがあれば、ストレスは感じないだろう。

説明を要している時点では、提供する側のエゴが入っているのかもしれない、というのも名言。説明不要なまでにシンプルに、分かりやすく、を追求する。

 

自分は、どこまでわかりやすく、相手に伝えているだろう。システムを提供するときも、それを追求することが、顧客の満足につながるのだ。

やることにはちゃんと意味づけをする

この間「決断力はなぜ鈍るのか」で、ビジョンの重要性について書いたが、やはり重要なのだと、この本を読んで改めて考えさせられた。この本では結構あっさり書かれているが、クックパッドは、ユーザが料理を楽しむことを目的として事業を行っており、それを追求してきたことで、今の状況があるように思える。

つい最近、小宮一慶さんの「一流になる力 ビジネスで勝ち残るための教科書」を読んだが、そこでも「経営者はビジョンを持たなければならない」ことを強く言っていた。だから、なんかやたら最近そういうことを考える機会が多い。

 

「で、その目的って何?」とか、やることの意味、意義みたいなことを、ひとつひとつ追求していかないと、組織は惰性で動いて、「過去のやったから」「他もやってるから」「何となく必要かなって」みたいな発言が平気で出てきたりする。それを戒めるためにも、ちゃんと意味づけしないといけない。

クックパッドは、何事に対しても、そういう姿勢を貫いているのだろう。意味づけをすることで、方向性がぶれず、着実に進めるのだ。過去に自分の上司が、「Why?は結構考える人が多いけど、So what?も同じぐらい重要で、これができてる人が少ない」と言っていたのを思い出した。

 

というわけで、自分は料理をしないけれど、クックパッドは素敵なサービスだろうし、その経営マインドを好きになりました。

道路公団は民営化したんじゃなかったっけ?

高速道路1000円。少なからず、その恩恵を受けた1人ではあるが、はてさて。道路公団って、民営化したんじゃなかったでしたっけ?なんで、価格設定の権限を国が持ってるんでしょうか?疑問。
 
同じ疑問を持ってる人がいたので、即解決。正解は、国が株式の100%保有者だから。
http://sooda.jp/qa/164266
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/090412/trd0904120801001-n1.htm
http://oshiete.sponichi.co.jp/qa4793846.html
 
 
さて、ETC導入とか夜間割引とかを導入して、少しずつサービスの多様性を打ち出してきたようにみえたけれど、この1000円政策は、なにを財源にしてるんでしょう?自分たちで値引き分を補填して返していく?いやいやいや。税金で補填されるらしいですよ。
 
これを調べていていろいろ思い出したけれど、道路公団民営化をする際には、莫大な借金は、自律経営を行うことで、少しずつ返済していく、税金投入はしないって言ってなかったっけ?
 
2年間限定の施策で、その間かかる費用は、5000億円/年らしい。長期もしくは永久に1000円であれば、流通コストの低下にも寄与するとも思うのだが、2年限定ということは、そんな効果も期待できない。本当に、「安くしてあげるから、皆さんおでかけしなよ」ぐらいのレベルでしかない。
 
本当に、こんなお金の使い方で、「1000円になった。ありがたい」と両手挙げて喜んでいいんだろうか。いや、実際1000円になると嬉しいけどもさ。それでも、そういう小さな喜びの先に、1兆円も税金が使われているのかと思うと、虚しさを感じてしまう。

道路の権力 道路公団民営化の攻防1000日
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闘う経済学

竹中平蔵さんの著書。この人は、難しいことを分かりやすく説明することにかけては、本当秀逸。久々に食い入るように読んだ。特に気になったところをメモ。
 
 
政府が公共事業を行っても、経済効果は低いことは証明されている
 
GDPを上げることは、国際競争の中で日本が勝ち抜き、良い生活を享受するために必要なことだが、GDPは数式モデルによって、何をどれぐらい投入すると、いくらぐらいの経済効果(GDPをどの程度押し上げるか)が、検証されているそうだ。
 
そして、政府支出がどの程度GDPに影響を与えるかは、実際のこれまでの数値から、1.2倍程度の効果しかないことがわかっているそうだ(過去は3倍程度)。これは、金融自由化とグローバル化による影響が大きいと思われる。
 
高度経済成長などでは、政府支出がGDPの高い押し上げの一因だったようだが、現在はもう効果がないことが証明されているのだ。だから、バラマキ政策を唱えるような政治家は、本当に時代遅れであると判断すれば良い。波及的に経済効果をもたらすものではないのだ。
 
 
地方分権が必要な理由
 
ものすごくシンプルに説明されているので、なんで地方分権が必要かが理解できた。資本主義・民主主義では、費用と便益はほぼ必ず一致している必要がある。それが、公平である、ということもあるし、費用を負担する人が享受する便益の価値を、ちゃんとチェックするからだ。
 
しかし、税金は違う。支払っている税金のうち、国が6割で地方が4割。そして、税金の支出については、国が4割で地方が6割。つまり、収入と支出が一致しておらず、国から地方にお金を移動させる必要がある。一般的なイメージでは、ここに中央の利権が渦巻いている、と言われている。
 
こういう状態が、国民・地元民の無関心を招き、また国と地方がそれぞれ責任を押し付けあう状態を招いている、ということだ。税収が少ない自治体には、ある程度補填が必要だが、自立と補填のバランスは考えないといけない。どういうバランスが最適なんだろう。
 
 
経済学は政治に対し、役に立つらしい
 
世の中には、その分野では当たり前のことが、一般的なイメージや思い込みで歪曲されて、間違った道理が平気で唱えられたりする。経済だってそうだ。確かに、原理は難しいことも多いのが経済分野だけれど、竹中さんみたいに上手に説明してくれれば、経済が面白く感じる。
 
経済学者が政治家になった、日本では稀有な例であるし、その人の経験が惜しみなく語られているので、読んで損はないかと思う。

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運用・保守体制に不足するスキル

 

ITシステムの運用・保守体制においては、決まった定型作業を実施することが多いため、オペレーター気質の人が向いているというイメージが強い。

もちろん、それも一理あるのだが、それよりも重要なスキルが、現場では不足しているように思える。それがコミュニケーション能力だ。その理由は、現場では次のような状況に対応する必要があるからだ。

 

ユーザの要望は完璧ではない

予め決められた作業や、ユーザの言われた通りの作業を行えば全ての作業が完了、という現場は少ない。ユーザの中にはシステムに不慣れであったり、ITシステムに対する知識が不十分な人もいる。なので、誤解をして依頼内容を伝えてくる場合もある。また、ユーザも人間なので、単純に間違えることもある。

こういうときに、ユーザの依頼の意図や背景を丁寧に読み解く必要がある。設計書や過去の書類を確認したり、場合によってはユーザに直接ヒアリングもする。それぐらい、作業内容を理解して実施するべきなのだ。さもないと、思い込み・決め付け・誤解が生じ、ささいな作業ミスから、重大な障害を引き起こすことだってある。

ユーザの要望を正確に汲み取るとき、効果的かつ煩わしさを感じさせない、ユーザとのコミュニケーションが重要になる。

 

ITシステムには連携先がある

ユーザの業務は、大抵の場合ひとつではなく、複数のシステムで成立している。それらはデータの連携を行っており、それぞれのシステムは別のベンダーが管理していることが多い。

この状況が何を作り出すかといえば、連携部分に変更が生じたりすると、必ずベンダー間で仕様やテスト方法をつめなければならない。ここで、明確な責任範囲と、確実なシステム変更を達成するために、コミュニケーションスキルが求められる。お互いのベンダーの思い込みや決め付けを回避するのだ。

さらに話をややこしくするのは、各システムのユーザ側の主観が異なる部局だったりする場合。こういうときは、例えば2システムに関係する4者(自分、自分の主管ユーザ、連携先ベンダー、連携先ベンダーの主管ユーザ)がやり取りすることになり、情報伝達の交通整理を行わないと、コミュニケーションロス、食い違いなどの、深い混乱を招く恐れがある。

 

運用体制に外注先ベンダーがいる

IT業界はゼネコン体質だと言われている。それは開発でも運用・保守でも変わらない。運用・保守体制の中に、外注先ベンダーが加わることがあるのだ。

この場合、自分の会社の論理が通じなかったり、微妙な距離感が出てしまうので、自分の立ち位置をうまくコントロールし、円滑なコミュニケーションを実現することが重要だ。社内で通じる「あ・うんの呼吸」の類が通じないこともあるので、十分な説明を心がけたり、外注先の会社・組織の理解を深める努力も必要だ。

 

結論は・・・

端的に言えば、運用・保守を行う上でもたくさんの関係者がおり、臨機応変で柔軟な対応が求められる。また、各関係者に説明責任を果たさないと、自分の信用は失墜することだってある。

だから、人を雇う側の立場の人は、必ずそういうコミュニケーションを発揮できる人がいるか、考えてみましょう。雇われる側の人は、関係者がどれぐらいいて、それぞれに対してどういう立ち位置で接触するかを考えてみましょう。どう接することが、円滑な作業進捗に寄与するでしょうか。

 

プロジェクトメンバのモチベーションを向上する方法

運用・保守におけるプロジェクトメンバは、モチベーションを維持するのが難しい。長期化するプロジェクト、大半を占めるルーチン作業。そして、「できて当たり前」の空気をユーザから前面に出され、ミスをしたら怒られる。
 
こういった状況の中で、どうやってモチベーションを維持・向上させればよいのか。

 

一般的なモチベーションのきっかけ

一般的に言えるモチベーションの向上策は、「金銭・賞与で評価する」「ポジションで評価する」がほとんどだ。しかし、運用・保守では金銭はそんなにリッチじゃない。この間書いた記事にもあるように、コスト圧縮力が強く働くからだ。
 
また、ポジションでの評価も難しい。運用・保守で何百人規模、なんてのはほとんどなく、数名から、多くて数十名で運用するのがほとんどだ。そうなると、ポジションがほぼ固定になる。さらに、長期プロジェクトとなるため、余計人の移動がない。よって、ハイレベルな仕事を与えてストレッチ、という状況は作りづらい場面が多い。

 

新しい何かを取り入れようぜ

ただ、手をこまねいているだけでは芸がない。お金がなくても、人の移動が少なくても、意識を変えるためにできることは多い。考えられる点を列挙してみた。

①最近のIT業界の情報を入手してますか。自分だけじゃなく、同じプロジェクトのメンバともそれを共有できてますか。

日経コンピュータでも良いし、ビジネス本などでも良い。それがプロジェクトの現場にあって、みんなが手に取り、休憩中などに読める状態にする。知るだけど行動や考え方が変わることがある。情報に触れ、それを共有する場があると良い。

②勉強会やイベント情報は入手していますか。

勉強会などの情報は、ネットで探せばすぐに見つかる。ここで一番大事なのは、「行くこと」ではなく、「行くつもりで情報を集める」ことにある。とにかく行動してみる。もちろん、自分のキャリアに合致する勉強会があれば、行く方がいいに決まっていますが。
http://jibun.atmarkit.co.jp/lcom01/special/benkyo/benkyo01.html

③IT資格の取得に向けて勉強してますか。

ITは、情報処理技術者試験で、体系的にランク・専門が分類され、スキルアップの基準としてわかりやすく設計されている。今の自分に合致する資格を選び、それを取得することで、知識の向上、自分ブランドの向上につながる。プロジェクトを出てからも有効に使えるのもメリットだ。また、それ以外にもOracleやSAPなど、専門ベンダ試験も豊富であるため、今の自分に有効な資格、というのは、探せばあると思う。さらに、お客さんの業務に関連する資格を取得してみるのも面白い。法律や流通、販売に関する資格も、世の中にはたくさんある。

④お客さんの業務や立場は本当に理解していますか。それに関する情報は定期的に取得していますか。

お客さんがメールマガジンやブログをやっていたら、購読する。お客さんの取り巻く業界情報なども、日経新聞やGoogleアラートなどから、積極的に入手する。これだけでも、お客さんの業務理解が深まり、コミュニケーションが円滑になったり、その業務を支えるITシステムを運用している自分たちに、社会的な意義を見出すような観点が生まれるかもしれません。

⑤「オフ」で会話できる機会は、どれぐらい作ってますか。

「飲みニケーション」ではないけれど、仕事の場以外で上司や同僚と会話できる機会は設ける方が、やはりコミュニケーションは円滑に進む。それは飲み会でなくても、ランチでも良いし、コーヒーブレイクでも良い。タバコ部屋だって、立派なオフだ。(個人的にはタバコは吸わないが、気分転換とコミュニケーションのきっかけとしてはプラスであり、そのためだけに吸おうと考えた時期もある。)なんだったら、「オフ」な内容のメールを送るのだって、立派なコミュニケーションだ。コミュニケーションは、知識の取得、意識の向上、気分転換を促す良い手段である。コミュニケーションは、適度にないと閉塞感が漂い始める。
 
 
とりあえず、こんなもんだろうか。そんなにお金をかけなくても、できることはあるんだと改めて思う。
あとは、「自分が変えていく」という信念ぐらいですかね。必要なのは。

ITシステムの保守・運用において陥がちな罠

ITシステムは、よく開発が注目されるが、保守・運用も実は重要なポイントである。
なじみがない人にとっては、ITシステムの運用といわれてもイメージわかないかもしれないが、
地味ながら、世間的には結構な金額が投資されている世界である。
(ITコスト全体の7~8割を占める、ともいわれているし、あの社会保険庁のシステムの運用・保守費は800億円/年ぐらいらしいです。民主党参議院議員 ふじすえ健三: 社会保険業務センターの視察)
 
保守・運用で何をやるかといえば、ざっくり次のようなことである。
・障害対応(作ったシステムにバグがあった場合に)
・作業依頼(ユーザがアプリ上から操作できないが、実施する必要があるものを行う。データ登録等)
・仕様変更(法律や社会情勢が変わったり、使用しながら改善箇所が生じた場合に、プログラムを修正)
 
他にもユーザに対する研修のサポートも行ったりする。
 
さて、本題。
運用・保守において陥りがちな罠として、大きく4つ挙げてみる。
 
・慣例主義になる
 「過去同じ手順でやったから大丈夫」みたいな、慣例主義的な状況に陥り、より効率的・効果的な見直しに対する動きが著しく小さくなる。
 
・ITコスト減少圧力を受けやすい
 契約する年数にもよるが、契約更改時には必ず、「作業に慣れてきてるんだから、次の契約では10%以上は削れるだろう」みたいなコスト減少に対する圧縮が必ず生じる。これ自体悪いことではないし、一般的な理論としては間違っていないが、総合的な状況を踏まえて、本当に削減して運用・保守できるかは注意が必要である。
 
・作業メンバの確保
 運用・保守は、ある程度長期(2~3年以上)の要員確保が望ましい。なぜなら、システム技術に加えて、必ず顧客の業務理解も求められるし、大抵は業種に限らずどこでも業務は1年間のリズムでできあがっているので、2年以内で辞められてしまうと、費用対効果が低くなるからである。一方で、IT業界は人のサイクルは早い。
 
・作業メンバのモチベーション低下
 運用・保守は、全てではないにせよ、ルーチンワークが多い。そうなると、やはりモチベーションは低くなりがちである。システム開発は、仕様を調整して、開発して、テストして、テストさせて、というフェーズの切れ目があり、流れと勢いがあるが、運用・保守ではそれがほとんどない。
 
 
ざっと思いつくのはこれぐらいだろうか。
これらについて、効果的に手を打てているところは、実はあまりないのではないだろうか。
ユーザから見えないところで、結構綱渡りで作業を実施したり、人のやりくりをしてしまっているプロジェクトも多いと思われる。
 
まずは、こういう問題が存在することを、情報システム部門や運用・保守を担うITベンダの作業メンバは、認識することから、安定的な運用体制の構築が始まる。
今後は、もうちょっと具体的な解決策なんぞも含めて考えてみたい。

 

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地方に住むことは、収入面で損なのか

上京してからわずか3年で地方に帰郷。やはり全然生活スタイルが違う、というのが実感です。
東京では、駐車場代が高いから車なんて贅沢品だったし、持たなくても十分移動は便利でした。それに、買い物だって、近くに店は多くあるし困らない。
 
そういう生活に慣れきってました。
 
しかし、岐阜に戻ってきたら、やはり車は必須。コンビニはかろうじて近くにあるものの、田畑や住宅が多く、店は立ち並ぶほどは存在しない。
 
さて、地方に住むと、東京ほど所得はかかりません。なぜなら、地価が安いから。
これは大きなアドバンテージです。でも、一般的なイメージからすれば、格差社会の中で、地方は疲弊している、と言われています。
 
ただ、本当に金銭的に得をしているかは、不明です。
ここでひとつ統計を見てみましょう。都道府県別の雇用者報酬額です。

雇用者報酬には給料や退職金などのほかに、保険・年金といった企業の社会保障負担も含まれます。県民経済計算で05年度の1人当たり名目雇用者報酬をみると、全都道府県で488万円ですが、もっとも多い東京の638万円に対し、もっとも少ない秋田県では369万円とかなりの開きがあります。また、全国平均を上回っているのは主に都市部の8都府県でそれ以外の39道府県では平均以下になっています。
拡大する所得の地域間格差 – 日経NEEDSで読み解く

県民1人あたりの雇用者報酬額は、1位は東京都で638万円。最下位は秋田県で369万円らしい。大きな開きがありますね。
 
高い報酬を得たければ、3大都市(東京、大阪、名古屋)やその近郊に住むのが良い、ということが統計からは分かります。
高い報酬を得ることだけが人生の全てとは思わないけれど、高い報酬を得る確率は、場所によって異なるということは事実のよう。
 
それにしても、この東京一極集中の構図は、何とかならんものかな。なんでここまで東京だけ所得がずば抜けて上がってしまうのだ?世の中は「フラット化」してるんじゃなかったんだろうか??
 
地方分権や道州制が叫ばれているけれど、それによってこういう構図も変わるのだろうか。

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都道府県別の博物館・美術館数

博物館や美術館が好きだ。
今は岐阜に引っ越してしまったが、東京に住んでたときは、いろんな博物館や美術館が、狭い地域内にたくさんあり、イベント展示も多く行われていたので、よく足を運んだもんだ。
 
しかし、岐阜に引っ越してきて、少なくとも東京ほど近くには美術館や博物館の存在を感じなくなってしまったので、少し寂しい。
 
で、ふと思いついて都道府県別の博物館・美術館の数を調べてみた。すごいね。ちゃんと統計情報として文科省がデータをとっている。
最新が平成17年度のデータになるけれど、都道府県別の数はこんな感じ。

 

(データ元:平成17年度社会教育調査:文部科学省)
 
やっぱり東京がダントツに多い。人口密度が高く、それだけ博物館や美術館に興味を持つ人も多いからだと思われる。
ランキングを見て面白いのは、単純にお金に余裕があったり、人口の多さには必ずしも関連しないこと。
 
長野県が2位と高かったり、日本第2の都市大阪は意外にも12位と低かったりする。確かに、大阪と美術館はあまりイメージとして結びつかない。
 
都市のカラーがこういうところにも出たりする。こういう数値を見ると、地方都市だって、いろんな味があったりするのかも。
自分が望む都市を選べるならば、こういうところも考えていきたいもんだ。

トップリバーに学ぶビジネスの鉄則

農業生産法人 トップリバー。その本を読んで面白く、改めて考えさせられたので、メモ。
 
 
①誰を相手に、何を目的に仕事をしているのか
 
トップリバーは契約栽培を行っている。農協に収めるのではなく、直接企業などと契約して、予め決められた数量を決められた値段で契約するのだ。てっきり、農家が農協に決められた基準や方法に従い農作物を作り、農協に収めるのが普通だと思っていたが、トップリバーは違うらしい。
 
これは重要なことを示していて、自分の仕事は「最終的に誰のため」であるかをはっきり認識することだ。農協に任せれば、流通機能や販路開拓は不要になるから、分業として楽になる。しかし、あまりにも一括で取り扱うから、農作物を収める立場としては、「誰のための作物か」がわからなくなってしまう。
 
余談だが、親戚に農家の人がいて、米を作っても、農協でいろんな農家の米が混ぜられるから、やりがいも何もないと言っていた。そりゃそうだろう。
 
マーケティングの鉄則ではあるが、「誰をターゲットに何をするか」を考える。これは、ITシステムベンダーの立場でも同じこと。
情報システム部の人ばかりを伺う思考に陥りがちだが、その先のシステムユーザの考えこそ、一番察しなければならないことである。
 
 
②人材を育てることが社会貢献になる
 
人材育成はどこの組織でも課題になったりするが、これも改めてトップリバーに感心させられた。
今までの農業スタイルとは異なる考えを持ったトップリバーで育った人材が独立してゆくことで、農業界全体が変わっていく。そういう考えがすばらしい。
 
少し時間がかかるかもしれないが、どんどん人から人へ知識や考え方が伝わっていくことは、大きなインパクトを持っているはずだ。それが社会を形成し、変化・発展させていくはずだ。人材を育成する、ということは会社内で役立つ人間にとどまるのではなく、その先の先の先の未来にも、影響を与えるものだと考えると、人を育てる責任に少し身震いを覚える。
 
 
③「大局的な流れ」を考える
 
「あとがき」で、農業ブームや農業の自由化の流れが出ている今、その中で農業生産法人を経営している自分を、「僥倖」だと表現されていた。極端な話、30年前なら流通や小売の形態、政治情勢や農業を取り巻くカルチャーが違うと思うので、トップリバーのようなビジネスは成立する環境になかったのかもしれない。そう考えると、やはり大局的な流れというのは、重要なのだと考えさせられる。
 
大きな流れの中で、自分や自分の所属する会社は、どういう方向に舵を切ろうとしているのだろうか。
IT業界は、社会インフラの重要な地位になりつつあると思うが、技術動向の切り替わりが早く、知識や技術は、新しく出ては消えてゆく。そういう中で、自分がどういうスタンスでスキルアップしてゆくのか。会社は何を資産として、経営してゆくのか。
 
自分は、極力時代の流れに左右されにくい、コミュニケーション、マネジメントを軸としながら、経営知識やIT知識を習得していこうと思うのだ。

 

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