磯崎 哲也¥ 2,310 |
「イケてるソーシャルグラフの中に潜り込んで、自分の必要をかなえる能力」、たとえば、「資金を出してくれる人にたどり着いたり、人材などを見つけ出したり、営業で成果を上げる能力があること」ということになります。P.115
磯崎 哲也¥ 2,310 |
「イケてるソーシャルグラフの中に潜り込んで、自分の必要をかなえる能力」、たとえば、「資金を出してくれる人にたどり着いたり、人材などを見つけ出したり、営業で成果を上げる能力があること」ということになります。P.115
マスメディアをみても、分かったようで分からないことが多い。事実だけで終わってしまったり、それらしい説明をしているけれども、内容はどの局も一緒だったりする。自分の頭で考えて情報を選択していかないと、大切なことに気づけない。
この本に合わせて、こちらの動画も面白い。
民主党の事業仕分けは金だけだから興味がない。人・モノ・金は三位一体だから、改革をするときは全て合わせて議論しなければならない、というのは納得。
あとは、これも読んでおくと楽しい。
過去の書評
「日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方」を読んで、本の内容とは直接は関係ないけど、本書の中に、「他人資本は入れない」という項目があったので、それについて考察してみたい。
他人資本は、言葉の通り自分の資本ではなく他人のモノであり、言うなれば借金だ。利子がつく。自己資本には利子はつかない。
一般的には無借金経営が良いというイメージがあるが、借金時の利息より高い利率で利益を上げられるならば、借金をしてでも投資して利益を上げた方が経営効率が良い、と財務の世界では見なされる。それが財務レバレッジだ。
財務レバレッジとは、総資本に対する他人資本の割合を示したもので、自己資本に他人資本を加えることで、投資額を増やし利益率を高めること(又はその逆)を指す。レバレッジの名の通り、「てこ」を利かせて利益を増やすのが狙いだ。逆に、失敗すればマイナスの振れ幅も大きくなる。
要は、無借金経営だから良いとは、一概には言えませんよという話だ。トヨタも連結決算での自己資本比率は30%台になっている。
あと、ソフトバンクもうまく財務レバレッジを使っている企業と言えるんじゃないかな。ROEはドコモとほぼ同等らしい。
第8回 財務レバレッジで読み解くソフトバンクの決断! | BPnetビズカレッジ:入門講座 | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉
この本のECStudioはIT企業なので、基本的には人材による労働集約産業になる。機械に設備投資して、確実に効率が上がって生産量の増大が見込めれば、投資判断は行い易いが、労働集約産業は基本的に人に投資することになるので、リターンが測りづらい。
まあ、何を言いたいかと言えば、この本に限らず誰かが「他人資本を入れない方が良い」と言っているからといって、鵜呑みにするなということです。逆に言えば、借金をするには上記のように投資対効果としての根拠と理由が必要だということです。自分の身の丈にあった資金繰りを。
この本を読むと、会社の仕組みを作るのが上手な人なんだろうな、ということが伺える。いろいろ奇抜に感じる制度が多いけれど、何とも合理的な考えに基づいているのがわかる。
会社にお金を残さないことの合理性
本のタイトルにもある通り、できるだけ内部留保を残さないようにするのが会社のルールなのだそうな。利益が上がったら、社員にボーナスを与え、それでも余ったら値引きして顧客に還元する。
これのどこが合理的か、といえば、会社全体として残る金額の違い。会社の利益には法人税がかかり、従業員の所得には所得税がかかる。この2段階の税を最小にするためには、法人税をゼロにすることが合理的なのだ。
相当単純化したシミュレーション。最終的に社員に残る金額が多くなるのがわかる。
(参考:法定実効税率 – Wikipedia、所得税 – Wikipedia)
目から鱗。税金を支払うことが良いか悪いか、ということではない。制度の中で、いかに社員の満足度を上げるかを考えた末の方法だと思う。
完璧な仕組みはない、という前提に立つこと
いろいろ面白い会社の仕組みが紹介されているけど、その前提は「完璧な仕組みなどない」ということ。それを理解した上で、会社の価値観に賛同できる人が来てくれるのが良いと謳っている。
会社の評価をアバウトに行うと公言することも、評価基準に照らし合わせるよりも、一緒に働いていればおのずと優秀な人はわかる、という考えに基づいているし、全員の力量はやはり差があり、稼ぐ人が稼げない人を養っているのが組織の実態であるが、それを厳密に推し量ることなど現実的ではない、という。
人を評価することは、組織として非常に重要なことだと思うけれど、「何のための評価であるか」ということを改めて考えるべきかな、とも思った。社員のモチベーションを上げること、会社全体に納得感を持たせることが評価の目的であるなら、曖昧な点を残したって大丈夫なんだろうな。
完璧な仕組みではなく、みんなが納得でき、現実的ではないことに力を注がないこと。それが、経営する立場から重要なことなのだ。
重要なのは組織のモラルを醸成すること
メガネ21では、従業員の給料は社内で公開されているし、会社の事業内容などもオープンらしい。隠すのは社員を信頼していないから。信頼すれば、オープンにした方が活発な議論が進む。経営に対する社員のチェックも入る。
情報をオープンにすることと、社員のモラルは組織の両輪である、という表現が本の中であったけど、なるほどと感心する。情報をオープンにする仕組みがあっても、社員にモラルや関心がなければ、情報は何も活用されずに過ぎていく。情報をオープンにすることが経営や行政でよく問われるけれども、それと同じくらい、それを受け取る側のモラルも重要なんだなあ。
社会の中で当たり前と思っていることも、本質を考えればこんなにもユニークで合理的な仕組みができあがるんだと感心した。
鹿児島県にある、複合型スーパーマーケットAZの話。サーバントリーダーシップ的な考えだったり、本著のタイトルにもあるとおり、利益の追求ではなく、顧客満足を追求する姿勢は、考え方として刺激になる。チラシは発行しない、とか商品管理しない、とか小売業界で常識と思われていることを否定されていることに対しても、示唆は多い。
個人的に気になったことをメモ。
神は細部に宿る
良い経営とは、細部を気にすることにあると感じる。低価格を実現するために、建設業者と相談して、安い工法を検討し実現する。顧客からの要望に基づき、自動車販売や車検、ガソリンスタンドまで拡張していくが、そのときも業界の常識に捉われないように気をつけながら、独自の調達方法や業務手順を開発していく。
物事を実現していくためには、緻密に考えなければならないところがある、とよくいわれる。神は細部に宿るのだ。経営者は管理したり、金銭感覚に優れていたり、というだけではだめで、細部を詰めていく場所の見定めと、追求する力が必要なのだと思う。
企業のアイデンティティに係ること、長期的な基盤インフラなどに係ること、など企業として重要なところでは、従業員よりも細部を考えなければならない。
何を指標として考えるか
販売計画や利益計画もなければ、POSなどの商品管理も行わない、ということには驚いた(POSについては、正確には導入してはいるが活用していないそうだ)。
利益や売上を見るのではない。となると、何を基に経営しているのかよくわからなかったのだが、読み進めてわかった。AZが気にしているのはリピート率と客単価。過疎化地域で経営していくためには、回数と1回の売上を上げることに注目している、というわけだ。
ここから得られる示唆は、企業として重要な指標は何か、ということを今一度考えてみる価値がある、ということだ。一般的には、売上がどれぐらい、利益は何%ぐらい、みたいな管理会計的な話がよく言われる。それも確かに重要なんだろうが、KPIとして他の指標の方が重要なことだって考えられるんじゃないだろうか。
利益や売上はあくまで継続的に事業を行うための手段でしかない。顧客のために欠かせない存在になることが、商売の根源であるのかもしれない。そう思える一冊。
あわせてどうぞ。
小宮一慶さんの「未来経済学入門」で、地方行政の財務力について書いてあったので、それを踏まえて実際に、自治体の財務力について、どういう指標が用いられていて、どういう風に見ればよいかをまとめてみた。主に、以下3つで大体は把握できると思われる。
財政力指数(財政の体力はどの程度か)
地方交付税の規定により、人口や面積などに応じて算定した、標準的に必要となるお金(基準財政収入額)を、自治体自ら得るお金(基準財政需要額)で除した値。過去3年間の平均値を用いる。この指数が1に近づく、又は1を超えるほど良い団体と評価される。逆に、1未満の場合は、国から交付金が交付される。
ちなみに、岐阜県は47都道府県中19番目で、0.51(2007年のデータ)。全体から見れば悪い数値ではないが、優良というわけでもない。
参考:財政統計研究所 <財政力指数別・都道府県インデックス2009>
経常収支比率(どれぐらい自由に使えるか)
毎年度経常的に確保できる財源のうち、経常的に発生する費用(人件費、公債費等)を示した指標。高ければ高いほど、財政に余裕はなく、自由に使える財源は少ないことを示す。余裕がある、ということは、戦略転換した場合や、新しい社会情勢が発生したときに、財源を投入する柔軟な姿勢をとることが可能である、ということだ。
岐阜県は88.6%で、47都道府県中44番目に低い(2008年時点)。かなり良い状態であるかがわかる。
参考:経常収支比率 – ランキングでチェック!【となりの芝生】
実質公債費比率(収入に対してどれくらい借金あるか)
地方自治体の借金である公債費が、自治体の収入に対してどれくらいあるかを示した指標。前3年度の平均値を用いる。18%以上になると地方債の発行の際に許可が必要になる。他にも25%以上超えるとまた制限が加えられるので、18%以上で高ければ高くなるほど、借金をする力=資金を集める力がなくなる、ということになる。
岐阜県は、指標が高い順からみて5位(2008年時点)。2006年が32位だったことを考えると、結構余裕なくなってきてる。
参考:総務省|平成20年度決算に基づく健全化判断比率・資金不足比率の概要(速報)
これらを見てみた結果
これら3つの指標を見ると、自分が住む岐阜県においては、財務体力は著しく悪くはないと思われる。財務力指数は中間よりやや上であるし、経常収支比率においても、自由度はある程度あるようだ。しかし、実質公債比率が高まっており、今後もこれが一層高まってくると、資金を集める力が弱まり、柔軟に時局に合わせて行政をコントロールできなくなる懸念はある。
今回は本当にざっくりした結果を書いているが、これらの指標は、企業の財務分析と同様、他の都道府県の状況を比較したり、経年変化を見る必要がある。そして、できるならば、都道府県と同じように、市町村の指標も見た方が良い。自分が一番身近に受ける行政サービスは市町村だからだ。
あの夕張市も、破綻の10年ぐらい前から、経常収支比率などから、財務が硬直してしまっていることは議論されていたらしい。それでも早めの舵きりができなかったと思われる。そういう意味でも、たまにはこういう指標をチェックしてみるのは、安心して住む上で重要なんじゃないだろうか。
他にも下記を参考:
経常収支比率でみる自治体財政
実質公債費比率
財務3表一体分析法 「経営」がわかる決算書の読み方 (朝日新書) (新書)
非常にわかりやすい。
経営分析=簿記=数字=めんどくさい、というイメージを抱いてしまいがちだが、次の本を読むと、財務諸表の全体像が理解できる。
考え方は非常にシンプル。
これで、細かい数字ではなく、経営状態の全体像が、感覚的に理解できるようになる。
逆に、細かい数字なんて本当は必要なく、大まかに、傾向や流れを把握することに、経営分析の目的はあるのだと、自然と気づかせてくれる。
新書なのに、いろんな図をコピーして、手帳に貼ったぐらいだ。
しばらく、この本を手放すことはないだろう。
そして、次はこの一冊を読むと良い。
決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書 44) (新書)
本当は、こっちがシリーズ的に先なんだけど、この「理解法」は、企業の代表的な取引が、財務3表のどこに位置づけられて、どういう関係にあるかをスムーズに理解させてくれる。
なので、まずは「分析法」で経営の全体像を把握する手法を学び、「理解法」で、具体的な取引がどういう意味なのかを知る、という流れが
良いと思う。
夕張市の財政破綻から、地方財政に興味を持つようになった。 過去にも記事書いたし。
「地方債改革の経済学」を読んでから、より一層地方財政に対する理解は深まったと思う。市場原理に照らし合わせれば、借金する力のない自治体は、 地方債は発行できないはずだ。でも現実は違う。可能なのだ。
地方債の引き受けを国が担い、さらに地方債の金利すら地方交付税で 補填する仕組みが出来上がっているのだ。(詳細はもっと複雑なので、本を読んで下さい。)
公共インフラは、財政力によらず、生活を支えるために必要だから、そういう仕組みが出来上がったのだろう。一理ある。ただ、現状は、それが過度になっているのかもしれない。
実際、夕張市のように、気づかないうちに莫大な債務を抱えてしまう仕組みが、国民全体にとってプラスではないと思うし。市場原理から与えられる規律と、中央省庁のコントロールのバランスから、自立した地方財政を実現できるよう、これからもっと大きく方針転換していくんだろうな。
とりあえず、この本はかなり奥が深い。地方行政に興味がある人は、読んで損はない。(数字や表が多くて読みづらいけど。それだけ事実を基に結論を導いているということもわかる。) アメリカやフランスの事例も取り上げ、広範かつ的確な示唆が多く含まれていると思う。
自治体の新しい会計制度を書いたが、今日の日経新聞に関連記事が掲載されていた。
それは地方公営企業が多数、実質債務超過に陥っている、という内容だ。それはそれで気になるんだが、もっと気になったのは、以下の点だ。
地方公営企業は設備の建設などのための借入金を「借入資本金」と呼び、資本の部に含める独特の会計処理をする。
以前から、公共機関は民間と会計処理が違う、といわれているのは知っていたが、 具体的な点はあまり知らなかった。こういうこともあるのだな。
借入金というのは、自分の解釈で言うならば「借金」だ。貸借対照表では「負債の部」に含まれる、と思う。だけど、設備投資のための借入金は「資本」になる、というのは、どうも納得がいかない。
ネットで調べてみたが、なんでこうなっているのかはよくわからなかった。ずっと会計制度は昔から変わらずにきているみたいなので、その名残りとして今もそうしている、というのが個人的な予想だ。
不思議なことが多いな。
参考:
http://www.pref.shimane.lg.jp/kigyo/yougo.html
http://www.pref.saitama.lg.jp/A90/BD00/yousui/12report/kousui/kousui41-49.pdf
http://aol.okwave.jp/qa2944136.html
ちょっと前だが、夕張市が事実上の「倒産」をした。 疑問だったのは、何で気づけなかったのか、だ。 ネットで調べればすぐ解決した。会計制度だ。 一時借入金の制度が利用された。
一時借入金は、税収の確定時期と入金の時期がずれた際などに、当座の資金繰りのために金融機関から受ける短期の融資。年度内に返済することになっているため、予算書や決算書には記載されない。限度額は自治体の予算額とされる。 夕張市は、この仕組みを「悪用」。一時借入金を返済するために、別の金融機関から借りるという「自転車操業」を繰り返し、02年3月末からの4年間で約112億円も残高が増えた。(参照)
自治体には民間と同じように新しい会計制度を導入するべきだ、という議論も以前からあったように思う。 ちょっとネットを調べたら、これまた対策としての財務制度案があった。 ちゃんと今回の問題点を是正するような案になっていると思える。 キーは以下だ。
監査範囲を広げれば、一時借入金などはチェックできるのだろうか。 よくわからないが、破綻することで自治体のサービスレベルが下がることが現実化すると、 やはりこの問題は重いのだと思える。 ちなみに、他の地方自治体の財務状況もここでちょっとわかる。
参考までに。
(20070506追記)
時間があべこべになってしまったが、5月1日の日経新聞に 上記の新しい自治体の再建制度が今国会で成立する見通しであることが掲載されていた。 内容としては、上記に挙げた点と特に変わりない。