NECの株価がすごい下がっている

NECの経営状況が良くないんだとか。

歴史的暴落…NECが株価100円割れを招いた原因 | ビジネスジャーナル

特に、株価が大きく下がっている。5年間でみると3分の1以下になっているし、ここ数ヶ月の下がり具合もすごい。
NEC【6701】:株式/株価 – Yahoo!ファイナンス

 

4期分の財務諸表をみると、売り上げは下がっていて、資産も少なくなっている。事業をどんどんスリム化させている印象。スリム化した上で営業利益や経常利益は出ているので、収益性は向上している。以下は、4期分の財務諸表を図示したもの。

(単位:百万円)

 

スリム化するにあたっては、合計で3万人という規模で人員削減をしている。グループ全体で11万人程度ということなので、3万人という数字はすごいな。

この記事は企業文化について富士通との対比があって面白い。

岐路に立つITベンダー NECと富士通  「リストラ」と「人員維持」に潜む課題とは | Bizトピックス | キャリコネ

 

というわけで、売上が4年間で4分の3になっているので、株価が下がる理由もそこのあたりにあるのかな。冒頭の記事からすると、それだけじゃなく経営方針のブレや今後の事業モデルの不透明性への危機感が募っているという見方だろうか。

シャープの財務状況の厳しさを想像する

シャープの経営が悪化しているとたびたび聞くようになった。正直あまり状態がよくわからなかったので、簡単に財務諸表をみた。

焦点:遠のくシャープの自立再建、強まる銀行・鴻海の圧力 | Reuters

焦点:遠のくシャープの自立再建、強まる銀行・鴻海の圧力 | Reuters

 

4カ年でみてみると、2009~2010の2年は比較的好調。2011年で売上、粗利、当期純利益がいずれも急落。

シャープ、2010年度決算を発表 - 売上/利益が大きく伸長も事前予想には届かず – Phile-web

シャープ、2010年度決算を発表 - 売上/利益が大きく伸長も事前予想には届かず – Phile-web

 

グラフで表すとこんな感じ。

 

ちょっとグラフだけでは見づらいので数値も書いておこう。

シャープ表

 

特に当期純利益の落ち込みが大きい。これは、2012年3月期で約300億円の特別損失が発生しているため。

シャープ、5,000人規模の人員削減と「脱テレビ」へ -AV Watch

シャープ、5,000人規模の人員削減と「脱テレビ」へ -AV Watch

そして、その穴埋めは純資産で行われていると思われる(ほぼ同額減っている)。これによって、自己資本比率も36%から24%へ減少している。さらに流動比率も120%程度はあったものが、102%ともうすぐ100%を下回るところまできている。

 

ここからわかるのは、自己資本の減少によって体力が落ちているし、流動比率が低くなると、キャッシュが回らなくなるので倒れる可能性が出てくる。まあ、すぐじゃないと思うけどね。ただ、2012/3期で3000億円以上の特別損失を出していて、流動資産も流動負債も1兆円以上ある。一方で純資産は6000億円強ある。なので、特別損失みたいな規模で穴が空いたときは純資産で埋めるとか、流動性が低下して流動負債と流動資産の差分がマイナスになり始めると、純資産で賄えなくなる可能性が出てくる。

もっと大きな問題は、今後の収益を確保できそうな事業がみえづらいところだろう。そもそも売上の落ち込みも大きくなっている。JALの場合は航空市場は存在したし、焼け太りした体質をスリム化すれば事業が成立する、という可能性はみられたかもしれないが、シャープの場合は事業モデルとして見通しが厳しいのかもしれない。

 

そもそも電機産業自体が危ないんじゃないかという話がある。ちなみに、パナソニックと富士通の財務諸表もさくっとみてみたけれど、パナソニックもシャープ同様売上の落ち込みや特別損失の計上によって赤字になっている。しかもここ4年間見た限り、当期純利益はずっと赤字。ただ、シャープと比べて、売上の落ち込みが小さいとか純資産が多く確保されている点に違いはみえる。以下はパナソニックのグラフ。

パナソニック

 

あと、富士通は民生品が少ないので、シャープやパナソニックほど落ち込みが激しくないと言われていたが、確かにそうだった。売上が少し落ちてきているものの、粗利や経常利益は確保できている。また、自己資本比率もあがっているし、流動比率も120%前後を維持しているので、大きな懸念はなさそう。以下は富士通のグラフ。

富士通

 

というわけで、同じ電機メーカーだし規模も似てるんだけど、事業構造によって明暗分かれた感じだろうか。シャープは財務体質を見る限り結構下降モードにみえるから、リストラなどの再建でどこまで立て直せるかかなあ。これまでリストラをしたことがはるか昔の一回というほど雇用を大切にするシャープでも、今回の動向はリストラに踏み切らないほど厳しいんだろうなあと勝手に予想する。

マクドナルドの売上高が落ちていると聞いたので調べた

この記事で示されている数字がいろんな点で違和感だったので、少し調べてみることにした。

マクドナルドの既存店売上高、4.1%減 7月  :日本経済新聞

 

財務諸表をみると、ここ3年でみれば売上は減少している。一方で利益は向上している。この「既存店売上高」は何を比較しているのだろう。きっと、店の数が減ったものを比較しているわけじゃないよね。。。。


(EDINETの情報から作成。単位百万円)

 

財務諸表上で売上規模が減少しているのは、恐らく店舗数は全国的に減少しているのが一番大きい要因じゃないかと思う。昨年で10%ぐらい店舗数が縮小している。一方で利益率は69%増加ですよ。

マクドナルド店舗数 [ 2011年第一位 滋賀県 ]|新・都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン]

マクドナルド店舗数 [ 2011年第一位 滋賀県 ]|新・都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン]

国内は飽和状態といわれている。ちゃんとした数字が見つからなかったが、マクドナルドが店舗数が減少させていることを考えると、恐らくそうなのだろう。

 

細かい数字は正直わからないし、この記事の数字の前提や根拠の理由もわからないけど、逆にわかったことは、

  • マクドナルドは新しい顧客を獲得できている
  • 客単価が減少している

というところか。この傾向が続くかどうかが注目かな。100円マックがここ最近はフォーカスされていた気がするけど、世界のマックシリーズとか始まっているし、客単価の減少も一時的な気がしなくもない。ル・グランおいしいよね。

米IBMの事業ごとの特徴を分析

昨日の分析のおまけ。IBMの事業セグメントのうち、「Hardware」「Services」「Software」の3つの事業について、それぞれどのような特性があるかを確認してみた。

Hardwareの事業について、売上高と原価の関係をプロットしたものが以下。ここから読み取れるのは、傾きが0.8と大きめなので、売上1に対して費用が0.8もかかる、利幅が小さい事業であるということ。そして、切片がマイナスになっているので、固定費がほとんどなく、変動費が主体の事業であるので、黒字化を達成しやすい、という点が挙げられる。

 

次がServices。傾きはHardwareよりは小さいので、利益率は高いことがわかる。ただ、切片の値が結構高いので、固定費の割合が高い事業であることがわかる。

 

そして最後がSoftware。傾きは0.1なので最も小さい。利益率が高いのは昨日の記事でも書いた通り。そして、切片も小さい。ソフトウェアなので、研究開発費用がかかるものの、市場に投入できればあとは変動費用主体で、高い利益率を実現できる、ということがここでもわかる。

ただ、HardwareとServicesに比べて、近似線の乖離が大きいので、売上や収益が安定しないのかも。

 

ポートフォリオでいえば、うまく特性が異なる事業をミックスさせてるといえるし、多分付加価値の低いハードウェア事業は縮小していくんだろうな、ということも感じる。

米IBMがグローバルで業績好調な理由

こないだ日本IBMについて記事書いたけど、そのときに米IBMが業績好調なことに触れたので、もう少し詳細にみてみた。

売上高と利益の推移

売上高と当期純利益の推移をグラフ化したのが以下。売上高は多少の上下を繰り返しつつ、着実に売上規模と利益を拡大させているのがわかる。ちなみに、レノボにPC事業を売却したのは2004年。


(グラフはIBM Annual archives indexを元に作成。単位百万ドル。)

 

セグメント別の売上高を見てみる。こうしてみると、ハードウェアはどんどん下がっていて、サービスとソフトウェアが伸びているのがわかる。

 

これに加えて、各事業の粗利をみると面白い。ソフトウェアの比率が最初から大きいし、伸びも大きい。これはソフトウェアの粗利が80%を超えているから。それ以外の事業は30~50%程度なので、全然利益構造が違う。

2015年までにはソフトウェアからの利益が50%になると予想している。ソフトウェアの売上のうち80%以上がミドルウェアからの売上になっている(WebsphereとかTivoli)。

日本とグローバルの違いはどこにある?

日本は売上高が減少しているのだけれど、グローバルでは伸び続けている。この違いはなんで発生しているんだろうか。日本のセグメントごとの売上高は公開されていないので推測になってしまうが、可能な限り探ってみようと思う。

まず、グローバルでは売上高が伸びているのはServiceとSoftwareのセグメントだった。

Serviceが具体的にどういう事業を行なっているのかは、レポートからわかる。2011年のレポートによると、Service分野はさらに「Global Technology Service」と「Global Business Service」に分かれている。それぞれの事業を図示すると、以下のような感じになる。

この中で、いわゆる日本でいうSIというのは、GBSの「Consulting and System Integration」かな、と思われる。このGTSとGBSは、グローバルでの売上高比率でいうと2:1ぐらいでGTSの方が大きいんだよね。GTSはBPOだったり、プロセス標準化だったり、IT資産管理の推進なので、顧客主体でビジネスを回すための効率的な手段を提供する、というイメージだろうか。

ここのあたりが、日本はどうしても業者に頼るというか顧客が自らITを管理していく、という文化がいまひとつないから、そういうソリューションが伸びない原因なのかなあ。

これからのITはユーザがサービスを組み合わせて使う時代

VMWareでも提唱されているけれど、クラウドなどでITサービスは各ユーザが自由にいつでも買って組み合わせて使うことができるので、当たり前のように使われるインフラにどんどんなっていく。実際なっている部分もある。

そして、ユーザ自身がITを使い、管理していくためのサポートをするのがITベンダーの役割であるし、IBMが今掲げている「Smarter Planet」は、ITでインフラをもっと賢く、柔軟に変化できるものにしようとする、いわば下支えのような部分になっている。

ベンダーが直接的に業務アプリケーションを作るという時代は過ぎて、いろんなITサービスをユーザ自身が組み合わせて使う方向へシフトしている。そしてグローバルではIBMはそのソリューションを提供していくことで、うまく業態をシフトすることで適応しているようにみえる。日本IBMはどうなるんだろうか。

IGPI流経営分析のリアル・ノウハウ

「経営分析」っていうと、売上営業利益率とか棚卸回転期間とか当座比率とか、そういう指標や計算式のオンパレードという印象がある。一応、その指標がどういう意味を持つのか、業界平均と比較する、みたいな使い方を教えてくれるんだけど、でも計算してみて「で?」という感じになる。

実際に会社再生を手がける著者だからこそ、リアルなノウハウとして示すことができるのだろう。

 

経営を大枠で「具体的に」捉えること

経営を分析するにあたって、もっと重要なことがある。それは、

経営分析では、個々の数字の意味を検討する前に、事業のメカニズムを把握し、そのメカニズムをコストに置き換え、儲けのメカニズムとして読み解くことが何よりも重要である。P.93

ということだ。本の中では、できるだけビジネスモデルを具体的に想像し、フェルミ推定で売上や費用を推定することで、経営分析で用いる指標にも大きな意味を持たせることができると述べている。また、本当に規模の経済が働くような事業は、実際は少ないとも。

 

セオリーの本質を知ること

規模の経済といのは、ビジネス・スクールとかビジネス本ではよく出てくる言葉だ。それについても、当然ながらその本質を理解していないと、安易に規模の経済が働くなんて言えない。

だが、「規模が効く」というのは、2つの要件を満たす必要がある。あるコスト費目について、売上が大きくなっても、お客の数が増えても、品数が増えても、さほどコストが増えない費目(共有コスト)がある場合。なおかつ、それが全体の事業コスト構成比の中でかなり大きな割合を占めている場合である。P.95

 

あるいは、会社を取り巻く取引状況などの構造的な部分に問題がある、ということも。

見た目は同じ工場でも、系列取引の割合を見極めないと、経営の実態に近づくことはできない。BtoBのビジネスでは、このような産業構造的な視点からの経営分析を忘れるな。P.170

 

値を計算することは誰でもできる。だけど、そこから何を導くかという大きな視点、具体的な視点がないと、結局数字遊びになってしまう。同じ著者である「プロフェッショナル・コンサルティング」を読んだときも思ったけれど、コンサルタントというのは本当に泥臭い。

NRIの利益率が高いのはなぜだ

[aside type=”normal”] より新しい記事があります
2015年にアップデートした記事を書きました。よろしければ、そちらもお読み下さい。 →野村総合研究所とNTTデータの戦略の違いは、数字に表れている | Synapse Diary[/aside]

NRIは営業利益が他社より高いことをひとつの強みとして挙げている。

NRIは業界でも高い収益力を継続的に維持しています。
大手コンピュータメーカー各社と比較して売上規模は劣りますが、売上高営業利益率は他社を圧倒しており、2012年3月期は、12.9%でした。
NRIの強み:業界トップクラスの収益力 | 野村総合研究所

 

というので、実際に本当か調べてみた。NTTデータと比較してみると、確かに営業利益では一定してNRIの方が大きい。


有価証券報告書 | 野村総合研究所を元に作成)

 

一方で、売上高総利益率をみてみると、やや違う傾向がみえる。こちらでは、両社とも下落傾向であることは変わらないが、ほとんど一環してNRIの方が値が低い。これをみると、やっぱりこの業界の収益性は下がってきてるんですねってことになってしまうなあ。

 

総利益率が低く、営業利益率が高いのはどういう理由か?

総利益率が低く、営業利益率が高いのは、原価が高く、販管費が低いということになる。

これが原価の割合を示したもの。NTTデータは材料費があるのは、恐らくハードウェアを販売しているからだろう。これは想像になるけど、NRIの方が労務費の割合が高いので、外注が少ない分本体の人件費が高く、その分原価率として上がってしまっているのだろう。

 

販管費が低いのはなぜ?

販管費については、主に営業活動に必要な人件費や拠点などの費用だと思われる。

販売管理費については、グループ全体の効率化を妨げる、重複した営業体制、個別の開発サポート(拠点)体制などを改善するため、2008年秋以降に富士通やNEC、日立製作所、NTTデータなど、大規模な事業構造改革を実行するベンダーが非常に多くなっているという。一方、IBMやNRI、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、新日鉄ソリューションズ、大塚商会は大規模な改革を予定しておらず、すでに一定の効率化を果たしたものとみている。
ITベンダー収益分析:売上原価や販管費の削減が課題、規模拡大より収益性向上 – ZDNet Japan

 

原価や販管費を抑制しよう、というのはここ数年のSIerの中では叫ばれていたことで、生産性を上げて、無駄な経費を削減しようという流れというのは、業界自体が拡大していない、というところの裏返しなのかもしれないな、と思うところです。

 

というわけで、NRIの利益率の高さについて確認したけれど、結局NRI自体も売上は横ばいになっているし、業界自体に元気がないのは周知のところ。SIerの本質的な宿命はどこにあるのかといえば、IT技術を使って企業の業務課題を解消していくことであって、これまではIT技術の発展=ソリューションになれたのかもしれないけれど、今はIT技術の発展はコスト削減に振り向けられており、縮小していくパイを自ら縮小させることで奪い合いを加速させている印象です。

本質的に違うソリューションを生み出していかないと、SIerとして今後生きる道はとても険しいんじゃないかと思う今日この頃。エンジニア不要説とか、冗談に聞こえない。

 

話は変わるけど、就職活動のときに、こういう財務諸表の読み方を知っていれば、売上規模が違ったり、利益が安定しているかとか、今後の事業見通しとか、イメージだけじゃなくてもう少し事実に沿って深く考えて企業を選ぶこともできたかもしれないなあと思う。時間だけは無限にあった気がするのになあ。

 

参考:

金融危機で株価低迷 業績浮上のタイミングがカギを握る  [野村総合研究所(証券コード 4307)] | IT Leaders

金融危機で株価低迷 業績浮上のタイミングがカギを握る  [野村総合研究所(証券コード 4307)] | IT Leaders
ITサービスのビジネスモデル

ITサービスのビジネスモデル

 

 

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2015年にアップデートした記事を書きました。よろしければ、そちらもお読み下さい。 →野村総合研究所とNTTデータの戦略の違いは、数字に表れている | Synapse Diary[/aside]

NTTデータの売上をみたけど、日本のSIはやっぱり下火なのかもしれない

日本IBMは売上が10年で約半分になっていたけれど、NTTデータについて調べてみたらそうはなっていなかった。

https://synapse-diary.com/?p=1668

順調に売上高は伸びているし、経常利益率も多少の上下はあるものの、大幅な低下傾向は見られない。


有価証券報告書等 | NTTデータを元に作成。以下のグラフも全て同じ。単位:百万円)

ただ、上記の数字は連結決算の数字であり、NTTデータは最近買収も含めた海外進出も積極的なので、連結決算の数字をもって日本IBMと純粋に比べるのは難しい。(2011年は215社連結してるって。。。。)

 

というわけで、NTTデータ単体でも数値を取ってみた。売上はあまり大きな向上はしていないけれど、日本IBMほど落ち込んでもいない。

NTTデータは、僕のイメージではまさにSIが主流で、前回の日本IBMの記事から考えれば、同じように売上が落ち込んでいてもおかしくなかったはずなんだが、見事に予想が外れた。

ちなみに、両社の売上高を比並べてみるとこんな感じ。なんとなく拮抗しているのは気のせいか。従業員規模も似たような感じだし。

 

この記事をみても、NTTデータと日本IBMは売上高は並んでいるものの、成長率に大きな開きがある。収益確保できている企業とそうでない企業で分かれている。

IDC Japan調べ:08年度国内ITサービス、富士通やNTTデータが売上高でプラス成長 – ITmedia エンタープライズ

IDC Japan調べ:08年度国内ITサービス、富士通やNTTデータが売上高でプラス成長 – ITmedia エンタープライズ

 

SI事業だけを抽出してみると、多少の上下変動はあるものの、全体としては低下傾向にあるようにみえる。

 

株価はだいたい売上高に反応してる感じか。2008年あたりで大きく盛り返しているけど、10年スパンでみればすごい下がってる。

(株)NTTデータ【9613】:株式/株価 – Yahoo!ファイナンス

 

あと、NTTデータはやっぱり官公庁分野に強いというか、そこが売上の大半を占めているのは今も変わらない。

 

これだけみると、SIっていうビジネスモデル自体が、限界というか縮小トレンドにあるのは本当のようだ。NTTデータ自体は、円高も利用して積極的な海外展開を打ち出しているので、今ちょうどビジネスモデルの転換を図り始めているところか。実際連結決算でみれば、売上高は伸びているし、資本回転率も下がっていないので、拡大戦略としてはうまくいってるんじゃないかと思える。(利益率がちょっと下がっているのが気になるけど。)

インタビュー:2012年度までに海外売上高を倍増へ=NTTデータ | Reuters

インタビュー:2012年度までに海外売上高を倍増へ=NTTデータ | Reuters
【レポート】NTTデータ、カンパニー制導入とグローバル化推進で売上高1.5兆円の達成を – 新中期経営方針発表 (1) 5つのチャンスをモノにして4年間で3,600億円の売上増を目指す | 経営 | マイナビニュース

【レポート】NTTデータ、カンパニー制導入とグローバル化推進で売上高1.5兆円の達成を – 新中期経営方針発表 (1) 5つのチャンスをモノにして4年間で3,600億円の売上増を目指す | 経営 | マイナビニュース

 

結局SIサービスではあまりスケールメリットが出せないというか、どこかで費用逓増になる気がするので、業態として大きくしていったときに、どうなるのかというのが個人的に興味があるところです。

日本IBMの業績が10年で約半分になっている

少し前に社長交代が発表された日本IBM。いつの間にか、業績がここ10年間で半分になってまして。

松岡功のThink Management:日本IBM社長交代の意味 – ITmedia エンタープライズ

グラフにするとこんな感じです。


日本アイ・ビー・エム – Wikipediaを元に作成)

今回の社長交代劇も、その歯止めをかけるためのテコ入れでは、という感じになっている。これがIBM全体の傾向ならまた違うアクションにもなるんだろうけど、グローバルでは売上高は伸びていて、日本だけが落ち込んでいる。

日本のIT市場は世界からみて特殊なのか

日本IBMの業績が落ちているのは、どうやら日本市場特有の「SI文化」にあるようだ。

社長交代の本当の理由は、もう一つの「独自路線」のほうにありそうだ。富士通やNECなど日本のITベンダーが業務アプリケーションの領域に深く踏み込む中で、日本IBMも対抗上、追随したと思われる。これが世界のIBMの中で、日本の独自路線となった。

だが、基本的にシステム開発はユーザー主導で行うべきものだ。そのうえでITベンダーは、ITインフラや開発環境を用意し、開発工程の自動化に取り組むべきではないか。いわばシステム開発の工業化である。日本の場合どうしてもSIが主流になっていて、製品やソリューションを売る、というのはあくまで二次的要因になりがち。それは、業務が標準化されていない、とか業務をシステムに合わせるということが未だに抵抗が大きいからなのかもしれない。
田中克己の針路IT – スルガ銀-IBM裁判から垣間見えた“SI時代の終焉”:ITpro

SIの場合、顧客の要望に合致するような業務アプリケーションを作りこむことで対価を得る。これは、規模が大きくなるものの、非常に効率が悪く、かつ責任分界が曖昧になりがちになる。もちろん、発注者側もコストがかさむことや、完成までの期間が長くなるというデメリットを負うことになる。

そして、ITは既に「開発する」のではなく、「組み合わせを選ぶ」場面が増えているということだろう。もっとITはインフラ化して、ユーザが自然に使いこなせる流れになる。そうなると、作り込みに必要なエンジニアはどんどん不要になってしまうだろう。

新しいビジネスモデルはどのような流れになるか

上述の話から想像すると、これまでのSIのように、ユーザは要件を出して、あとは業者が頑張ります!という感じではなくて、ユーザは、市場にあるソリューションを自ら組み合わせて使っていく流れに進むのだと思われる。

実際にセールスフォース・ドットコムもAmazon EC2もサービスメニューをある程度固定化して、使いやすい環境を提供する形になっている。個別に要件を聞いて、それに合致するようなサービスを提供をしていたのでは、コストもかかるし時間もかかってしまう。ユーザがシステムを利用するまでの手間や時間をどんどん削れるようなサービスメニューを作らないといけないし、一方でユーザ側も自分たちで要件を整理したり、市場にあるサービスを見定める発注力が求められる。

 

そうはいっても、企業にとって根幹となるシステムは、市場にある簡易なサービス提供では実現できないだろう。これからは、ユーザが簡単にカスタマイズして要件を満たせるようなシステムと、本当のコアシステムで大掛かりな作り込みが必要なシステムの二極化に進むんだろうか。

自治体の公会計モデルについて(メモ)

自治体の公会計モデルについて、少しTwitterで教わったので、忘れないうちに自分の頭を整理しておく。きっかけは、この記事だった。

市有財産情報を電子化 佐野市が資産管理システム運用 |下野新聞「SOON」

ここで、佐野市が財務会計を基準モデルにするために、資産管理システムを導入するって話があって。それに対して、RTで教えてもらった。ありがたや。

 

そもそも公会計モデルは複数ある

以前から何となく知ってはいたけど、公会計基準は複数あるんだ。それが「基準モデル」と「総務省方式改訂モデル」だ。あと、旧式の「総務省モデル」というのもあるし、さらに独自方式も許容されていたりする。

で、基準モデルというのが一番厳密な財務会計処理になるのだけれど、事務処理も結構大変になるんだとか。総務省HPにある資料がわかりやすかったので、引用。

公会計モデル

(総務省HP http://www.soumu.go.jp/main_content/000025645.pdfより抜粋)

 

基準モデルだと、ストックはすべての資産を対象にして、フローも個別取引の仕訳が必要になる。

 

平成20年度時点だと、市区町村で基準モデルを採用しているのは7%程度。大半は総務省方式改訂モデルになっている。残念ながら、最新の数値は見つけられなかった。。。

 

基準モデルの方がアカウンタビリティが向上するようだ

まあ、基準モデルの方が厳密な評価を行う形になるので、当然なんだけど。少し古い記事だけど、各務ヶ原市が基準モデルへの移行を行ったときの記事が出てた。

【岐阜県各務原市】基準モデル対応の公会計システム導入、職員の作業負担は変わらず – 電子行政:ケースス…:ITpro

例えば、借入金が多いのではと言われたら、「これだけの資産が残っています」「世代間の公平性の観点から、後の世代の人にはこれくらい払っていただきます」と反論ができるようにしたい。そのために資産の的確な把握をしなければならず、それで基準モデルを導入しました。

 

あと、システムの改修費用も出てたよ。

公会計システム導入と連携を図るための既存システムの改修コストを合わせて、2007年度予算で1000万円を計上しました。システム開発は、2007年7月から開始しました。2006年の10月から11月にかけて、ベンダー5社に問い合わせて話を聞き、最終的に1社を選びました。

各務ヶ原市の平成20年度の財務諸表を見ると、行政コストは合計で558億円。このうちの1000万円の整備コストをどう見るか。ただ、規模が小さい自治体はこういう金額のインパクトが大きくなるとは思われるけど。(参考:www.city.kakamigahara.lg.jp/shoukai/zaisei/yosan/pdf/renketu20.pdf)

 

自治体クラウドなどのシステムソリューションの状況は

ふと思ったのは、システムソリューションの状況。基礎自治体向けにはパッケージやクラウドが浸透しつつあり、いろんなソリューションが登場している。これらはどうなっているのかと思ってざっくり調べてみた感想は、

・基準モデルと総務省方式改訂モデルの両方に対応している
・総務省方式改訂モデルで整備して、その後に基準モデルへステップアップしよう、という説明もある

という感じだった。恐らく、実情としては総務省方式改訂モデルを採用している自治体が多いので、それらに合わせたトーンになっているのだろう、と勝手に推測する。ただ、ソリューションのオプションに基準モデルへの対応も含まれているものもあるし、以前のように完全に自前で整備するよりは、会計モデルを移行しやすい状況になっているのかもしれない。