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波頭 亮¥ 1,575

なんか重い本かと思っていたら、意外に読みやすかった。対談形式だし。いろいろ気になったので、抜粋してく。

(冨山)

米国の場合は、テレビメーカーにしても本質的に日本と補完だったので、譲ってもらったようなところがあった。本当のガチンコまでは行かないで、彼らは彼らで違うところで戦おうと違うマーケットに行ってくれた。GEだって競争回避の戦略を採っていました。彼らは選択と集中の枠においては、日本のプレーヤーが得意だった領域は彼らが捨ててきた領域なんです。

しかし、韓国や中国はそうではない。補完しない近似モデルですから、完全にガチンコ。P.17

本当かどうかはわからないけど、日本が航空業界に深く入り込んでいないのも、こういう棲み分けを図ったからという話もある。だけど、今は状況も変わり、土俵も変わっている。

(波頭)

一方、東京は日本の中では情報も人材も圧倒的に集中しています。だから東京にいればわざわざ直接海外に出かけていかなくても、世界中のヒト、モノ、情報が手に入ります。その条件の良さが返ってアダとなって海外指向が先鋭化しなかったのでしょう。P.50

東京にはあらゆるものが集中しすぎていて、東京本社の日本企業は海外志向になりづらいという話。制約が大きい方がイノベーションが生まれる、というのと近いのかもね。確かに、東京にいたときはいろんな情報が豊富で近かったと実感する。人を媒体にした情報の伝達が一番大きいかな。

(波頭)

でも、今みたいにインテリジェンス・インテンシブ(知識集約的)な産業がパイを稼ぐ時代になると、やっぱり突出した人間がいかに活躍するかで生み出されるパイの大きさが左右されるわけです。だから、そこにフォーカスしたマネジメントにシフトしないと日本は企業も社会も持たない。P.71

大人げない大人になれ!」でも書いてあったけど、突出した人間に価値が集中しているんだよね。経営層がそういう価値観にシフトして、人でもアイデアでも良いものは抜擢していく仕組みがないと、なかなか難しい気がするなあ。

(冨山)

クライアントとの関係って、どっちが考え尽くしたか、喧嘩をしているわけだから。P.98

これはその通り。考えるのって一瞬と思われるけど、思考の深さにはある程度時間と比例関係にあると思うな。経験とともに短い時間で深く考えれるようにもなる気がするけど。そして、最後にはどちらが深く考えれたかの勝負な気がしている。そういう緊張感が、苦しくも刺激的でもある。

(波頭)

だから、ファクト(事実)を共有化してある目的を設定しさえすれば、あとはロジカルに議論していくことで合理的なコンセンサスに到達することは可能なわけです。仮に思考的スタンスや好き嫌いが多少あったとしても、少なくともきちんとした議論はできる。今の自民党と民主党って、議論になってないでしょ。国の政策のあるべき論ではなく、権力闘争を目的にしているから、あんなかみ合わない不毛な議論に落ちてしまう。政治家って直接話したらみんな頭いいんですよ。知識もあるし、頭の回転も速いんだけど、答弁になると変わる。政治のためにやっているのではなくて、権力のためにやっているから。P.119

政治家の議論がなんであんなに空転するのか、という話。才能の問題ではなく、インセンティブ設計の問題だよね。

(波頭)

論理的思考力、つまりロジカルシンキングの力とは、ものごとを正しく考えるための基礎的な能力です。考えるテクニックではなくて、脳みその筋力と言ってもいい。P.136

新人トレーニングのとき、先輩社員に「脳みそは筋肉と一緒。鍛えれば鍛えるほど賢くなる。」と言われて、そんな考え方したことなかったから、自分の中で鮮烈だったのを覚えている。そして、この本で同じことが書かれていたよ。確かに、ロジカルシンキングは訓練。訓練すれば、論理的に構成されていないものの違和感に気づけるようになる。

(波頭)

まとめると、ロジカルコミュニケーションは、正確にロジックを展開して伝えるという正攻法もあるけれど、聞き手の知識や思考の性質に合わせてメタファーやメッセージとして伝えるやり方も使えるようになっておく必要がある、ということです。P.151

論理的思考を鍛えることと、それをコミュニケーションに発揮するのは、似てるようで違うよ、という話。単純に論理を振りかざすのではなくて、論理構造をちゃんと理解して、どこがうまく伝わっていなかったり、感情の要素が働いているかがわかった上で伝達手段を考える必要があるってことだよね。

(冨山)

逆に年功制を守ろうとすると終身雇用は崩壊する。年功序列が残って、終身雇用が壊れる。意外にそうなってしまう場合は多いんですよ。上の世代の既得権に切り込めず、年功的要素が残ってしまい、終身雇用の方が危うくなっているところがありますよね。組織内の人たちのリアリティとしては、年功序列のほうに結構、しがみつくんです。年功序列で権力を持っている上の世代が自分たちの年功特権と終身雇用だけを守って、若い世代については、終身雇用を事実上、放棄してしまうパターンです。P.244

終身雇用と年功制の話。両方守るか両方捨てるか、みたいな感じで議論されることが多い気がするんだけど、どちらかというと組織転換に影響が大きいのは年功制だってことだよね。年齢とともに仕事の能力が向上するのは30代ぐらいまでな気がするので、そこらへんから賃金カーブを調整するように変えていかないといけないと思うんだけど、なかなか既得を崩すのは難しいよね。

それにしても、見事にカタカナ語が多い本だな。笑