村上龍から政治の今を感じ取る

逃げる中高年、欲望のない若者たち
村上 龍
ベストセラーズ
売り上げランキング: 22127

少し脳みそが疲れ気味だったので、軽い気持ちで読めるエッセイを購入。JMMも読んでるし、たまにカンブリア宮殿をみたりもするけれど、村上龍という人は、素直に事象を読むことが上手な気がする。特に政治分野で。

政治に対して何か期待を感じることが難しくなってきている。どの政党や議員を支持すれば、自分や家族や社会が幸せになれるのか、よくわからない感じだ。「辞めろ」「辞めない」とか、「言った」「言わない」とか、どうでも良いことをメディアも報道し続けるし、どうすれば良い政治が行われ、良い社会になると信じることができるんだろう。日本の国家財政の現状、政治家の仕事、民主主義のプロセスについて、村上龍がわかりやすく捉えているのでメモしとく。

日本の国家財政の現状

現在、日本の国家財政は、破綻しそうなほど悪化している。借金の山で、使える金が限られている。つまり、どこかに予算を振り分ければ、他には回せない。

そんな状況で政治家を目指す人の動機がわたしにはわからない。予算をどう使おうが、すべての層に利益をもたらすのは無理なので、必ず誰かから恨まれるのだ。P.27

全体の経済状況が向上していれば、どこかにずさんなお金の流れがあっても、多くの人は気にしない。実際に名目GDPは1996年あたりから頭打ちになっている。正直、僕が大人になって、日本経済が拡大していくような感覚は味わったことがない。

[世] 日本の名目GDPの推移(1980~2011年)

「誰かが損をする」という構図が生まれた途端に、削られた方から強い反対が出る。そういう前提に立つと、どこからどう削るかを考える必要が出てくる。ビジョンやコンセプトがないと、なし崩しだったり、とりやすいタバコなんかの増税になってしまいがちだ。

政治家の仕事

外交を別にすれば、政治家の仕事は、資源の再配分に尽きる。国家資源と税金をどう配分するか、ということだが、日本ではそういった感覚があまりない。P.26

これを行うためには、マーケティング的発想だったり、戦略的なコンセプトを作る、という作業が必要なんだと思うが、政治家の仕事を端的に表していると思う。もともと公共機関というのは、市場原理では非効率なことを、関係ある人からお金を集めて託す存在なのだ。そして、集めたお金をどう配分するかという方針を決めるのが、政治家の仕事だ。

民主主義のプロセス

選挙に行こうにも、どの党に投票すれば自分たちの利益となるのか、若者だろうが、中高年だろうが、よくわからないのではないだろうか。政策で選ぶというより曖昧な好感度で選んでいるのが実情ではないかと思う。P.140

民主主義のプロセスというのは、なんだろうか。民主主義が良い仕組みだと学校の授業で教わったけれど、完璧な仕組みからはほど遠く、むしろその仕組みに行き詰まりすら感じたりしている。ただ、政党や政治家が変わったのではなくて、「利権集団」という構成をして、わかりやすい要望を政治に望む人たちが減ったからなのかもしれない、と思ったりもする。政治家は、そういうふわふわした「何となく」な集団の要望を、うまく掴む必要があるのかもしれない。

政治について、毎日毎日情報に触れているけれど、本当に有効な議論がされている?とついつい疑問に思ってしまう自分がいる。ただ、いろんな情報は大抵はある断面でしかないし、できるだけいろんな見方をしたいとも思う。最後にこの言葉を噛み締めて。

わたしたちの社会で流行する言葉は、ある事実や状況を正確に表現するものというのではなく、ミもフタもないリアルな現実を覆い隠すためにある場合が多い。P.14

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です