中小企業と財務レバレッジ効果

日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方」を読んで、本の内容とは直接は関係ないけど、本書の中に、「他人資本は入れない」という項目があったので、それについて考察してみたい。

 

他人資本は、言葉の通り自分の資本ではなく他人のモノであり、言うなれば借金だ。利子がつく。自己資本には利子はつかない。

 

一般的には無借金経営が良いというイメージがあるが、借金時の利息より高い利率で利益を上げられるならば、借金をしてでも投資して利益を上げた方が経営効率が良い、と財務の世界では見なされる。それが財務レバレッジだ。

 

財務レバレッジとは、総資本に対する他人資本の割合を示したもので、自己資本に他人資本を加えることで、投資額を増やし利益率を高めること(又はその逆)を指す。レバレッジの名の通り、「てこ」を利かせて利益を増やすのが狙いだ。逆に、失敗すればマイナスの振れ幅も大きくなる。

 

要は、無借金経営だから良いとは、一概には言えませんよという話だ。トヨタも連結決算での自己資本比率は30%台になっている。

レバレッジ – Wikipedia

 

あと、ソフトバンクもうまく財務レバレッジを使っている企業と言えるんじゃないかな。ROEはドコモとほぼ同等らしい。

第8回 財務レバレッジで読み解くソフトバンクの決断! | BPnetビズカレッジ:入門講座 | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉

 

この本のECStudioはIT企業なので、基本的には人材による労働集約産業になる。機械に設備投資して、確実に効率が上がって生産量の増大が見込めれば、投資判断は行い易いが、労働集約産業は基本的に人に投資することになるので、リターンが測りづらい。

 

まあ、何を言いたいかと言えば、この本に限らず誰かが「他人資本を入れない方が良い」と言っているからといって、鵜呑みにするなということです。逆に言えば、借金をするには上記のように投資対効果としての根拠と理由が必要だということです。自分の身の丈にあった資金繰りを。

 

日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方
日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方

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