【書評】「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論

現在のビジネスパーソンに求められる能力とはなんでしょうか?

ビジネススクールに行って思ったのは、市場で評価される付加価値のポイントが変わってきているということです。かつて栄華を誇った日本の電機メーカーが苦戦する中で、アメリカでは新しい産業と強い企業が生まれています。明らかに、市場が求めるものが変わってきています。

いろいろビジネス戦略や外部環境の変化などでも説明することはできますが、今回読んだのは「人材」にフォーカスした内容が書かれたものです。

 

端的にいって、今の人材に求められる素養というか能力と、ビジネスにおける付加価値のポイントが見事にリンクしています。人材マネジメントに関わる人に限らず、いろんなビジネスパーソンにとって有用な一冊でしょう。

 

単に知識や技術があるだけでは勝てない

現代では、単純に知識や技術があるだけでは勝てない時代になっています。本書ではトヨタ生産方式が例に挙げられていますが、製造業の世界でトヨタ生産方式は珍しいものでも何でもなく、製造技術の観点で差がつかなくなっているのだそうです。

また、弁護士や税理士などの士業やプロフェッショナルと言われるところも、非常に厳しい状況になってきています。昔は資格をとれば安泰だと言われていたと思いますが。。。。

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これらは、ある程度決まった情報やルールに基づいて作業する、という点で共通しており、それらは情報が広がってしまえば、あるいは機械化されてしまえば、どんどん差異が生じなくなってしまうのですね。

もちろん職業が全てなくなってしまうわけではありませんし、今後もそういう職業や製造現場が残っていくのは間違いないですが、市場の中で相対的に価値が下がっているのは明らかです。

 

企業に利益をもたらす人材とは何か?

では、どういう人材が企業に利益をもたらすのでしょうか。本書では人材を次の4つに分けて整理しています。

①複数分野の知識あり、創造的知識労働、目的的・改革・改善・地頭・洞察・未知を既知に変える能力──タレント
②知識あり・定型労働、既知の事柄を確実にこなす──プロフェッショナル
③知識あり・定型労働、特定分野の知識に詳しい専門家──スペシャリスト
④知識なし・定型労働+改善能力(非定型労働)──改善ワーカー
⑤知識なし・定型労働──ワーカー

先程の弁護士や税理士等は、程度にもよると思いますが②プロフェッショナルあるいは③スペシャリストに分類されます。そして、最も企業に利益をもたらす人材は①タレントであると述べています。

タレントが、プロフェッショナルやスペシャリストとの違いはこうです。

いわゆるプロフェッショナルは、期待される成果は最初から決まった状態であることが多く、スペシャリストは特定の分野にただ詳しい人というイメージである。一方、優れたタレントは、それ以上の人を指している。つまり、タレントは、プロフェッショナルやスペシャリスト達を使って、「質的に異なる意味のある新しい何か」を生み出す人である。

世の中の変化のスピードはどんどん早くなっており、製品やサービスが陳腐化するスピードも速くなっています。そのため既に明らかになった考え方や技術というものはすぐに伝搬し真似されて行きます。そのため差別化要素と言うものはすぐになくなってしまうのです。

あのiPhoneですらも、ずっと安泰な地位があるわけではありません。

そういう中で未知の領域ににおいて、深い洞察やイマジネーションによって新たな製品やサービスを形にしていく人材が、今の時代に最も求められていると言えるでしょう。

 

そのような人材はどういう能力を兼ね備えているのかという点については詳しく書かれていますので興味がある方はぜひ読んでみてください。

久々に組織論や人材に関する刺激的な本を読むことができました。今日はこの辺で。