この本で今後の地域行政を知ろう – 【書評】地域主権の近未来図

新内閣の総務大臣に、改革派知事と言われた片山さんが就任した。今後は、より一層地域主権への動きが加速するという予想も出ている。
6月には地域主権戦略大綱が出され、着実に地域主権への検討が進められているが、それでも具体的な国の形がイメージしづらい。

そんな中で偶然手にした一冊。片山さんの対談も載ってましたよ。

「二元代表制」に対する理解はあるか

地方は、首長と議員の両方を、住民の直接選挙で選ぶ。主に、首長が作成した予算案や条例案を、議会の場で議員がチェックする仕組みになっている。

ところが、全国でみると首長提出の議案は97~98%が無修正で可決されている。・・・議会が本来の役割を果たしていないだけのことである。

議会がチェック機能を果たしているかをチェックするのが住民だ。住民には、首長や議員個人のリコール、議会の解散を求める権利もある。名古屋市や阿久根市で運動が起こっているのは、これだ。(名古屋市は市議会、阿久根市は首長。)

自分が住んでいる街の行政は、自分たちでチェックし、リコール等を通して意思を表示することもできる。こういう仕組みや現状を理解することから政治は始まる。

道州制は時期尚早ではないか

道州制になれば、自助努力で解決するのが基本となる。国による財政支援もないと考えるべきだ。

「補完性の原則」という言葉がある。地域主権戦略大綱でも何度も登場する。行政の最小単位でできることを行い、それが難しい場合は広域で、さらに難しければ国で。そうやってボトムアップでアプローチして行政の仕組みを作っていく考え方だ。道州制は地方の行政単位を大きくして、権限を大きくすることだから、まさにこの「補完性の原則」に立つ必要がある。

しかし、今の地方行政の仕組みは逆に感じる。未だ中央集権の形が色濃く、地方には権限や予算の面で制約が多い。(それが、陳情などの「おこぼれ」思考につながるのかもしれない。)そして、住民もあまり興味を持てない。それほど日常が暇でもないし、参画してもしなくても変わらない気がしてしまう。

こういう状況で、道州制で首長の権限を強めたとき、それをチェックするガバナンス機能はどうやって構築すれば良いのだろうか。本書によれば、州知事の権力は今の東京都知事の5倍くらいらしい。

そう考えると、道州制は時期尚早だと思える。中央集権的な仕組みからそのまま道州制にしても、うまく纏まるように思えない。いきなり形を変えるのではなくて、今の地域戦略大綱のように、基礎自治体の権限や予算を移譲してゆき、国の出先機関を統廃合するなどを行うことが先んじて行うべき方向だと思える。

他にも、住民投票の法制化、シティマネージャー制度、地方政党など、今後のいろんな地域行政の可能性・選択肢を提示してくれている。少し今後の地域行政に対するイメージが広がった。

地方を歩いていると、「分権で生活がどれだけよくなったのか」とよく質問されるんですが、私はあえて「地域を変えるために、ご自分で何をしましたか」と問い返しています。自動的に暮らしがよくなるわけではないですから。

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