【書評】フェルドマン博士の 日本経済最新講義

年末年始で、この本を読みました。

ええ、ちきりんさんのおすすめにまんまとひっかかったわけですが、なにか?笑

この一冊 2015年から2016年へ – Chikirinの日記

ただ、最近「新・観光立国論」や「東京一極集中が日本を救う」を読んでいたので、地方を含めた今後の日本経済の論点というものがいろいろつながって、頭の整理と刺激になりました。

【書評】新・観光立国論

2015.12.27

「東京一極集中が日本を救う」を読んで今年の地方創生を考えよう

2016.01.01

特に地方再生に関する課題の提起については、新しい視点が含められていました。

 

地方再生の課題は「エネルギー効率」と「インフラのコスト」

最終章が「地方再生と教育改革」になっています。そして、地方における課題として2つ挙げられています。

一つ目はエネルギー密度です。

次はエネルギー密度です。前述の日銀レポートの中に、都道府県別のエネルギー効率が紹介されています。人口密度が高くなるほど、あるいは都市化率が高くなるほど、利用する一人当たりのエネルギーは少なくなります。これは当然です。地方に住んでいれば、スーパーへ買い物に行くのも遠いので、車を使う必要があるからです。

ここでいう「日銀レポート」というのは、「わが国の「都市化率」に関する事実整理と考察 ― 地域経済の視点から ―」です。

そしてもう一つとして、インフラのコストが挙げられています。

もう一つの課題はインフラのコストです。同じ日銀のレポートには、さまざまな社会インフラと都市化率との関係が載っています。たとえば、一人当たりの郵便局の数。同じく小学校の数、病院の数。さらに、一人当たりの道路の長さ。都市より地方のほうがコストがかかる現実が、非常にはっきり出ています。

2つとも、いわば地方は都市への集約効果が低いことが課題だというわけです。これまで日本は全体で都市面積を広げてきましたが、人口減少を迎えている今は、都市面積を広げるのではなく、都市に集約し生産性を向上させる必要があるわけです。特に、サービス業は都市への集積による生産性の向上効果が高いと言われています。

 

どうやって地方を再生させるのか

本書では、地方の生産性を高める方法についてのポイントも示しています。ひとつは選挙制度改革で、もうひとつが「稼ぐ力」の向上です。具体的には、以下のように書かれています。

選挙制度改革を進めると同時に、稼ぐ力をどう増やすのかが問題になります。ごく普通の経済常識で考えれば、答えは「生産要素」と「生産性」です。付加価値を上げる生産要素は、資本、労働、土地(地方ではとくに農地)です。生産性を上げるには、その三つの要素をつなげる技術が必要です。

つまり、こういう生産要素がうまく活用されていないので、稼ぐ力が停滞しているというわけです。東京などの三大都市圏と同じようにあらゆるものを集積するというアプローチではダメだと思うので、

  • 地方の都市部は可能な限り集積
  • 都市以外の土地を農業等(大規模農業)で活用

という両面のアプローチが必要なのでしょう。

口で言うのは簡単で、実行するのは難しいのかもしれませんが、実際に新しい行動で地方ビジネスを起こしている事例もあります。

【書評】地方創生ビジネスの教科書

2015.11.10

 

それ以外にも、経済的な論点が多数

本書を読むと、それ以外にも多数の経済的な論点が述べられています。個人的に気になったのは、まず財政再建。

大前研一さんの「日本の論点 2015~2016」でも、「累積赤字の解消が日本経済最大の問題」と述べられていました。

「日本の論点 2015~16」を読んで今後の日本社会を考えよう

2015.02.16

本書の中でも、今日本が置かれている財政状況がこう書かれています。

財政制度等審議会という財務省の有識者会議で、経済学者の富田俊基中央大学教授が同じような計算を行いました。すると、消費税を一〇%として、経済がうまく成長すると想定しても、年間六十兆円が必要になるというシナリオも出ました。  その六十兆円をどこから捻出するのか。すべて消費税に転嫁すれば、消費税率三四%です。逆に増税をまったくしなければ、百二十八兆円の社会保障支出の中から六十兆円を削らなければいけません。四七%ぐらいの削減です。結局は国民が増税と歳出削減の組み合わせを選択せざるを得ないのです。増税と歳出削減をどの割合で行うか、という選択です。

ということで、増税は行われてきていますが、歳出削減の議論が進んでいるかといえば、十分ではない気がします。

また、労働市場についても考えさせられます。例えば、男女の違いについてはこう書かれています。

では、男性と女性の割合をみます。右の正規雇用者のうち、男性は約六九%です。女性は約三一%にすぎません。非正規だと、ほぼ同じ比率で逆転します。すなわち、男性は三二%。女性が六八%。正規雇用で守られている人たちは、圧倒的に男性だとわかります。  同じ五千六百万人を就業状態別に分けると、無期契約社員は三千七百五十万人。有期契約社員は千七十万人。その男女別の内訳は、無期契約社員の六一%が男性。女性は三九%。有期契約社員では、男性が三九%。女性が六一%です。ここでもまた、同じ比率で逆転しています。予想通りといえば予想通りですが、産業界は女性より男性を手厚く守っているのです。格差社会というか、差別社会というか。これが現状です。

他にも大企業と中小企業の平均賃金の違いについても示されていました。いずれも労働市場が硬直化しているのがよくわかる数字になっています。

 

というわけで、本書を読めば、あらかた日本経済における論点がカバーされてるんじゃないでしょうか。具体的な数字に基づいた意見が述べられているので明快ですが、幅広いテーマになっているので、じっくり読むのがおすすめです。

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