4年ぶり!任天堂が黒字になった理由

Nemo / Pixabay

いやーついに任天堂が黒字になりました。4年ぶりです。

以前このブログで任天堂のことを書いたときは、ずっと赤字でした。

任天堂とDeNAが業務・資本提携。任天堂はスマホゲームに本気か

実際に、今回の決算発表の数字で、営業利益は黒字になっています。

Nintendo2015

今日はなんで黒字になったのか?を分析しておこうと思います。

 

任天堂が4年ぶりに黒字になった理由

上記のグラフにある通り、今回の任天堂の決算は「減収増益」です。

産経の記事では、端的に「コスト削減と円安効果」と書いています。

任天堂が平成27年3月期連結決算で4年ぶりに営業黒字を確保した。ただ、コスト削減に加えて円安の恩恵が大きく、まだ復調には遠い。28年3月期はゲーム専用機の本体、ソフト販売とも前期を下回る予想のため、年内に発売するスマートフォン向けゲームが浮沈の鍵を握る。

【任天堂4年ぶり黒字】スマホ向けゲームにかける「任天堂の本気度」 収益の柱に育てられるか(1/2ページ) – 産経WEST

 

コスト削減が営業利益に、円安効果が経常利益に表れます。

さて、ゲーム会社のコスト削減というのはどう行うのでしょう。もう少し細かい数字を見てみましょう。売上総利益率と売上高販管費率を今期と前期で算出してみました。

2014年3月期 2015年3月期
売上総利益率 28.55% 39.03%
売上高販管費率 36.67% 34.53%

今期分で、売上総利益率がすごい上昇しているのがわかります。原価を絞ったんですね。また、売上高販管費率も減少しています。任天堂の今期のテーマは、「収支のバランスをとる」ということで、コスト削減もひとつ重要な経営テーマでした。 なので、経営テーマのひとつをちゃんと達成した、ということでしょう。

 

原価や販管費は、実際どうやって減らしたのか?

まず原価。任天堂の場合、事業は「ゲーム機の販売」と「ゲームソフトの販売」なので、ゲーム機の製造原価を下げるか、ゲームソフトの開発費用を下げるか、どちらかになります。過去の発表などをみると、ゲームソフトの開発費用が削減の主な対象だったことがわかります。

ちょっと長いですが、任天堂のWebサイトにある決算の質疑応答から抜粋します。

まず、ゲーム開発の効率の悪い部分について「効率を上げなければいけない」というご指摘についてはその通りです。ただ、お客様が求めておられるのは、実は単なるコンテンツの数ではなく、「自分が遊びたいと思うコンテンツがどういう頻度で出てきて、自分が何かに飽きたら次に遊ぶものが目の前にあって、それを遊ぶことは自分にとって良いことだと感じていただけるのかどうか」がポイントだと私たちは思っていますので、単純にコンテンツの数を増やすとか、1タイトル当たりの開発費を削減するということが一概に必ず良いことだとは私は考えていません。と申しますのも、1タイトル当たりのコンテンツ開発にかかる費用を単純に削減していきますと、一つひとつのものの魅力がなくなっていって、長期的に売れなくなるからです。逆に、結果的に売れ続けているものや、ホットな話題であり続けるものがあれば、お客様にとって遊び続ける動機が増え、新しく買ってくださるお客様の数も増えます。タイトル数だけがいくらあっても、一個一個が小粒になってしまっては意味がありません。例えば当社は、『マリオカート8』で追加コンテンツを配信することで、コースを増やしたり、カートを増やしたり、キャラクターが増えたりということに新しくトライしています。一番の目的はマリオカートというものが遊ばれ続ける状態をどうしたら維持できるかということで、高い情熱でプレイいただいた段階を経たソフトをもう一度遊んでいただくには、そういった何かしらの補強が必要であろう、ということです。今はそういう施策が技術的に可能になりましたし、『マリオカート』の新作を1本つくるのと、追加コンテンツでコースやキャラクターを配信するのとでは、かかる人月も時間も費用も全く異なります。

2014年10月30日(木) 経営方針説明会 / 2015年3月期 第2四半期決算説明会 – 質疑応答

 

開発費用の削減という観点でみれば、投入資源を減らすか、開発本数を増やせば効率は一見上がります。ただ、コンテンツの質という点で難しくなるでしょう。上記の説明を読むと、以下のサイクルを回すという意図が見えます。

  1. 1つのコンテンツを「売り切り」ではなく、追加コンテンツを順に投入する
  2. 1つのコンテンツが長く遊ばれることになる
  3. 長期的に売れるようになる
  4. 結果として、1つのコンテンツの開発効率が上がる

これは、インターネット接続と密接に絡みます。今任天堂は、アカウントサービスを強化しようとしていますが、ゲームがネットと接続されることで、売り切り型にならず、コンテンツを順次配信したり、ネットを経由してコミュニケーションをとることができるようになるからです。ゲームの消費のされ方も大きく変わってきているということです。

 

また、広告宣伝費も削減の対象になっています。これも決算説明会の質問で社長が答えています。これも少し長いですが、引用してみましょう。

特に最近は、かつてテレビ広告だけがマスに届く方法とされていましたが、テレビ広告という方法ではなくても、インターネットやスマートデバイスの普及により、非常にたくさんの方が能動的に情報を取りに来てくださるようになりました。例えば任天堂が何かのゲームの紹介、あるいは新しいテレビコマーシャルをつくった時に、お客様はYouTubeや任天堂ホームページにわざわざ来てくださっています。また、任天堂は「ニンテンドーダイレクト」に力を入れ、定期的にウェブで「ニャニャニャ!ネコマリオタイム」という動画を公開していますが、これは大変人気の動画で、非常に多くの方にご視聴いただいています。今、日本国内ではニンテンドー3DSのニンテンドーeショップに、毎週定期的に動画を見に来てくださるお客様がかなりの人数いらっしゃるのですが、その方たちの視聴はまさに能動視聴です。テレビで突然ゲームの宣伝が入ってくる場合以上に、お客様は集中して見てくださっていますので、一回見ていただく際の効果はより大きくなります。テレビで見ていただくこと、お客様にとって面白いコンテンツをインターネット上につくって、そこにお客様に能動的に来ていただいて見ていただくこと、さらにそこで何かが盛り上がるとそこからソーシャルメディアを通じて、もともと興味をお持ちでなかった方たちにまで見ていただけるようになることによって、ゲームのマーケティングの活動はまだまだ効率化できると思っています。

2014年10月30日(木) 経営方針説明会 / 2015年3月期 第2四半期決算説明会 – 質疑応答

 

マスメディア広告を控え、インターネットやスマホを活用したマーケティングを進めることで、広告宣伝費を下げつつ、顧客獲得ができているということでしょうかね。

 

ゲーム業界の戦略は変わってきている

任天堂のコスト削減を見てきました。こうみると、コンテンツに対する考え方が変わってきている感じがします。

  • 「売り切り」型からネット配信を組み合わせた長期型へ
  • アカウント管理を行い、ユーザー囲い込みへ

そして、新しいライトユーザーを獲得する手段として、DeNAと提携したようなスマホがあるんじゃないか、と。さらにこんな戦略も、最近発表されています。

任天堂と「ユニバーサルスタジオ」を運営する、ユニバーサルパーク&リゾート(Universal Parks & Resorts)は、業務提携し任天堂のゲームを元にした世界をユニバーサルのテーマパークに展開すると発表しました。

任天堂とユニバーサルスタジオが提携し、テーマパーク展開を計画 (インサイド) – Yahoo!ニュース

テーマパーク展開することで、マリオなど任天堂が持っているキャラクターをより強くブランド化することができ、新しい形でユーザーを獲得するきっかけを作ることを狙っているんじゃないでしょうかね。

 

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それにしても、コスト削減頑張ったら200億円営業利益が出るって、やはり只者じゃないというか、ダイナミックな動くをするな、任天堂って思いますね。

 

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