大塚家具の中期経営計画は、イケア・ニトリの低価格路線を目指していないよ

keresi72 / Pixabay

大塚家具の創業者vs現社長の対決が盛り上がっていますね。

よく見かけるのが、「従来の高級路線 vs イケア・ニトリの低価格路線」という構図で、長女の久美子社長が低価格路線を目指していると表現されることです。

例えば、創業者であり会長のコメントを載せた記事にも、以下の記載があります。

一方で、久美子社長のやり方を、気軽に立ち寄れる店舗だが、低・中価格品シフトによる減収を、経費削減で補う縮小均衡型、とした。 「ニトリ、イケアを意識したら、間違える。家具は使い捨てじゃない。インターネットで、なんてダメ。われわれのよさは、最終的に商品をお届けしたときに、お客様にわかってもらえる」(勝久会長)。

反論!大塚家具、父・勝久会長が沈黙を破る | 企業戦略 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

明らかに、ニトリやイケアを意識した捉え方になっています。ただ、久美子社長が公開された中期経営計画書を見れば、その路線が違うことが明らかです。

以下が中期経営計画書の抜粋です。

中期経営計画

これをみると、イケアやニトリが開拓した市場から中価格帯を嗜好する人が出てくるはずで、そこをマーケットリーダーになって取り込むと書いてあります。既存のビジネスモデルで中価格帯から低価格へ顧客が奪われてしまったとあります。

ここからわかるのは、このままイケア・ニトリを模倣する方向性を狙っているのではないということです。

ビジネス環境が劇的に変化している

そもそも、家具市場はどうなっているかというと、全体的に縮小しています。

家具市場

統計データ|一般社団法人日本家具産業振興会の家具小売業時系列データから作成)

だから、従来のような家具の売り方では売れなくなっても当然で、既存のビジネスモデルが衰退期と言われる所以です。これまで家具は新築の時に一式買い揃える、というようなやり方が多く、まとめて買い揃えることができるビジネスモデルが良かったのかもしれません。しかし、これからは「空き家対策」と言われるぐらい住宅のストックがありふれていて、新築が当然のような時代ではなくなっています。

久美子社長がインタビューでこうやって答えてるのが象徴的ですね。

広告宣伝の中心であるチラシの枚数と来店客数の長期的な相関を見れば、かつてのやり方が通じないのは明らかなのです。2002年のチラシは3億枚でしたが、来客数は83万人でした。私が辞めた後の2006年には6億枚を配りましたが、来客は63万人です。20万人も減ったのです。チラシをまけばお客は来るというのは思い込みなのです。しかし会長はこうした長期統計も見ようとしません。

大塚家具、大塚久美子社長が激白!「すべて話します」:日経ビジネスオンライン

イケア・ニトリを模倣しても難しい

イケアやニトリは単なる低価格路線なわけではありません。SPAモデルによって、自社で製販一体とすることで低価格で品質が良い商品を送り出して、支持されてきているわけです。

しかし、先ほどの中期経営計画ではSPAに関しては言及されておらず、あくまで卸・小売のスタンスを変えないのだと思われます。確かに、いまさら同じビジネスモデルで勝負しても、簡単に勝てる状況ではないでしょう。それよりは、別のポジションで優位性を見出した方が勝機がありそうです。

様々な質の良い商品を選定し、新しいライフスタイルとして販売するところに、勝機を見出している感じですね。

まとめ

  • 中期経営計画には、イケア・ニトリに追随するとは書いておらず、むしろ中価格帯以上を維持する
  • そもそも市場全体が縮小しており、既存のビジネスモデルは衰退期
  • イケア・ニトリはSPAになっているけど、そこに飛び込むのは難しい

ニュースを読む限り、とても面白い案件です。

考えさせられるのは、創業者の成功体験というのは本当に根強いものなんだということです。外部環境が劇的に変わっている中で、既存のビジネスモデルで売上・利益を向上させ続けるのはとても難しいと思うのですが。

さて、まずは株主総会でどういう結論が出るんでしょう。

久々に、これを読み返そうかと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です