ペイパル・マフィアが書いた起業本「ゼロ・トゥ・ワン」

 

日本は開業率が5%程度で、アメリカの10%と比べると低いと言われています。この開業率を高めて、日本も新しいビジネスを活発化させる必要がある、というのは以前から聞く話です。では起業し、成功させるには何が必要なんでしょう。

参考:日本の開業率を5%から10%に引き上げるために何をすべきなのか

 

シリコンバレーなどIT系の起業が盛んなアメリカでは、Paypalを創業したメンバーが次々と新しいサービスを誕生・成功させており、彼らは「ペイパル・マフィア」と呼ばれています。

「ペイパル・マフィア」が世界を変える!? « WIRED.jp

その「ペイパル・マフィア」の一人、ピーター・ティールが書いたのがこの「ゼロ・トゥ・ワン」です。

実際にスタンフォードで行っている講義の内容が書籍化されたそうで、大変面白かったです。日本版の序文は「[僕は君たちに武器を配りたい](僕は君たちに武器を配りたい)」の瀧本哲史さんで、序文を読むだけでもちょっとテンションが上がります。

 

起業を考える上で最も重要な質問

本書では、起業する上で最も重要な質問が述べられています。それは、次のような感じです。

採用面接でかならず訊く質問がある。「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」  ストレートな質問なので、ちょっと考えれば答えられそうだ。だけど実際には、なかなか難しい。学校では基本的に異論のない知識しか教わらないので、この質問は知的なハードルが高い。それに、その答えは明らかに常識外れなものになるので、心理的なハードルも高いからだ。明晰な思考のできる人は珍しいし、勇気のある人は天才よりもさらに珍しい。

この質問が重要視されるのは、起業において最も重要である「市場の独占」を実現するためです。反対する人が多いほど、成功したときのインパクトが大きく、独占しやすい。ピーター・ティールが述べているのはそこであり、その出発点にこの質問があるわけです。

資本主義と競争の関係を述べたのが、以下の下りです。

アメリカ人は競争を崇拝し、競争のおかげで社会主義国と違って自分たちは配給の列に並ばずにすむのだと思っている。でも実際には、資本主義と競争は対極にある。資本主義は資本の蓄積を前提に成り立つのに、完全競争下ではすべての収益が消滅する。だから起業家ならこう肝に銘じるべきだ。永続的な価値を創造してそれを取り込むためには、差別化のないコモディティ・ビジネスを行なってはならない。

これは僕も正しいと思います。企業間の競争は、双方の品質向上・価格低下やイノベーションを誘発する働きもありますが、不毛な競争が企業を疲弊させ、市場全体も育たせない危険も孕んでいるものです。特に初期段階ではそうじゃないでしょうか。

 

リーンスタートアップとの対比について

本書はどうやら、「リーンスタートアップ」との対比で語られることが多いようです。例えば、こんな感じ。

「MVP」なんていうちっぽけな考えは捨てよう。一九七六年にアップルを創業して以来、ジョブズはフォーカス・グループの意見を聞かず、他人の成功を真似ることもなく、念入りな計画によって世界を本当に変えられることを証明した

MVPというのは、Minimum Viable Productの略で、必要最小限の機能だけ実装した製品のことを指します。製品を充実させることも重要ですが、それよりも主要な機能だけでリリースして改善していった方が良い、ということです。

読みながら、僕はリーンスタートアップと比較することに違和感を覚えましたけど。リーンの考え方はトヨタ生産方式をベースにしており、あくまで不確実性を生き抜くためのプロセスに関する考え方。本書は、リーンスタートアップの考え方が、企業のビジョンや大きな計画を持つことなく、なんでもとりあえずやってみようというような考え方になってることに対するアンチテーゼだろうと理解しました。

それ以外にも、人材採用やCEOの報酬、マーケティングについても、独自の観点で重要な考え方が述べられています。

起業家、投資家として実績ある「ペイパル・マフィア」の本であり、これまで流行ってきたリーンスタートアップに対してアンチテーゼを提起しているという点でも、一読の価値はあると思います。

 

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