小説「ラストワンマイル」が物流業界の現状を描いていて驚いた

ラストワンマイルという小説を読みました。そこまで意図して読み始めたわけではありませんでしたが、ちょうど今、ECサイトや物流に対する関心が個人的に高くなっており、非常にタイムリーなビジネス小説でした。

この小説を読むと、実際に今起こっているEC市場の競争がよくわかります。Yahooショッピングがなぜ出店料を無料にしたのか。これからの競争のポイントがどこに置かれるのか。

 

重要なのは「ポータル・決済・物流」

少し前に「大前研一 日本の論点」という本を読んだのですが、そこでは今後のECプラットフォームには次の点が必要だと書かれていました。

私は次世代のカギを握るネット時代の三種の神器は、「ポータル」「決済」「物流」だと考えている。そして、この3つの分野をしっかり握っているのがアメリカの強みだ。

ただ、それ以上詳細な説明がなく、僕としてはピンと来てなかったんですよね。それが、この小説を読みながら、やっとわかりました。わかってみるとなんてことないんですが、「人がネット上で買い物をする上で必ず行われる行為」なので重要なんだってことですね。

 

商品(情報)の信頼性をどう確立するか

「ポータル」というのは、まさに入口のことで、消費者から選ばれる「入口」を作れるかどうかが重要になります。そのためには、プラットフォームやプラットフォーム上で掲載される情報に、いかに信頼性を高めるかが重要になってきます。

Amazonや楽天などのECサイトは、これまでここに多大な労力を払ってきており、納得性が高く豊富な情報を提供することや、購買者のレビューを掲載することで、信頼性を高めてきています。他にも、大手ではありませんが、その筋の信頼できる人がすすめる商品を取り扱ったり、完全にセルフサービスで完結するのではなくチャットなどを組み合わせてサービスを提供するタイプのECサイトも登場してきています。

AmazonだけがECじゃない。米で始まったEC新時代 – 湯川鶴章メルマガ ITの次に見える未来 – BLOGOS(ブロゴス)メルマガ

「ラストワンマイル」でも、これが論点のひとつになっており、小説の中では別の解決策が提示されています。

 

物流は戦争状態

決済や物流などは、買い物に必要な機能であり、有力なプラットフォームを形成する企業は、垂直統合してきています。それは、他社に重要な部分を握られるのが嫌だ、というところと、購買の入口から出口までを一気に完結させることで、マージンを最小化しようということでしょう。

Amazonがドローン(無人飛行機)で荷物を配送する構想を発表していましたが、その理由もうなずけます。

アマゾンも開発、「ドローン便」は離陸するか(動画) « WIRED.jp

また日本でみると、Yahooショッピングは物流面でAmazonや楽天に遅れを取っていましたが、アスクルと業務提携して物流に注力してきています。

アマゾン、楽天に殴り込み ヤフー、通販物流参入の本気|inside Enterprise|ダイヤモンド・オンライン

 

一方で、最近だとAmazonの配送請負業者から佐川急便が撤退し、ヤマトに一本化されています。

クロネコの悲鳴、ヤマトに豊作貧乏のジレンマ  :日本経済新聞

ECの発展で物流も増えているのですが、各ECサービス業者が物流を垂直統合してきており、物流業者は苦しくなっている感じです。まさにこういう事態の問題提起が、「ラストワンマイル」が描かれているので、数年前に描かれたことが、実際に起こっているということなのだと思います。

 

このあたりは、O2Oやオムニチャネルなどとも関連して非常に面白い分野なのですが、ひとまず興味がある方は「ラストワンマイル」を読むと良いでしょう。

今日はこのへんで。

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