【MBA書評】キャズム

だーくろと共同テーマで書いている、MBAに関する書評ですが、時間がないのを言い訳にしてしばらく書いていませんでした。そんなこんなしている間に、だーくろはブログを移転してWordpressになり、このブログとそっくりの外観になっていました。悔しいので、少しデザイン変更をしようか真剣に考えています。

これまでの二人の書評は以下からご覧いただけます。

MBA書評 | だーくろ
Mba | Synapse Diary

 

今日の本は、ハイテクマーケティングで有名な「キャズム」

昔から「キャズム」という言葉は知っていましたが、あまり深く考えてこなかったというか、プロダクト・ライフサイクルでマジョリティに至るまでには「溝」があるという浅い理解しかありませんでした。

しかし、この本はシリコンバレーを中心にしたハイテクマーケティングでバイブルと言われている理由も、読めばよくわかりました。

本の概要

ITなどのハイテク系は、技術の動向が早く、主導権争いや技術の盛衰が激しくなっています。その中でベンチャー企業が成功するためには、いち早くマジョリティと呼ばれる多くのユーザーに広めて使ってもらうかが重要になります。

しかし、プロダクト・ライフサイクルによって段階が存在し、段階によって対象となるユーザーが異なるので、当然マーケティング戦略もそれぞれ異なる、ということをこの本では示しています。そして、ユーザーによって関心を持つポイントが異なったり、技術に対するスタンスが保守的であるかどうかなど、プロダクト・ライフサイクルによって異なることと、それを攻略するためにはどのようなアプローチが必要であるかが書かれているのです。実際、「キャズム」はその中の一部でしかないわけです。

 

本のみどころ

先行事例が全てのユーザーにとって有用なわけではない

売る対象を広げるにあたって、先行事例というのは非常に重要です。しかし、マーケットを開拓するにつれて、保守的なユーザーも対象にする必要が出てきます。保守的なユーザーは、先行事例が有用とは限りません。以下のような場合です。

要するに、ハイテク製品がアーリー・アドプターからアーリー・マジョリティーへ市場を拡大しようとするときには、「先行事例と手厚いサポートを必要とする顧客を、有効な先行事例と協力なサポートなしで攻略しようとしている」という事実を肝に銘じなければならないということだ。

アーリー・アドプターという比較的新しもの好きなユーザーが取り入れた事例は、保守的なユーザーにとって有用なわけではありません。ユーザーによって求めていること・気にしていることが違うので、それに合致した先行事例が必要になるのですが、フェーズが変わった直後はそういう先行事例が乏しいため、そこに「溝」があるというわけです。

 

プロダクト・ライフサイクルが移るにつれて関心事項が変わる

プロダクト・ライフサイクルが進んで、技術が普及してくると、対象ユーザーと関心事項が変わってきます。例えば、一番最初に先進技術に関心を持つ人(テクノロジーマニア)と、技術がある程度実用的になってきたら関心を持つ人(ビジョナリー)では関心対象が違います。テクノロジーマニアは技術そのものに関心を持ちますが、ビジョナリーは技術がもたらすビジネス上の変革に関心を持つのです。

同じように、後ろに進むほど市場(周囲のいろんな人が使っている)や企業(ブランドや愛着)など、技術や製品から関心の対象が移っていくのです。本書から引用すると、以下の通りです。

ハイテク・マーケティングの世界には、テクノロジー、製品、市場、企業の4つの価値領域が存在する。そして、すべての製品に対して言えることだが、テクノロジー・ライフサイクルが進展するにつれて、顧客が価値を見出す対象がしだいに変化してくる。

マーケティング戦略としては、これらを考慮して組み立てる必要が出てきます。

例えば、Appleはあまり先進的な技術には関心を示さず、実用的になってきた技術を製品化し、独自のデザインを付与してマジョリティへ攻めることを戦略としてきました。なので、最初はビジョナリーに対して売り込み、その後マスマーケティングによってマジョリティでのシェアを獲得していくのです。

 

 

それ以外にも、ユーザーの特性や企業に求められる対応が細かく書かれていて、「キャズム」という言葉が有名になったのもわかる納得の一冊でした。マーケティング、特にIT系のマーケティングを知るには必読です。

 

「【MBA書評】キャズム」への1件のフィードバック

  1. デフォルトで一番シンプルな背景にしようと思ったのですが、まだデザイン思考中ですので、礼司さんはこのままでいいです。ようやくWP慣れてきたので、これからいじっていきます。

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