俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方

「俺のイタリアン」をテレビで知り、そしてそれがブックオフ創業者が手がけるものだと知ったときは驚きましたし、生粋の経営者なんだなと思いました。こういう経営者モノの本は、結構好きです。この本も当たりでした。言わずと知れた、ブックオフ創業者であり、「俺のイタリアン」など新しい飲食店を展開している坂本社長の一冊。MBAでもブックオフがケーススタディの題材になったこともあって、非常に興味深く読みました。

 

「俺のイタリアン」の創業ストーリーが中心になっていますが、過去の経緯や根幹となる経営理念を示していて、坂本社長の人間性や考え方を知ることができて、貴重な内容になっていました。

 

「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」の成功要因

いろいろ報道されている通り、「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」は、立ち飲みと高級料理を組み合わせることで、低料金を実現しています。原価率が88%でも利益が出る、というのは驚異的です。

その後、店舗展開をしていくわけですが、15~20坪程度で、いずれも1日3回転以上していて、月商1200万~1900万円という繁盛店ぞろいです。フードメニューの原価率は60%を超えていますが、これを立ち飲みのスタイルにして、客数を回転させることによって、これまでの常識にない数字をつくり上げているのです。シミュレーションでは、原価率が88%であっても利益が出ます。

飲食業は原価は20%程度と昔聞いたことがあり、基本的には固定費が多くを占める業態になっていて、いかに顧客を回転させるのかが肝なわけですが、まさにその点に着目して、高回転させる店にしたわけです。

これだけであれば、ビジネスモデルとして思いついたアイデア勝ちだな、となるわけですが、本を読むととてもじゃないですが、それだけじゃないことがわかります。

 

仕組みで勝って人で圧勝する

本書の中に何回も登場したのは、「競争優位性」です。そして、競争優位性を築くために「仕組みで勝って人で圧勝する」と述べられていました。

つまり、仕組みとなる業態を最初に築き、その後は仕組みの中でいかに人が運用し改善していくかが勝負だ、ということです。実際、「俺のイタリアン」などもオープンしてからの積み重ねによって、効率性やサービスレベルを向上させ、参入障壁を高くしています。

思い出せば、ブックオフも業態としては当時新しかったですが、参入障壁は高くありませんでした。しかし、結果としてブックオフがあれだけ拡大したのは、業態だけでなくオペレーションの部分に優位性を築いたからだと思います。

また、「人で圧勝する」ためには組織に考えを浸透させたり、モチベーションを高めていくマネジメントが重要になります。この点でも、飲食業界の現状や、料理人に対する権限委譲など、様々な工夫が注入されていました。マクロ的に問題点を捉え、数値に裏付けされた業態を生み出し、顧客や社員の満足度を高めていく。これらが重なることで、「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」は拡大してきたのがわかります。

 

稲盛フィロソフィの影響

本の中で外せないのは、京セラ創業者稲盛和夫の影響です。昔、「生き方」を読んで、その情熱の高さに驚くとともに、理念が強烈な印象で、若干引いてしまった覚えがあります。ただ、今回改めて稲盛フィロソフィが紹介されており、その一貫性や「利他」の精神については考えさせられました。

特に、ブックオフがフランチャイズで展開していくときの、「利他」の精神との関係については、納得というか「なるほど」と思わされる部分があります。

フランチャイズは本部が加盟店にパッケージを提供するものです。パッケージで一番必要なものはフィロソフィです。どうしたら仕事が楽しくできるのか、生き方と仕事の仕方をいっしょにパッケージにしないと、ビジネスモデルだけが一人歩きしてバラバラになってしまうのです。  先に、ブックオフのビジネスモデルは5分で説明できると言いましたが、それにもかかわらずブックオフに追随するところが出てきていないという理由は、このフィロソフィを築いたことと、それに基づいて実践してきた数々のことが競争優位性をもたらしたからだと思います。

 

それ以外にも、熱い情熱を組織に注ぐ社員の様子、坂本社長が72歳になって人生2回目のIPOを目指す理由などは、本当に胸を打たれるものがあります。感動しました。ぜひいろんな人に読んで欲しい。

俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です