「起業家」は経営の良いケーススタディ

この本は、経営を考える上での、とても良いケーススタディだと思う。

サイバーエージェント藤田社長の新作。社長の体験談と思って軽い気持ちで読んだし、前半はドットコムバブル後の業界動向やライブドア事件などが時系列に綴られていた。前半だけでも、どうやって外部環境を捉え、組織作りを行っていったのかという点で非情に有意義な内容になっている。しかし、この本の見所は後半にある。赤字を垂れ流していたアメーバ事業をどう成功させていくのか、という信念に基づいた行動の経緯が率直に語られている。

 

企業文化の育成が強い組織を作る。ただし、それを作り変えることは大変なこと。

前半は特に、サイバーエージェントの企業文化が徐々に形成されていく過程がわかる。新卒を獲得して育成していくこと、買収に頼らず新規事業を生み出していくこと、長期雇用を前提とすることなど、今のサイバーエージェントの特徴といえる部分が生み出され、それを強化するような制度が企業にビルトインされていく。これによって、戦略・企業文化・リソースなどが整合性のある状態で事業が拡大していく。こういう点は、経営のセオリーとしていることだが、実際にやるのはとても難しい。

そして、この企業文化が後半の赤字を垂れ流すアメーバ事業との戦いにおいて、非常に大きな障壁にもなったりする。企業文化は、良い部分だけでなく、知らないうちに副産物も生み出す。技術者軽視のカルチャー、広告事業とメディア事業の評価ベクトルの違いなど、事業の特性や企業文化から作られた人の思考や感情は、簡単には変えられない。

ついに、社長は現場に直接乗り込み、細かいところまで指示・命令を出すようになる。これは一見管理者として良くないように感じるし、社長自身もこれまでの「現場に任せる」スタンスから大きく変えている。それでもメディア事業を成功させる、という信念と、現場に任せてもうまくいかなかったことから、そうせざるを得ない状況だったとも言える。結果は、知っての通り大きなアクセス数を獲得して収益化に成功している。

 

企業をスケールアップするために収穫逓増型を目指す。

本の中に何回も登場してくるのが「収穫逓増型」という言葉。特に、企業をスケールアップさせていくには、とても重要な考え方になる。特にネット企業との親和性が高い。簡単にいえば、「仕組み」で儲ける固定資産型のビジネスモデルだ。

最初にサイバーエージェントが始めた広告事業は、人が動かないと収益には結びつきにくい。それでは、事業を大きくするために人をたくさん採用する必要が出てくる。こうなると、事業拡大にも時間がかかる。

労働集約型が悪いというわけではないが、スケールアップするためにはレバレッジがかかるような儲かる仕組み作りが必要になる。
労働集約型から脱却するには | Synapse Diary

 

ちなみに、Facebookは2011年時点で売上2,856億円に対して、社員数3,200人。
Facebook IPO申請で売り上げ、利益、ユーザー数などの実数が判明

サイバーエージェントは、2012年時点で売上高1,411億円に対して、社員数2,527人。
【株式会社サイバーエージェント 新卒採用】|就活・求人情報はリクナビ2014

 

社長は孤独である。

最近はいろんな企業の社長とお話する機会もあるが、みんな揃って言うのは、社長というのはとても孤独、ということだ。この本でも、まさにその点が非常によくわかる。

組織を作り上げていくものの、思う通りに進まない事業と社員。「任せる」という方針を覆して、現場の細かいところまで口だす方針転換。買収劇を繰り広げるライブドアを始めとする企業を横目に、積極的な買収は行わないことを決めたものの、買収を積極的に進める企業が業績を高めていく焦り。上場企業として投資家のプレッシャーを受けながら、無理に黒字化することへの誘惑と失敗。

 

経営者は様々な状況で、利益が相反する状況が訪れ、その度に考え、迷い、判断しなければならない。一方で少し安心するのは、こういう優れた経営者といわれる人であっても、当然のように迷い、確信と自信喪失を繰り返し、行動しているということ。それでも、そういう孤独な戦いは狂気にも似た信念があるからこそ。

 

僕はアメーバのサービスとかあまり使ったことはないけど、この本にある社長の考えは好きです。後半は、読みながら気持ちが昂ぶり、一気に読み終えました。経営者にはおすすめです。

起業家

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