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オープンデータが普及するためには何が必要か

政府や地方公共団体におけるオープンデータの動きが活発化している。知事が集まりオープンデータの協議会を開催したり、全国でもオープンデータをテーマにしたハッカソンなどが開催されている。

オープンデータは、政府が持っている統計情報やその他行政に関する情報を公開することで、民間に広く利用してもらうことを指しており、オバマ政権が成立してオープンガバメントが打ち出されたあたりから、世界としても広く注目されている。政府が持っている「情報」という資産を、利用しやすい形で提供し、広く社会に還元できる可能性があるということで、あまりお金がかからず行える取り組み、という意味でも注目されている気がする。

 

さて、オープンデータの取り組みという点では、アメリカはやはり進んでおり、事例がたくさん生まれている。今回はこの記事の内容を参考に、今後の日本で必要なオープンデータの方向性を考えてみる。
Open Data Success Requires Streamlining and Standardization

 

オープンデータの標準を作る

サンフランシスコでは、レストランの衛生状況などを評価する「LIVES」という仕組みがある。これは、行政が持っている衛生検査などの情報を公開しているのだが、それを地域のレストラン情報を提供する「Yelp」と連携させている。

Yelp

 

このスコアをクリックすると、詳細な内容が表示される。

Yelp

 

実際これは、Health Dataの内容やフォーマットを定義する取り組みを行っている。

Health Data

 

こういう枠組みが出来上がることで、後から参画する人もわかりやすく、取り組みが広がりやすい。

オープンデータの欠点は、データは公開するのだが利用目的はそれぞれ使う人に任せられており、ある意味カオスな状況が生まれやすいということだ。なので、こういう「LIVES」などの目的が定まった時点で、早めに標準を定める流れが必要になるだろう。それは、新興企業が作ってデファクトスタンダードにしても良いだろうし、業界関係者が協議して標準を定める動きの方が適切なのかもしれない。

 

ハッカソンなどで、地域のコミュニティを育てる

オープンデータの最初のハードルは、いわゆる「ダーウィンの海」と言われるような、アイデアは豊富にあるが実用に耐えうるか、という点だ。それを解消するひとつの手段として、ハッカソンがよく行われている。ハッカソンは、24時間とか限定された時間でプログラムを作成し、アプリを公開することを目的としたイベントで、アイデアを集め、実用化につなげるきっかけを期待される。

データセットは、使われなければ意味がない。しかし、公開したからといってすぐに何かに利用されるかといえば、なかなか難しい。日本で進んでいると言われている鯖江市であっても、ほとんどが特定開発者のアプリであることが現状だ。
福井県鯖江市>アプリケーション(オープンデータによる)

ただ、アプリコンテストなどを開催することで、間口を広げ、コミュニティを育てる取り組みを行っている。
福井県鯖江市>WEBアプリコンテスト 結果

つまり、忍耐強くコミュニティを育てる発想が必要になる。何回もハッカソンなどのイベントを開催し、公共データを利用し、ビジネスインパクトを与えるようなアイデアを生み出し、かつ関係者間で意見を交わせるようなコミュニティを形成していくことに注力していくべきだろう。これを誰が行うのか、という点は今後の課題かもしれない。

 

そもそも大都市圏以外は不利なのではないか

BtoCのWebサービスは、サーバやアプリケーションを投資し、多くの人に利用してもらうことで収益化する「資本集約型」を目指す場合が多い。つまり、一定規模のパイが必要になる。ここでひとつの疑問が生じる。オープンデータでアプリケーションやサービスを作って、どの程度の市場が見込めるのか、ということだ。各ユーザーから課金するにしても広告モデルにしても、そう簡単に収益化が見込めるわけではない。

利用する人が多くないと、ペイすることが難しい。都市部の方が人口が多いという点では、オープンデータが普及しやすい環境であると思う。アメリカでも事例が多いのはニューヨークやサンフランシスコなど大都市だ。つまり、データはおそらく自治体単位で公開されていくんだろうけど、その単位でビジネスモデルを考えても、マネタイズに苦労するんじゃないか、ということだ。

オープンデータのビジネスモデルの考え方としては、この記事にあるようなパターンになるだろう。こういう軸をベースにして、広がりを持たせるモデルを考えることが重要になるだろう。
Open data economy: Eight business models for open data and insight from Deloitte UK – O’Reilly Radar

 

 

それ以外にも、たくさんハードルがある。一方で、海外にはオープンデータを利用した新しいビジネスモデルの成功事例も登場している。それだけ期待も大きい。今後もっと本格化したときに、日本社会はどういう変化が訪れるだろう。

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