IGPI流経営分析のリアル・ノウハウ

「経営分析」っていうと、売上営業利益率とか棚卸回転期間とか当座比率とか、そういう指標や計算式のオンパレードという印象がある。一応、その指標がどういう意味を持つのか、業界平均と比較する、みたいな使い方を教えてくれるんだけど、でも計算してみて「で?」という感じになる。

実際に会社再生を手がける著者だからこそ、リアルなノウハウとして示すことができるのだろう。

 

経営を大枠で「具体的に」捉えること

経営を分析するにあたって、もっと重要なことがある。それは、

経営分析では、個々の数字の意味を検討する前に、事業のメカニズムを把握し、そのメカニズムをコストに置き換え、儲けのメカニズムとして読み解くことが何よりも重要である。P.93

ということだ。本の中では、できるだけビジネスモデルを具体的に想像し、フェルミ推定で売上や費用を推定することで、経営分析で用いる指標にも大きな意味を持たせることができると述べている。また、本当に規模の経済が働くような事業は、実際は少ないとも。

 

セオリーの本質を知ること

規模の経済といのは、ビジネス・スクールとかビジネス本ではよく出てくる言葉だ。それについても、当然ながらその本質を理解していないと、安易に規模の経済が働くなんて言えない。

だが、「規模が効く」というのは、2つの要件を満たす必要がある。あるコスト費目について、売上が大きくなっても、お客の数が増えても、品数が増えても、さほどコストが増えない費目(共有コスト)がある場合。なおかつ、それが全体の事業コスト構成比の中でかなり大きな割合を占めている場合である。P.95

 

あるいは、会社を取り巻く取引状況などの構造的な部分に問題がある、ということも。

見た目は同じ工場でも、系列取引の割合を見極めないと、経営の実態に近づくことはできない。BtoBのビジネスでは、このような産業構造的な視点からの経営分析を忘れるな。P.170

 

値を計算することは誰でもできる。だけど、そこから何を導くかという大きな視点、具体的な視点がないと、結局数字遊びになってしまう。同じ著者である「プロフェッショナル・コンサルティング」を読んだときも思ったけれど、コンサルタントというのは本当に泥臭い。