地域の力が日本を変える

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地域の力が日本を変える

 

地方には問題が山積している。過疎化、中心市街地の衰退、若者の雇用場所の喪失。この本を読んでいても、社会資本はこれ以上新規投資できないほどの財政難、公共交通機関の経営難による移動手段の減少など厳しい現実と将来が描かれている。

それでも、前向きに取り組んでいる人たちのインタビューを読んで、希望も感じる。そして、いくつかこれからの地域活性化に必要なポイントが見えてくる。どれも当たり前といわれればそれまでかもしれないが、非常に重要な要素を含んでいる。
 
 
地域内で自立した仕組みを形成する
これは、特に資金面が先行する。国や自治体の助成金に依存しない仕組みを作ることだ。最初の立ち上げは確かに難しい。資金面でも苦慮するので、助成してもらうこと自体が悪いのではない。ただ、継続的な仕組みを構築するのであれば、やはり自立した仕組みが必要なのだ。
 
それは人材についても同じだ。若手の雇用を創出し、地域を振興できる人材を育て、活躍の場を与えることが必要だ。
 
 
地元の事業をインキュベーションする仕組みをつくる
本の中でいくつか登場するが、成功してると思われる事例には、地元の魅力を発見し、それを事業化するまでのインキュベーションの仕組みが組み込まれている。
 
別府温泉で始まったオンパクは、地元の魅力を感じられるマイクロプログラムを用意する取り組みなのだが、これが地元事業者の新しいサービス化につながるインキュベーションの役割を担っている。
 
ただ、ビジネスの起業化支援には、人材、資金、起業に必要な情報・人脈の提供や持続可能なビジネスモデル構築等の経営ノウハウの提供などが求められるが、こうしたニーズに応えることができる専門的な能力を持った中間支援組織が日本ではまだ十分には育っていない。P.61
 
インキュベーションの先に、事業化を支援できる組織の充実も課題だろう。
 
 
新しい資金の流れをつくる
事例として、熊本城の「一口城主制度」や高知県梼原町の「千枚田オーナー制度」が挙げられているが、直接感心がある人たちから少額融資を集める仕組みをつくることが、新しい資金集めの仕組みが生まれている。
 
イベントカレンダー – 【熊本城公式ホームページ】
棚田(千枚田)/高知県梼原町
 
一つの事例では、LLCとLLPの組合せで、出資会社と運営部門を明確に分けて、出資しやすい構造をつくるとともに、出資と運営の責任明確化を図っているというのがあった。
 
ネットの世界ではCampfireみたいなマイクロファイナンスが登場しているし、関心がある人から少額融資を受けやすい仕組みをつくることが、うまく資金運営していく重要なポイントになるんじゃなかろうか。
 
 
とにかく事例が満載だ。これからの地域活性化を考える人は、読んでおいた方が良いだろう。
 
岐阜の中心市街地を初めて見たときは、人の少なさに正直ちょっと驚いたが、最近はギフレクや長良川おんぱくの取り組みを見たり、実際住んでみて穏やかな岐阜の街並みをみて、都市部とは違う価値を感じるようにもなっている。いろんな「良さ」を探すのも、楽しいもんだ。
 
 
 
最後に。

これからの地域再生は、地域経済の成長だけではなく、むしろ地域住民が実感する地域での「暮らしの満足度」や「幸福度」をどう高めていくかに価値軸が置かれるであろう。P.5