プロトタイプシティ

日本でもスマートシティ・スーパーシティが盛り上がってきているけれど、そういう新しい取り組みに都市レベルでどういう要素が必要なのか、が述べられた一冊。 基本的には、中国の深センをベースに書かれています。深センは今やイノベーションが生まれる場所、として認知されています。
ポイントは、非連続な価値創造と実証です。社会的には、これまでの延長とは違う非連続な価値創出が求められています。 そして、非連続な価値を見出すためには実証を多く行う必要があるのです。それが、タイトルにもあるプロトタイプシティです。 プロトタイプを進めるためには、プロトタイプを早く安く作るリソースと、プロトタイプを試すフィールドが必要です。あとはそのプロトタイプを試すために、誰かがリスクテイクする。そういう構造的な仕組みが求められます。 残念ながら、本書では深圳を真似して作るのは難しいと書いています。しかし、都市に創造性をもたらすために必要なことは本書から見えてくるでしょう。 スマートシティ関連に興味ある方はこちらもどうぞ。

新しい知識と経験を求めよう。「RANGE(レンジ) 知識の「幅」が最強の武器になる」

年末年始に読んでいたんですが、この本が大変面白かったです。

個人や組織が良い選択をしていくために、どのような学習が必要かが書かれています。AI時代に人がどう学ぶべきか、という点も書かれています。
基本的にはタイトルにもなっている通り、”学習の幅”が重要なのですが、それも様々な角度から検証されていてとても刺激的でした。

早い時期から専門性を高めるのは良いことか

子供を育てている方であれば、自分の子供がどういう学習の仕方をしていくと将来活躍できるのだろうかということを考えると思います。幼少期から専門的な教育を行うことで、一流の人になれるのではないか、という話です。
タイガーウッズなど、早期教育で活躍した例なども検証しながら、教育の効果についてひも解いていきます。そしてひとつ示されるのは、創造性が求められる領域については、「訓練の幅が重要になる」ということです。
全体として見えてくることは、ある代表的な研究の結果と一致する。その研究は音楽だけに限定した研究ではないが、それによると、「訓練の幅の広さは、応用の幅の広さにつながる」。言い換えると、多くの文脈で学べば学ぶほど、学習者は抽象的なモデルをより多く構築するということだ。学習者は、これまでに見たことがない状況に知識を応用するのがうまくなる。これこそが、クリエイティビティーの根幹だ。


専門性の重要さが失われるわけではないと思いますが、いろんな領域に触れておくことが重要ということです。

我慢して続けることがポジティブか

GRIT(やり抜く力)という有名な本があるのですが、「RANGE」でもこのGRITの本について触れられるところが出てきます。
力を発揮しようと思うときに、やり抜く力が重要という点はだれしも「そうだろう」と考えると思いますが、この「RANGE」では「自分の適性を理解して、時には何かをやめて、場を離れることが重要だと説いています。
自分で活躍するフィールドを築く人は、辞めるタイミングも理解し、より自分が活躍できる場所へ進んでいる、ということですね。

幅広い意見を受け入れるために

あとは、この示唆も個人的には好きでした。
科学にとても興味のある人たちは、その内容が自分の現在の信念に合っていてもいなくても、常に新たなエビデンスを見ることを選んだ。一方、あまり科学に興味のない人たちはハリネズミ的で、知識を得ると、自分の考えに反するエビデンスにはさらに抵抗するようになり、政治的により偏向していった。科学に興味がある人はこの傾向に逆らった。

科学リテラシーは、自分の意見をうまく軌道修正しながら考えていけるのに役立つのだな、と。

ネットフリックスの革新的な人事ルールを学ぼう。「NO RULES 世界一「自由」な会社、NETFLIX」

ネットフリックスといえば、DVDレンタルから始まり、ストリーミング、独自コンテンツ配信とどんどんビジネスモデルを変化・進化させてきました。

グローバル展開も進んでおり、最近では売上が200億ドルを超えています。

Netflix, Inc.の業績推移 | Strainer

様々なイノベーティブな転換を図りながら躍進しているネットフリックスの、人事がどのように運営されているかが示されたのが本書です。

すごい評判になってるな、と思っていましたが、ようやく読めました。結論、評判通りというかすごい刺激的な内容でした。

イノベーションは「人材密度の濃さ」から生まれる

本の内容は、ネットフリックスの創業時から振り返り、文化や人事制度をどのように考え、施策を展開してきたのかが詳細に書かれています。

その始まりは、「凡庸なメンバーが増えることでイノベーティブな活動が減る」という経験・考えから来ています。会社が拡大するにつれ、メンバーが増えていく。その中で、人材の質が会社の求めるレベルから少しずつ下がっていく。そうすることで、様々な問題が起こったと書いてあります。

するとふたつのことが起きた。まず会社は迅速にイノベーションを生み出せなくなった。業務の効率は高まったが、クリエイティビティは低下していったのだ。成長するためにはイノベーティブな製品を生み出している会社を買収しなければならなくなった。それによって会社はますます複雑になり、ルールや手続きがますます増えていった。

しかし新しい発想や速く変化することより、プロセスに従うことが得意な人材を選び、そのような職場環境を整えてきたために、変化に適応することができなかった。

こういう問題を解消するため、ネットフリックスが純粋に求める人、市場でトップクラスの人を採用・確保することがベースになっているそうです。これは思うのは簡単だけれど、実現するのはとても難しい。それを実現するためのルールや施策が書かれているのも、本書のすごい魅力的なところです。

基本はルールを極力撤廃し、自由と責任を与えるということなのですが、結構驚くようなルールが撤廃されています。「そういうルールがないと、こういう不正が行われたりしませんか?」という想定問答に対して、答えが用意されているのもすごいです。

”自由と責任”というのはよくいわれるけれども、組織のカルチャーや制度としてここまで浸透しているのは、純粋にすごいなと思いました。

フィートバックの重要さ

もうひとつ印象に残ったのは、組織内でのフィードバックがとても重視されていることでした。イノベーティブな活動を支えるひとつとして、様々な意見が適切な方向に取り入れられていくのが、とても重要になるということですね。

ここまでは簡単な話なのですが、特筆すべきは「フィードバックというのは受け手にとってネガティブに受け止められて、人間関係や組織の雰囲気を悪くする恐れがある」という問題に、真正面から向き合っていることです。

日本だと顕著である、と書かれていますが、誰かが誰かに意見をする、改善を促すようなコメントをすると、聞いた相手はいやな気持ちになり、空気を悪くする恐れがあります。あるいは、それを見越して意見を言わないようにする、というのも大いにあるでしょう。

昔、360度評価を行っている企業で、部下が気を使って当たり障りのない意見しか出てこなかったり、本質的でない不満などの本音が出すぎたりと、企業が狙った形に制度が浸透せず、廃止してしまったという話を聞いたことがあります。

一方で、多面的で多様な意見を受け入れるというのは、変化しながら生存していくためには有効な手段であったりします。政治における民主主義というのは、独裁より効率が悪いとわかりつつ、今でも使われているのは、ある人や考えに固執することのリスクをヘッジする意味がある、という考えも聞いたことがあります。企業においても、変化を起こしていくためには、様々な意見を適切に取り入れることが重要になるのだと思います。

ネットフリックスでも、自分に否定的ともとれる意見を受け入れることで、企業や個人が成長していくという共通認識を持って、適切なフィードバックを立場にかかわらずお互いに出し合う文化を育てているとのことでした。

ディナーの席で自分の「要改善」の部分を全員の前でさらされるのはどんな気分か、と尋ねると、だいたいこのような回答が返ってくる。恥ずかしさを感じることもあるし、たいていとても居心地が悪い思いをする。だが最終的には、自分のパフォーマンスを大幅に高めるのに役立つ。

ネットフリックスの躍進は、こういう人事の取り組みが下支えされているのだと、すごい納得感がありました。上記以外にも様々な施策が、根拠などとともに描かれているので、人事やこういうカルチャー醸成に興味ある方はご一読の価値ありです。

電力改革がどこまで進んでいるかを学ぶ

今年度から電力会社が分社化されたり、エネルギー界隈が結構大きな変化を受けているそうなので、理解するために本を1冊読むことにしました。

世界を見た時に、自然エネルギーがこんなに盛り上がってるとは知りませんでした。ドイツなどは再生可能エネルギーの構成比が4割近くになっています。

https://sustainablejapan.jp/2019/01/07/german-electricity/36454

最新のドイツのエネルギー構成比率がこちらのグラフです。上のあたりにある2つが風力と太陽光で、これだけで30%を超えているのがわかります。

Bar Charts Electricity Generation | Energy-Charts

(余談ですが、上記のサイトがすぐにこういうグラフを作れるようになっていて、本当素晴らしいですね。フラウンホーファーという研究機関が公表してるようです。)


自然エネルギーはいろいろ取り組みが進んでいるんだろうなーと思ってはいましたが、メインストリームになるイメージがなかったのです。それがすでに4割とか、すっかりメイン電源になってきていますよね。

そして、日本はそのような世界の中で遅れているようです。風力発電が特に顕著。こちらが日本のエネルギー構成ですが、震災以降原子力がなくなり、代わりに石炭や天然ガスが増えています。水力等がそれほど主力になっているようには見えませんね。最新が2015年なので少し古いですが。

第1節 エネルギー需要の概要 │ 資源エネルギー庁

日本では固定買取価格制度がそろそろ終わることを知っていましたが、それは市場が解放されて自由取引に移行したドイツなどをモデルにしている、とのことで、なるほどと思いました。

が、数字を調べると、日本の自然エネルギーはそこまで高まってきているか疑問という、本書で提起されている疑問は残りました。

すでに東電と中電の火力発電部門はそれぞれ切り離されて統合し、JERAという新しい会社が生まれていますし、エネルギー領域は自由競争が進んでいます。世界では自然エネルギーもどんどん大きなウェイトを占めて、市場取引も活発になるし、電気自動車と言う新しいキープレイヤーも今後でて来るでしょう。

今後も大きな動きが生まれていきそうですね。

国内の自動車メーカーの2020年度Q2の決算状況をみる

自動車メーカーのQ2の決算が発表されました。世界の自動車販売台数が回復してきている、という報道が出てきていましたが、実際どういう数字になってきているのでしょう。

まずはさらっと5年分の業績推移を

5年間の売上高の推移がこちらです。これをみると、直近の1年だと売り上げが減少しています。
まさにコロナの影響が出ていますね。営業利益率でみると、トヨタ・スズキ・SUBARUが高めです。収益力の差が見えていますね。これが、後ほどみる最新のコロナの影響にも反映された気がします。

2020年度Q1の業績

次にQ1もおさらい。売上高だと、どこも大きく減少しています。40-50%減少。改めてみてもすごい凹み具合です。
営業利益率だと、黒字だったのはトヨタとスズキだけでした。

2020年度Q2の業績

そして、今回発表されたQ2の結果です。売上高は、Q1に比べれば減少幅が小さくなってきています。
以下はQ1の売り上げの変化率とQ2の変化率を計算したものです。Q1は全社-40%超でしたが、Q2になると、トヨタ・ホンダ・スズキ・SUBARUは-20%超まで回復しました。
営業利益率でもその4社が回復しています。特にスズキは大幅改善していて、前年同期に近くなっています。すごいですね。
コロナの影響が思ったより早く回復しているといわれていますが、数字にもその影響が見える決算でした。ただ、国内はじめコロナウィルスの蔓延がまた言われていますので、油断ならないのかもしれないですが。そして、国内メーカーでは収益力の差をコロナが強めてしまった印象も持ちました。

両極化時代のデジタル経営――ポストコロナを生き抜くビジネスの未来図

デロイトが描くDXは、企業が両極化していく厳しい世界でした。

一番印象に残ったのは、ビジネスにも社会課題解決が求められる、という点で、これはいろんなところで目にする機会が増えていたので、まさにという感じでした。

社会課題解決を掲げた〝大義力〟ある共通のパーパスと、データという共通言語を基軸とするつながりは、デジタル化の加速による急速な情報の伝播やAPIの活用とも相まって、極めて短期間に求心力を高めてグローバル規模で支持者・協力者を増やし、エコシステムを一気に拡張させることを可能にするものだ。

”存在意義”に対する共感が求められている

「持続可能な開発目標」であるSDGsも、Googleトレンドでみるとこんなに注目されています。

社会課題解決企業の存在意義が問われており、共感を生む”パーパス”を掲げるのが重要となっています。企業の効率性や収益性だけを追求することへの限界が現れています。

パーパスとデジタルマーケティング|橋本和人 ECD Rashii編集長|note

短期的には変動が大きい時代にあって、環境や方針がどんどん変化していきます。その中で、パーパスと言う形で軸を据えることも、同時に重要になっているのだと思います。

産業をまたいだエコシステム

また社会課題解決と言う観点でいくと、”社会”といってるぐらいなので、非常に広く、一企業では解決が難しいことがほとんどです。そうなると、産業をまたいで複数の領域で解決が求められることになります。自社だけでは解決できないため、様々な企業が連携して解決を図れるようにする”エコシステム”が求められます。

dXを通じて社会課題解決と事業成長を両立させるようなイノベーション機会を創出していくためには、共通の目的意識のもとに多様なプレーヤーをつなぎ合わせ、Win‐Winの関係で協働できる、高い求心力を持ったイノベーション・エコシステムを構築し、社内的にもそれを支えるイノベーションエンジンを組み込んでいくことが求められる。

トヨタが”モビリティカンパニー”を掲げて、NTTをはじめ、様々な企業との連携をどんどん進めているのも、象徴的な動きだろうと思います。

これからは「地方の時代」でもなく「都市の時代」でもない

アクセンチュアのこれまでのスマートシティーの取り組みなどを踏まえた、これからの日本の社会構造を示唆した本を読みながら、これからはやはり都市への集約と言うのは見直されるのかもしれないと改めて思いました。

都市へ移動する人々

もともとは、都市機能が集約すると、効率性が上がると言われています。こちらのTED動画がわかりやすいです。

都市および組織の意外な数学的法則

世界でみても、これからは都市へ人が移動するとも言われています。

国際連合「世界都市人口予測・2018年改訂版 [United Nations (2018). 2018 Revision of World Urbanization Prospects.]」概要 | 国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

年収も都市の方が高いのは自明です。

【書評】年収は「住むところ」で決まる

 

都市はQoLを上げてくれる場所か

冒頭で紹介した本では、都市コストが高くなっていることを数字で示しています。例えば、家賃だとこんな感じ。

それでは、都心部の住みやすさはどうだろうか。市民生活に関連するいくつかの指標から東京の住みやすさを考察してみよう。  まず、1㎡当たりの家賃。東京の家賃は2595円と、全国平均の1319円の約2倍。東京を含む首都圏全体でも2031円と、かなり高い水準だ。こうしたこともあってか、2018年に総務省が行った「住宅・土地統計調査」によると、一住宅当たりの延べ床面積は東京都が最も狭い 65・18 ㎡となっている。最も広かった富山県の143・57 ㎡と比べると半分以下だ。東京のような大都市圏で暮らす多くの若い人にとって、広い住宅を構えて悠々と暮らすのはかなわぬ夢となっている。

 

それ以外にも、食費は全国平均の1.5倍、刑法犯認知件数も1.2倍という数字が挙げられています。加えて、通勤ラッシュによる経済損失も大きくなっており、ワークライフバランスをとりづらい点も触れられています。

このようなネガティブな側面がありつつも、それを上回る都市のメリットがあるからこそ、集積が進められてきたわけですが、それも「価値観の変化」によって変わってきているのかもしれません。

これまで経済的な向上、個人で言えば年収のような指標が幸福度に近いものと捉えられて(もちろん、それが全てではないとみんな理解しつつも)いました。しかし、キャリアが多様化する中で、価値観も変化してきており、経済的な指標だけではなく、いろんな価値観での幸福観・人生観が増えていった気がします。

 

というようなことを考えていたら、ちょうどこんな記事をお見かけしました。

年収マウンティングそろそろ滅びろ|池澤 あやか|note

全く同感です。お金は必要不可欠なものではあるし、労働搾取なども当然ながらよくありません。ただ、人が大事にするもの中には、お金以外にもあるし、人や場面によって重要度は変わるのだと思うわけです。

 

二項対立ではないどこか

都市がダメ、田舎の方が素敵、とかは全く思わないわけですが、これまで都市化が進んできていた流れというのは、前述したような価値観の流れの中で、コロナがショック療法的に人々に浸透させた可能性があるのでは、と考えています。

安宅さんの「シン・ニホン」でも、本書の最後のあたりに「都市集中型の未来に対するおオルタナティブ」として、「風の谷」いう構想を提唱しています。

「シン・ニホン」を読んで日本の現状と未来を考える

(これがコロナ前の2月に発売されたことを思うと、本当に先見の明があるとしか言えない)

一方で、地方はインフラを維持するのが難しくなっています。単純に「地方の方が幸せになれる」というわけではなく、課題は山積です。再度冒頭のアクセンチュアの本によると、人口減少による課題がこう述べられています。

人口減少局面において、大きな影響を受けるのは、店舗やサービスなどの生活インフラだけではない。電気・通信・ガス・水道・交通・公共施設といったハードインフラへの影響も必至だ。  高度経済成長期に構築・整備されたインフラは、①人口減少による維持財源(有料サービスは売上、公共サービスについては予算) の不足、②維持するための労働力不足、③更新タイミングの波、の3重苦に襲われる。

 

この影響がすでに顕在化しているのが、地方の過疎地です。移動というテーマだけみても、こういう課題が加速しています。

こうして、地方部においては移動困難者、交通事故死亡者数、移動手段のための財政負担の3つがスパイラル式に増加する「負のサイクル」が加速している。地方部において、自ら運転しなくても生活に支障をきたさず暮らせる地域インフラの再構築が早急に求められている。

 

JR四国は赤字になっており、交通インフラを維持するのは本当に厳しくなっています。
過疎地における地方版MaaSの取り組みが増えているのも、その流れからいかに効率的な仕組みによって交通インフラを整備するかが求められているからです。

今年度12億円の赤字見通し JR四国はなぜ苦境なのか? 好調なJR九州との違いは(小林拓矢) – 個人 – Yahoo!ニュース

 

そういう意味では、今の都市もそうでない郊外も、既存の仕組みの延長では難しいのではないかという気がしてきます。もっと大きな枠組みで都市構造を見直すタイミングがきてるのかもしれませんし、いろんな取り組みが始まっているのも事実です。

「都市vsそれ以外」という二項対立ではない新しい形を考える時です。

「良い戦略」とはどういうものか?

メルカリの山田進太郎さんが、本書を勧めていたのをみて、

ほとんど理解されていない「良い戦略、悪い戦略」 – suadd blog

「今の自分が置かれている状況から、どう戦略を立てるか」を改めて考えてみようと思い、この本を読みました。

読んでみて、めっちゃ刺激的で戦略に対する様々なヒントをもらうことができました。

「戦略」という言葉はいろんな場面で聞きますが、本当に意味のある戦略を作るのは、とても難しいなと日々思います。形として定義しても、「それ本当に意味あるんだっけ」とか「相手に勝てるものなんだっけ」という内容のものもたくさん見かけます。自分で作ろうにも、結構迷子になって散々考えた挙句、「良いものを作る」的な当たり前な内容になってしまうことも・・・。

本書では、戦略に対する考え方が、事例を交えてたくさん出てきます。例えば、こういう表現がたくさん出てきて、ビシバシやられる感じです。

悪い戦略とは、戦略が何も立てられていないという意味ではなく、また失敗した戦略を意味するのでもない。悪い戦略では、目標が多すぎる一方で、行動に結びつく方針が少なすぎるか、まったくないのである。多くの人が戦略というものを誤解している。

 

一方で処方箋はとてもオーソドックスというか、当たり前だと思うところなんですよね。

悪い戦略がはびこるのは、分析や論理や選択を一切行わずに、言わば地に足の着いていない状態で戦略をこしらえ上げようとするからである。その背後には、面倒な作業はやらずに済ませたい、調査や分析などしなくても戦略は立てられるという安易な願望がある。つまり悪い戦略は、良い戦略を練り上げるためのハードワークを自ら避けた結果なのである。

 

安易な飛び道具的なものはやはり世の中にはなく、地道に汗をかきながら、考え尽くせということです。

分析し、競合と非対称でかつ決定的に重要なポイントを見出し、そこにフォーカスする。言葉は簡単ですが、やるのはとても難しいのです。

それ以外にも、様々なヒントが書かれているので、戦略について考えるならとても参考になると思います。

「ロジスティクス4.0」で物流業界の課題と未来を勉強する

物流業界の構造やトレンドを知りたくて、この本を読みました。

自分が不勉強だっただけなのですが、想像以上に変革が起こっており、とても勉強になりました。今の課題やロジスティクス4.0の内容を知るには良い一冊だと思います。

物流業界の課題

物流業界の課題はどういうものがあるでしょうか?本書を読めばわかるのですが、こちらの記事に簡潔にまとまっているので、拝借します。

・ドライバーの高齢化と労働環境
・物流業界各社の過剰サービス
・積載率減少による効率悪化

物流業界の現状と課題 – AIは物流を救えるか? | SmartDrive Magazine

 

ヤマトの値上げが行われたのも記憶に新しいところですが、このような問題を抱えている業界が、どのように進もうとしているのかを読み解くのが本書です。

 

装置産業化していく物流業界

課題解決のポイントは2つ示されています。

1つには、属人的なノウハウです。人の介在を必要とするプロセスが減少するということは、今までノウハウとされてきたことが形式知化し、機械やシステムに置き換わっていくことを意味します。

 

ICTやロボットなど、いろんな領域で機械化・効率化が進められてきていますが、それでもまだ人への依存が多く残されています。そこで生じてしまう属人的なノウハウを、どう形式知化し、現場への実装に落とし込んでいくかが重要なポイントです。

物流倉庫内の動線など作業効率を分析するAIソリューションも登場してきています。

ニューラルポケット、三菱地所グループ初となる、物流施設内での作業効率・動線のAI可視化ソリューションの提供を開始|ニューラルポケット株式会社のプレスリリース

勘と経験に依存していた部分を、定量化しながら改善していく流れが生まれています。

逆に、Amazonはロボットを活用して、ロボットが棚自体を移動させてくれるので、人は移動せずにピッキングだけするという方法を、数年前から導入しています。

アマゾンの物流倉庫、商品を運ぶロボットを国内初導入:日経クロストレンド

それ以外にも、いろいろと属人的な作業はあることでしょう。AIやロボットを組み合わせて活用することで、そのような属人的な領域はどんどん減っていくと本書では書いています。

 

もう1つは、属社的な仕組みです。物流がインフラ的機能になるということは、特定の企業・個人が占有するのではなく、広く共用される存在に変わることを意味します。「経済合理性を優先するなら、自社ならではの物流にこだわるよりも、他社も利用している仕組みに適合した方がよい」という領域が増えていくはずです。

 

物流業界は、サプライチェーン全体の最適化という方向性が生まれています。内閣府が進めるスマート物流でも、「物流・商流データプラットフォームの開発」が取り上げられているなど、個社ごとの努力というよりは、業界横断的な取り組みが加速しているのがわかります。

スマート物流を実現するための3つの視点 | IoT NEWS

 

SIPの研究計画によると、日用消費財、ドラッグストア・コンビニ、医薬品、地域物流などフォーカスを絞ったプラットフォームを構築する想定のようです。

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)スマート物流サービス 研究開発計画

 

それ以外にも、トランコムが荷主と運送業者をマッチングするプラットフォームを構築するなど、新しいマッチングプラットフォームができています。

輸送マッチング・配送サービス | トランコム株式会社

 

こうやってみると、どんどん設備投資の割合が今後も大きくなっていき、人が直接作業する領域は徐々に減っていくのでしょう。そのスピードがどうなるかは技術進化などにもよるかもしれませんが、競争優位性として人を効率的にマネージする部分が減り、新しい技術を効果的に取り入れていく点が優位を構築するのだな、と思いました。

Sociery5.0やスマートシティなど、未来の都市を考察する本5冊

最近、いくつかまちづくり系の本を読んだので、まとめておきます。地方創生、スーパーシティなどの動きもありますし、改めて考えるきっかけになれば幸いです。

 

シン・ニホン

先日読んだシン・ニホンでも、開疎化など、新しいまちの在り方が考察されていました。安宅さんがそのような考えを持っていたことに少し驚きましたが、コロナウィルスの影響もあり、都市に集結して住むということは、これからの時代は再考の余地があると思います。

「シン・ニホン」を読んで日本の現状と未来を考える

 

 

リビングシフト

面白法人カヤックの、これからの住む場所の選び方が書かれた本です。COVID-19の影響もあり、人が集まる都市である必要がないのでは?という可能性も考えていましたが、この本を読んで、様々な人が流動的に住む場所を選ぶ可能性が示唆されていて、刺激を受けました。

関係人口という言葉もこの本で知りましたし、地域通貨にブロックチェーンを使った取り組みも、とても興味深かったです。

 

都市5.0

こちらは、まさにスマートシティ的な本です。都市の歴史的な変遷を捉えつつ、これからの街が、IoTやAIなどの新しいテクノロジーを活用しながら、どう進むのかが描かれています。

これからは個人の都市である、というのが印象に残りました。個人へのきめ細かい快適性を、テクノロジーが提供する将来です。

個人の都市というのを提唱した黒川紀章の偉大さも感じます。黒川紀章、すごい。

 

Society 5.0

日本発祥のSociety 5.0について、具体的に書かれた本。持続可能性と個人の快適さの両立というのがコンセプトとして示されていて、都市5.0と共通するなと思いました。

ここがまさに、これからのまちづくりの根幹となるコンセプトかなと。

 

人口減少社会のデザイン

人口減少していく地方都市は、これからのどういうまちづくりの設計をしていくべきか、を書いた本です。

死生観まで変わっていく、というのが個人的にはとても新鮮でした。でも確かに、たくさんの方が亡くなっていく中で、健康寿命やフレイルなどが注目されてきており、新しい価値観がもっと進む可能性もあると思いました。

 

ということで、いろいろなまちづくりの本を読みましたが、これからの人口減少社会で、テクノロジーの導入が進み、新しい社会が作られていく予感と必要性を多く感じました。地方に住む自分としては、東京以外でも心身豊かになれる世界が訪れる可能性を感じて、少し嬉しくなりました。