これからの時代にマーケターに求められる能力は?

MBAではマーケティングが必ず講義に含まれています。それだけ売る、という行為とマーケティングの関係は重要なものだということです。MBAに通って初めて、「マーケター」という職種があることを知りました。そういった職種に対してもう少し理解を深め、今後のマーケターというかマーケティングにはどういう要素が求められるのか、というところを考えてみたいと思います。

というわけで、「マーケターを笑うな!」を読みました。

 

マーケターがよく行うアプローチが書かれていたり、マーケターの「これまで」と「これから」が纏まって書かれていました。

 

マーケターの要素は経営と近づいている

まず企業側の目線で、変化しているポイントを挙げます。

マーケティング自体が、ICT技術の登場・進化によってチャネルが増えたり、広告効果が可視化されることで、より科学的に語られるようになっています。昔からマーケティングとは経営の中核に据えられるものである、ということは言われていましたが、社会が成熟し複雑化する中で、マーケットインのアプローチが重要視されてきており、マーケティングが経営と近づいています。

ただ、現実はまだマーケティングと経営の距離はあるようです。本書でもこう述べられています。

大切なことは、日本の多くの企業経営においては、まだ「マーケティング・コンセプト」が実行されていないということだ。そんなことはない、という反論もあるだろうが、では役員の誰が「マーケティング責任者」なのかというと、あいまいな企業が多い。

 

一方で、自治体であっても、マーケティング・コンセプトを明確にすることから始まり、施策を統一的に実行することで、新しい方向を打ち出せるようになるわけです。流山市は、まさにそういう良い事例だと思います。

30代人口急増! 流山市、”異端”の街づくり (東洋経済オンライン) – Yahoo!ニュース

 

情報の非対称性は解消されつつある

次は、顧客側の変化です。こちらもICTの進展によって、かつては存在していた販売と顧客の情報の非対称性は小さくなっています。そして、モノが溢れてきている中で、価格競争が激しくなっています。本書では、価格競争が完全な悪ではないですが、あまり良くないものであると述べています。

たしかに価格戦術には一時的な効果があるので中毒化しやすい。しかし、長い目で見ると企業を蝕んでいく。

人々の生活が多様化する中で、求められるのは「インサイト」であり、それは昔から変わらないものだと言われています。買う人たちの生活パターンを洞察し、「買う理由」を明確に打ち出していく。そういう行為がこれからも必要になります。

また、情報の非対称性が小さくなったことで、小手先の売り方は通用しなくなりつつある、と思われます。純粋に、買い手にとって役に立つものを売る、という長期的に信用を得ていく売り方が求められるのでしょう。

 

というわけで、マーケターはこれまで以上に社会に必要な存在になるんだと思います。ただ、それが活かされる形や場所は、少しずつ変化しているので、それに合わせて対応していく必要があるでしょう。

 

関連書籍

 

神様コトラーによるこれからのマーケティングに関する解説。企業は長期的思考を重視するようになる、と主張しています。

過去の書評:マーケティング3.0 | Synapse Diary

人を動かす、新たな3原則

ダニエル・ピンクの新作です。あんまり評判になってない気がしますが、面白そうだったので読みました。ざっくりいえば、セールスパーソンに求められている技術は変わってきており、そしてその技術は「営業」と呼ばれる人以外にも広く求められるようになっている、という感じです。

 

 

セールスに求められるスキルは変化している

相変わらずダニエル・ピンクが面白い理由は、一見世の中が当然と思っていることについて、変化の兆候を見つけることにあると思います。

今回の場合、セールスマンが必要なスキルは、情報の非対称性の解消によって変化してきている、という点です。情報化社会によって消費者が持つ情報が膨大に増えました。その結果、顧客への対応の仕方、そのスキルは変わってきているのです。

ちなみに、本の中ではいくつか自分をアセスメントするサイトが紹介されていますが、ひとつやってみました。

ASSESSMENT | Daniel H. Pink

自分が内向的か外向的かがわかるそうです。そして、これからの営業マンにはその両方(両向)が必要だそうで、これは世の中の多くの人が両向的なんだそうです。僕もやってみたらそうでした。

 

柔軟なスキルが求められる時代に重要なのは「人を動かすこと」

営業職以外にも同様のスキルが求められるようになっています。それは、流動的な社会の中で、固定的な仕事というのがなくなっているからだ、と言います。

そのような状況では、「人を動かす」ことがスキルとして活きてくる、というわけです。ダニエル・ピンクは本の中でこう述べています。

一般的に、経済行為におけるもっとも重要な活動は生産と消費の二つだとみなされる。しかし、現代人の活動の大部分には”人を動かす”ことも含まれるように思える。つまり、お互いが望むものを手に入れるため、現金のように有形であれ、尽力や注目のように無形であれ、リソースを手放すよう相手に働きかけるということだ。

そして、この表現が好きですね。なるほどと思いました。

フラットな組織と無秩序な経済状況の世界、それが現在のわれわれの世界だ。そこでは、固定化したスキルは非難され、弾力性のあるスキルが重んじられる。各人が現場で日々行う仕事は、職務の境界を超えて伸張していかなくてはならない。

 

自分の仕事に関係ある話としては、問題を解決するより発見する方が重要な能力になっている、という指摘でした。確かに、ビッグデータでも問題を発見することが難しく、発見してから解決する方法よりも重視されています。

 

関連書籍

これからの組織におけるモチベーション管理について、うまく整理された一冊。読んだときは衝撃だった。

過去の書評:人を活かす方法を理解する-【書評】モチベーション3.0 | Synapse Diary

Suicaデータの外部提供にみる情報化社会とコンプライアンスの問題

JR東日本が、日立製作所にSuicaの利用情報を提供していたとして、IT界隈では少し話題になっています。どういう点が問題かというと、「利用者の情報を勝手に第三者に提供するのはいかがなものか」ということです。プライバシー的な観点ですね。

ニュース – Suica乗降履歴データの外部提供で問われるプライバシー問題—JR東日本に聞く:ITpro

Business Media 誠:ビッグデータとプライバシー:Suica利用履歴販売、JR東は「個人情報に当たらない」との見解 (1/2)

さて、事実関係からすると、JR東日本は日立製作所と共同研究などをこれまでも進めており、Suicaの利用履歴の分析技術に関するレポートを日立製作所が作成、販売することになった、というものです。そのレポート作成のために、Suicaの利用履歴を個人情報が特定できないようにマスキング・加工した上で日立製作所に提供した、ということのようです。

 

こういうパーソナルデータというのは、経済的価値が高まっているので、積極的に利用できるようにしよう、という流れが生まれています。そのためにもプライバシーを確保した状態のデータの利用を整理しようと、総務省が検討を進めているわけです。

総務省|「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」報告書の公表

今回のJR東日本としては、マスキング等の加工を行っているので個人情報には該当しない、というのがスタンスです。なので、ユーザー等に許可を得なくても問題ない、という整理になっています。確かに法的には問題ないとは思うのですが、このあたりはまさに法的な整備が間に合っていないところです。

今回のSuicaの情報提供の行い方を見ると、IDに相当する情報は残っているので、「頑張れば個人を識別できる状態のデータ」である可能性があります。こういう情報を流通させることは、プライバシーなどを侵害するリスクがあるということです。

 

また、心理的な抵抗感もあるでしょう。社会的にこういうデータ活用に馴染みがない、というところもあるかもしれませんし、「自分が関わったデータが商売道具にされている」という点に抵抗を覚える人もいるでしょうし、「何となく自分の情報が漏洩しそうで怖い」という点に気持ち悪さを感じる人もいるでしょう。

法的に云々というところ以上に、こういう心理的な部分をどう解消していくかも、現在のコンプライアンスの重要課題になっています。なんというか、ビッグデータとかオープンデータという言葉がバズワードになるぐらい、情報資産の重要性は年々増していると思いますし、法整備もリアルタイムに行われるわけではないので、企業側も個人側もある程度リテラシーを身につけて、情報をコントロールしていかないといけない時代だと感じています。

商品を売るには「評価軸」を提案した方が良いと思う

最近の生茶のCMを見て、ふと思った。

これ、何を伝えたいメッセージなんだろう。自分の感覚を信じろ、ということか。

このCMを見て、「綾鷹」のCMやマーケティング戦略が優れているな、と思ったことを思い出した。

データが正しいとか、そういうことが重要なのではなくて、「急須に入れたものに近い」という印象を与えることが重要なわけ。「おいしい」という抽象的な尺度ではなくて、「急須に入れたもの」という評価軸を持ちだした点がうまいと思う。

個人的には、生茶のような打ち出し方より、綾鷹のように評価軸を提供する方がマーケティング戦略的には勝ちな気がするな。だって、人って結局何で商品を買うのか、わかっているようでわかっていないから。特にこういう商品に関しては。

この記事で、綾鷹がどういうマーケティング戦略にしたのかがわかる。
Business Media 誠:仕事をしたら“緑茶”が売れた:なぜ「綾鷹」が売れているのか? ヒットの秘密を探る (1/5)

どの商品がどの程度売れているのか、データがわからなかったのが残念。

 

それにしても、お茶の市場って激戦区だよね。おーいお茶、生茶、伊右衛門と続き、いろんなお茶が市場に投入されている。個人的には、お茶じゃなくて水の方が安くて好みです。

ああ、相手に上手に伝えるにはこういう方法があるのか

人への伝え方だけで、自分が期待する以上の結果を受け取ることもできるし、自分が思った以上の損をすることもある。

コンサル会社に勤めてから、同じ事実を説明するにしても表現の仕方によってポジティブに捉えることもできれば、ネガティブに捉えることもできることを知った。説明する順番や言葉の選び方によって、相手の受け止め方も大きく異なる。だから、説明するときはいかに相手が受け入れられやすい内容になっているかを考えるようになった。

そして、この本はそういう「同じ事実をいかに上手に伝えるか」に重点を置かれた、言葉の選び方が書かれている。単なる事例集ではなく、「サプライズ法」「ギャップ法」「赤裸裸法」「リピート法」「クライマックス法」として体系づけられている点が目新しい。

コンサルという業種は、基本的には調査・分析を行い、顧客に伝える。最終的に実行するのは顧客なので、そこに「納得感」が生まれないと、物事は進まないし、コンサルタントの存在はないに等しい。そういう意味では、相手の考えていることや望んでいることを考えた上で、伝え方を組み立てる必要がある。だから、ロジックやファクトなども重要になるが、それと同じくらい伝え方・ストーリーが重要になってくるのだ。

昔、上司に「できるだけ飛距離の遠いメッセージをつくれ」と言われたことがある。それは、直接の相手だけでなく、相手の奥にいるはずの上司や関連部署を指している。それぐらい、メッセージの作り方を意識することで、また内容も変わってくるし、そういう強いメッセージが相手の組織を動かしていくんだと教えてくれた。そのためには、感動など心を動かせるようにならないといけない。

私は政治について、知見があるわけではありません。ですがコトバの専門家として、日本の政治に圧倒的に足りないのは、「政策」ではなく「感動」だと思っています。人は規則では、動きません。人を動かすのは「感動」です。

これは正しい。政治もそうだけど、それ以外の仕事でも同じだ。いろいろ仕事してきても、感情という面を無視することは難しい。それどころか、感情の方が問題解決に向けた大きな要因になっている場合も多い。そういうときこそ、「伝え方」の出番なのだ。

 

伝え方によって、人生は少しずつ変わり、最終的には大きな違いが生まれてくる。この本を読んで「伝え方」を学ぼう。

広報担当者はUstream、ニコ動、YouTubeの収益モデルの違いを知っておこう

Broadmark / Pixabay

先日Ustreamのダウンロードツールについてメモ書き程度に残しておいたけど、個人的にはUstreamの話題を目にする機会が減っているせいで、「最近流行っているのか?」と思っていた。しかし、TechCrunchの記事によると順調に成長しているようだ。

広報ツールとして動画サービスが利用される機会もどんどん増えているが、それぞれどういう収益モデルで動いているのか。そして、そこからサービスが今後どう展開されるかを広報担当者は把握しておく必要があるんじゃないだろうか。

 

Ustreamは配信サービス提供で配信者から収益を得る

以前は広告、有料コンテンツ課金がメインだったが、最近は配信サービスをSaaSとして提供して利用料を取るモデルに変化しているんだそうだ。企業のイベント配信なんかにニーズがありそうだ。

ユーザ数1500万、月間視聴者数8000万。
Ustreamが6%の人員削減+2名のVP増で有料サービスProシリーズへの注力を強化 | TechCrunch Japan

過去の動画を見るのは目的としては低く、やはりメインはリアルタイムストリーミング。検索されるのは弱いので、自分でプロモーションする必要性がとても高い。

 

niconicoは良質なコンテンツでユーザーから収益を得る

ニコ動はコンテンツを軸にした有料会員で収益が伸びている。広告収入もあるが、プレミタム会員の売上が半分以上を占めている。良質なコンテンツを生み出すための様々な取組を行っていて、平均的な視聴時間が長いのが特徴。

1日平均PV数は約10000PV。1日平均訪問者数は約800万人。1訪問の平均滞在時間104分。
ニコニコ動画の収益がどうなってるかについてまとめたお – NAVER まとめ
ニコニコ動画とは (ニコニコドウガとは) [単語記事] – ニコニコ大百科

ユーザーの囲い込みが大きく、コンテンツ重視であるから、提供するコンテンツがニコ動のカルチャーに合致していることが重要な気がする。逆に、有料会員は金を払ってでもニコ動を見るので、コンテンツ勝負であれば良いんじゃないか。

 

YouTubeは圧倒的アクセス数によって収益を得る

YouTubeは広告メイン。これは、圧倒的なPV数によって成立している。しかも、Googleなので検索やリコメンドによって動画にたどり着きやすいサービス設計にもなっているので、短いコンテンツを次々見ていく感じになっている。

2009年と少し古い数字だけど、1日平均PV数は40億PV。
提案などに使える!動画配信サービスの数字感まとめ ~Ust・ニコ動・YouTube~ | ACTZERO – 株式会社アクトゼロ

最近だと、月間ユニークユーザーが10億人突破。
YouTubeの月間ユニークユーザー数が10億人を突破 – ITmedia ニュース

圧倒的にアクセス数が多いのはYouTube。一本当たりの動画の時間が短いのが特徴だけど、回遊率や類似動画のリコメンドなどのアクセスアップが充実。

 

いろいろサービスによって収益モデルが違うのは面白い。企業によって注力している方向性が違うというか、どこから収益を出そうとするかの発想が、全く違うわけです。なので、動画サービスと一言で言っても、広報したい内容やどういうユーザーをターゲットにするかによって、これらをどう組み合わせて利用していくかも変わってくる。

 

「売れない時代」の新・集客戦略

この本では、サービス業における販売マーケティングに関して大きく3つのフェーズに分けており、マスマーケティングを中心とした新規顧客獲得、CRMなどダイレクトマーケティングを中心としたリピート顧客獲得、そして顧客が減少する状況の中でどうやって経営していくのか、というテーマで書かれており、これまでのリピート顧客重視から発送を変える必要があることをうたっている。

具体的には、顧客のモチベーションを捉え、それに応じたサービス提供を行っていくことと、サービス業の問題である「業務量の平準化」を行うことで、売上が減ったとしてもコストを低下させ、利益を創出していくことを目指している。

 

リピート顧客の獲得は、理論的には正しいが実践するのは難しい

確かに、リピート顧客を獲得して新規獲得コストを下げ、利益率を向上させていくことは理論的に正しいのだけれど、実際にやろうとすると2つの問題がある。 ひとつは、顧客情報を取得するのが大変、ということ。小売りだとふらっと店に入って来た人の情報は捕捉することはできないし、取得しようと思うとポイントカード発行して割引する代わりに取得する、というのは今の大手企業がやっていること。

もうひとつは、必ずしも顧客が段階的に満足し、リピート客になるわけではない、ということ。それは、個人の事情によってサービスを利用する目的は異なるので、顧客の動機次第で変わる。

 

では、どうやって売っていけば良いのかといえば、「顧客の目的を明確化して、それに合致したサービスを提供する」という、ある意味マーケティング論でいうところの至極まっとうな回答になる。

 

事業を「サービス化」する

商品を売るのだとしても、商品そのものの価値は下がり続けている。なので、中小企業がこれで勝負しようとすると勝つのが難しい。なので、商品の周辺にある「不満」を解消するようなサービスを提供することで、高付加価値化を行うことが、「サービス化」のヒントになる。

本書の中で出てくるし、それなりに有名な「でんかのヤマグチ」もそう。家電量販店に押された地域の電気屋さんだけど、価格競争は行わずに、ターゲットを地元の優良顧客に絞り直して、配送から電球1個の交換まで行うようにした。これで付加価値分高い価格を維持できるので、顧客数は減ったものの、利益率は向上した。こうして、商品の周辺にあるニーズを掘り起こして、商品に付随する形で「サービス化」している。

どんな業態であっても、商品そのものだけで勝負していると、価格勝負で負けてしまう。その周辺にあるニーズをどうサービスとして取り込んでいくかが重要だ。

そういう意味では、家電量販店がAmazonなどのネットに押されてしまっているのも、ほとんど価格勝負になっているからだろう。感情面で「実店舗をショーケース代わりにしやがって」とかあるかもしれないけど、顧客側からすると「そういう事情じゃなくて、同じ商品でサービスも変わらなければ、安い方から買うよね」ということだからなあ。

 

サービス化した後に必要なのは平準化

サービスというのは、要は商品在庫のようにストックできないので、供給コントロールが難しい。そこで必要になるのが平準化だ。言葉で言うのは簡単だけど、とりあえずアプローチとしては需要側をコントロールする。平日半額とか夜間割引とか、そういう価格調整によって顧客の流れをコントロールする必要がある。

 

そして、この本では顧客のモチベーションに注目して、目的を多様化することで顧客ニーズを分散させる考えを示している。正直、実例の部分ではインパクトに欠ける印象だが、考えとしては賛同する。

 

この本に書かれていることが、今後の集客戦略のスタンダードになるのかはさておき、リピート顧客を狙えっていう端的なメッセージから脱却する上では、重要なひとつの観点を提示していると思う。特に、顧客管理を十分にする余力がない中小企業には有益だろうと思う。

ローマ法王に米を食べさせた男

なんというか、これはすごい勢いの本だな。面白くて一気読みした。 石川県羽咋市の市役所職員の話なんだけど、スピード感、スケールが想像以上で爽快だった。

人口減少と高齢化が進み、限界集落も出始めている地域で、地域活性化を行うためにいろんな施策を打っていく。そのアグレッシブさ、アイデアの豊富さにまず驚く。そして、それが実を結び、地域が変わっていく様子は素晴らしいの一言だ。

 

論理的に考えて、感性で動く

なんでもそうですが、何かをやろうとする時は、情報収集が非常に大事になってきます。よく調べないと何も出来ないのは、テレビの構成作家時代に身にしみて覚えたことです。それで全国の2万人から5万人までの市町村で、町おこしに成功したところと失敗したところを114ヵ所調べました。

こんな感じで、下調べを入念に行うスタンスがある一方で、

私たちに何が足りないのか? 行動する力がまったくないんです。知識や情報を持っていても行動理念がない。手をこまぬいて何もしなければ、村は「自然消滅」します。過疎高齢化すると百年間嘆き続けても、会議ばかり何度も開いても、多額のコンサルタント費用を払い、きれいに印刷した計画書を千冊積み上げても、村は何一つ変化しないんです。

行動の重要性を挙げる。要は両方必要だってことです。当たり前なんだけど。

 

マーケティング能力

商品を発掘して、どうやって売るかという、いわゆる「売る仕組み」を作るのが素晴らしい。

内輪の人間でなくてよそ者に語ってもらうことで、初めて気がつくんですよ。組織でもそうです。だから外からものを見る見方、外からの援護射撃を取り入れていったんですよね。

っていって、大学の教授や東京のメディアを引っ張りだしたり、意図的に地元メディアには情報を流さなかったり、海外のメディアにアプローチしたり。

誰にどうやって見せるか、ということをすごい考えているんだろうな、という事例が山ほど出てくる。良い商品を作ることも重要だけど、その見せ方、売り方を工夫して創造することで、状況が変わるのもまた真実。

 

本質を考える

何か行動や結果に結びつけていくためには、物事の本質を捉えておく必要がある。そうでないと、何を目標にして、どうアプローチするかは全然変わってしまうからだ。そういう点では、例えば「村」とはどういう仕組みで動いているか、「地域活性化」とは何を目的にするのか、など本質的な部分を捉え、思考した内容が書かれているのはとても面白い。

例えば、青年団活動は、このように考えている。

人間には3種類いると言われているんですね。いてはいけない人、いてもいなくてもいい人、いなくてはならない人。それを考えた時に、青年団活動をしている4つのグループは、羽咋という1軒の家にとってなくてはならない存在なのか問いただしてみたんです。町の人たちから、おまえたちはなくてはならないんだと言われているだろうか。あるいは、そういった認識を持たれているだろうか…

こういう視点で考えたときに、どこまで有意義か、あるいは有意義になるかを考えることにつながっていくわけで。

 

最後に。やる気になる一言を貼っておしまい。

そこから始まった信条・モットーが、前にも書いた、 「可能性の無視は、最大の悪策である」  です。とにかく1%でも可能性があるなら、徹底的にやってみようよ。最大の悪策は、やりもしないうちから、絶対出来ないと思いこむことなんです。人間というのは、非常に狭い経験と知識で物事を判断してしまう。長く生きていても経験が狭い人もいるんです。むちゃくちゃ若くても、ものすごく豊富な経験をしている人もいます。1%でも可能性があるのなら、とにかく突き進んでその1%にかけてみようという考え方です。

たくさんエネルギーをもらいました。

企業とSNSの付き合い方を考える「素人の顧客の意見を聞くな」

More Access, More Fun!」というブログの書籍化。移り変わりが早いITマーケティング系のトピックがほとんどなので、情報が新鮮なうちにどうぞ。格安の値段ですし。

 

たくさん面白いことが書いてあるんだけど、僕はこの本を、自社のサイトやブログ、Facebookページなどを運営している人達にぜひ読んでほしい。変なIT系の業者に騙されないために。

この本で書いてある通り、無料のブログではなく、自社ドメインで運営することが望ましい。僕はこのブログを年間数千円で運営しているけど、必要なお金はレンタルサーバ代とドメイン料だけで、あとは自分の労働力だけだ。

また、変なSNSの勧誘にも騙されてはいけない。Facebookページで顧客が増える、とか。IT系のサービスがどんどん登場しては変化し、衰退していくため追いつくのが難しいかもしれないが、本質的には、ユーザーがどういう目的でFacebookやTwitterなどのSNSを利用していて、動線やコンテンツが自社と合致しているか、という点を考える必要がある。それを考えれば、Facebookページがマネタイズに向かないことがわかるだろう。

 

あと、後半のあたりでは教育や就職活動について書かれていて、それはそれで面白かった。ぜひ就職活動している学生も読んだ方がいいと思うけど、情報弱者となっている人たちはそこまで辿りつけないかもなあと思うと、複雑な心境。企業に対するこういう見方も、現代ならではだと思う。

きちんとソーシャルが運用できている会社は、風通しが良く、現場に決裁権がある企業だ。そんな企業はこれからも伸びるし将来性もある。しかし停滞期にはいったり、リストラでモラルがめちゃ下がってる企業ではFacebookページを見ても投げやりですぐわかる。

 

それにしても、ブログをこうやってパッケージ化することで、読みやすくなるから不思議。やはり電子書籍にはこういう使われ方はひとつの方向性だと思う。ただ、マネタイズが難しいけど。ブログを編集した情報にはあまり高額は支払わないよな。。。。

ビール15年戦争

アサヒのスーパードライは、とても売れているし、宣伝も大々的に行われているので知らない人は少ないだろう。この本は、アサヒのスーパードライが発売されてから勃発したと言われる「ドライ戦争」あるいは「ビール戦争」を描いたものだ。

スーパードライの発売当時、アサヒはシェアが低落しており、キリンが独禁法に抵触しそうなぐらい一人勝ちだったが、スーパードライをきっかけに売上げが増加し、ついにはキリンを追い越す。

 

このビール戦争は、マーケティングの題材としてはうってつけだ。日本人の食生活の変化によるビール嗜好の変化、ドライビール・発泡酒という新しい市場の開拓、既存製品のカニバリゼーション、これまでの製品ブランドへのこだわりによる戦略ミス、冷蔵庫の普及による個人消費の増加、酒屋から量販店への販売チャネルの変化。マーケティング戦略で考えなければいけない材料が、このストーリーにはあらゆるところに含まれている。

大きな企業であってもマーケティングで失敗することもある。それは、王者であったキリンでも、キリンを追い越したアサヒでも。そういう戦いがあるから、ビジネスは面白い。そして、こういう事例から、新しいことを学んでいくのだ。

 

以前、キリンを始めとするビール会社4社のことを書いたが、そのときは震災などの影響で売上が低迷している、という話だった。しかし、もっと大きな目線でみると国内市場はもう飽和状態に近く、中国など世界市場に目を向けている。それは、サントリーが上海の進出に苦労しながらも、徐々に事業基盤を構築して今では圧倒的なシェアを築いていることからもわかる。

 

今でもチューハイ、ハイボール、ノンアルコールなど、酒類の進化は続いている。激しいマーケティング戦争は続いていくだろう。