ディズニー魔法の会計

ディズニーの事業構造への理解が深まることを期待して読みました。面白かったですが、ディズニーへの理解以上に、財務を中心にした企業の見方として、非常に参考になりました。

本書はストーリー形式で、コンサルタントがフェルミ推定を駆使して、顧客数、原価、借入金などを推測していきます。そのアプローチは、損益計算書、貸借対照表など財務諸表の基本にも沿っていて、端的に企業の全体像をつかむのにとても適しています。

企業コンサルをする方は、すぐ読めるので一度読むと良いでしょう。ただし、一通り財務諸表の項目は理解している必要はあると思います。

 

関連書籍

フェルミ推定なども含めて、コンサルタントが企業の実態を考えていくのは、本書と共通するところ。

過去の書評:IGPI流経営分析のリアル・ノウハウ | Synapse Diary

バフェットの投資哲学で企業価値の計算方法を学んだら、株投資したくなった

MBAでファイナンス理論を学習しました。正直あまり株式投資などもやったことがなかったので、個人的にはとても新鮮な内容でした。ファイナンス理論の応用として取り上げられたのが、バフェットの投資哲学でした。

バフェットに関する投資哲学というのは、いろいろ本も出されていますし、特徴はあるのですが、個人的には「一貫性を重視する」ということに尽きると思います。

株式市場というのは、「臆病者のための株入門」に書いてある通り、先が読めないギャンブルのようなものであり、予測が難しくなっています。それを人はいろんな指標やテクニックを使って予測しようと思うわけですが、バフェットは企業の特徴から「予測しやすいかどうか」を念頭に入れています。予測しやすければ、後は予測した株価と現在の株価の割合から投資有無を決めれば良いのですから。

「消費者独占企業」とか「キャッシュフローが潤沢」とかいろんなキーワードが登場しますが、これも一貫性があり、予測しやすいかを検証するための項目だと考えればわかりやすいです。

 

これらの本は、具体的に将来の株価を計算したり、財務諸表をどう読みかが書かれていて、非常に実用的です。実際にExcelなどで数字を動かしてみましたが、企業に対する見方もいろいろ変わると思います。

 

株式市場は、アベノミクスで盛り上がっています。これは、東証一部の売買高・売買代金を見ても明らかです。投資を有意義に楽しみましょう。

tosho_mini
(東証 : 売買高・売買代金より)

臆病者のための株入門

貧乏はお金持ち」が結構良い感じだったので、同じ作者の本書を購入。Kindleで読めた、というのも大きい購買要因。

 

ちょうど今、MBAでファイナンスの勉強をしており、ファイナンスは財務諸表、市場から資金調達の考え方などを学ぶのだけれど、合わせて企業価値をどう評価するのか、という考え方も学ぶわけです。そうなると、株価と企業価値の関係にもつながるので、株式投資にも興味がわいてくるってものです。

本書の結論は「インデックスファンドに投資しろ」なのですが、その結論にたどり着くまでの説明には、いろんなエピソードや市場等に対する考え方が滔々と語られており、楽しみながら読めます。ファイナンスの知識が少しあると、面白く読めると思います。

 

個人的にはバフェット式の長期投資に魅力を感じます。インデックスファンドへの投資も良いとは思いますし、理論上効率的な勝ち方だとは思いますけど。なぜなら、最近ファイナンスの勉強のためにバフェットの本を2冊読んだので。

起業や独立を考えるなら「貧乏はお金持ち」を読もう

全くタイムリーではないですが、読みました。メインテーマは「独立することで税金が最適化される」ということで、サラリーマンと個人事業主(本の中でいうマイクロ法人)との法制度や税金の違いを示すことですが、それ以外にも重要な示唆がたくさん含まれていて、読み物としても面白かったです。

 

企業の成り立ちから紐解く企業論、企業の利益と税法上の益金との違いを整理した財務会計、企業価値を計算するファイナンスなど、企業にまつわるいろんなことがこの一冊で理解することができます。

 

サラリーマンは重要な部分を企業に委託してしまっている

本のメインテーマであるマイクロ法人という提案は、サラリーマンと個人事業主で何が違い、その結果、主に金銭面でどういう違いをもたらすか、という視点から行われています。

とはいえ、サラリーマンとそれ以外の企業家にはひとつの決定的なちがいがある。それは、サラリーマンが企業活動(お金を稼ぐ経済活動)の主要部分を会社に委託(アウトソース)してしまっていることだ。これは具体的には、会計・税務・ファイナンスである。

これは、税務処理などがない点で非常に面倒くさくなくて良いのですが、お金に直結している部分です。これを企業の枠組みに入ることで委託してブラックボックス化しているわけです。

ただ、少し勉強してみればわかりますが、会計と税金にまつわる仕組みは結構複雑です。その紐解き方によって税金の多寡も変わってくる、というのを本書では示しています。

 

詐欺はなぜなくならないか

本書の主旨とは少しずれますが、個人的に非常に面白かったのは、詐欺はなぜなくならないのか、ということでした。最近、安愚楽牧場が話題になっていますが、知ってみれば「こんなことに騙される奴も悪い」みたいな感じになってしまいます。しかし、ずっと昔からある詐欺のような悪徳商法は、なぜなくならないんでしょうか。その答えはこれです。

株式会社は、なにもないところから儲け話だけで資金を集める仕組みだ。その儲け話に実態があればビジネスで、実態がなければ詐欺になるが、おうおうにして両者の区別は不可能だ。

つまり、事業が始まる前に資金を集める、という意味では両方とも同じで、中身がない状態で見極めなければいけないからです。ベンチャーなどの企業でも事業計画一枚で資金を集めます。ビジネスと詐欺の境界線は、非常に曖昧な気がします。

IT業界でもある程度経験を積むと、フリーランスとして企業と業務委託契約になる人もちらほらいますが、そうなるとまさにマイクロ法人としての恩恵とリスクを引き受けている、ということがわかりました。起業や独立を考えている人はまず読むべきですし、そうでなくても企業・税制の実態を理解する上では非常に良書です。

貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する

セイコーエプソンからみるインクジェットプリンター市場

最近、写真のネットプリントがあまりにも安いことを知って驚いた。そして、そこから家庭用のインクジェットプリンターってもう厳しいんじゃないかと思うようになったので、代表的な企業であるセイコーエプソンを調べてみた。

 

国内インクジェットプリンター市場のシェア

日経シェアによると、国内のインクジェットプリンター市場はキヤノンとセイコーエプソンで9割程度をシェアを占められている。キヤノンとセイコーエプソンはそれぞれほぼ半分を分けあっているが、近年はキヤノンが1位。

また、海外市場でみると、HPが圧倒的1位で、キヤノンとセイコーエプソンは2位・3位と続く。この市場はもうプレイヤーが少なく、ほぼ寡占状態であることがわかる。

 

セイコーエプソンの財務状況

セイコーエプソンの過去4年分の財務諸表は以下の通り。

 

流動比率は高いし、セイコーエプソンは利益剰余金も多めに確保されているので、財務の安全性という意味ではすぐに危険な感じはしない。ただ、この4年間で売上は20%程度下がっているというのが、収益性の面で苦しさを感じる。売上高営業利益率も元々高いわけではないので、売上高が下がるとジリ貧になる。

 

株価をみても、セイコーエプソンはここ10年で4分の1ぐらいになってる。市場の評価は厳しい。
セイコーエプソン(株)【6724】:株式/株価 – Yahoo!ファイナンス

 

新しい競合の登場

完全に成熟化してしまっている様相である一方で、消耗品で設けるビジネスも、安いネットプリントの台頭や代替品サプライヤーの登場によって、厳しくなっているのではないかと思われる。

 

例えばネットの写真プリント料金を価格.comで調べると、L判50枚で87円なんてのもある。1枚1.7円・・・・送料も無料。

価格.com – デジカメプリント・ネットプリント比較|写真・年賀状印刷
[scshot url=”http://kakaku.com/camera/dpe/”]

 

一方で、インクジェットプリンターの写真用紙の価格を調べてみる。

写真用紙だけで考えると、定価ではほとんどネットプリントと均衡しつつある。実売ではやや家庭用の方が安い。ただ、インクジェットも結構な値段がするので、あまり勝負できなくなっているのが現状だと思う。

 

国内市場は成熟化している

インクジェットプリンターが普及したのは、写真や文書の印刷が、これまで業者に頼むより安く、自宅で便利に、それなりの品質で印刷できたからだ。しかし、インターネットやスマートフォンの普及で、自宅からネットを介して印刷を頼むことも簡単になっているし、やはり業者の方が品質も高い。

そろそろこの分野に関しても新しいビジネスモデルの登場が期待されてるんじゃないかと思う。家庭用プリンターが普及したのは、自分の家で自由に情報をそれなりの品質で印刷できるからだったと思うが、製品自体がコモディティ化して付加価値が減退していることと、マネタイズの源泉だった消耗品の分野に競合が登場して利益を創出することが難しくなっているんじゃないか。

例えば、PCのデータ量が膨大になっていることから考えると、セキュアなオンラインストレージサービスを合わせて提供するとか。プリンターを売って、消耗品で儲けるというビジネスモデル自体が限界なのかもしれない。最近だとスマートフォンで写真よく撮るし、Instagramみたいな四角い形やエフェクトも流行っているから、改めて印刷する楽しさみたいな、新しいニーズはある気がするんだけど。

 

上に書いてあるようなことは、エプソンの有価証券報告書の事業リスクにもちろん書いてある。ただ、エプソンが発表している長期ビジョン「SE15」をみると、新しいビジネスモデルの開発には行かなさそうだなあ。

長期ビジョン「SE15」 | エプソンについて|エプソン
[scshot url=”http://www.epson.jp/company/se15.htm”]

 

それよりも、好調な中国や東南アジア市場にシフトしていくんだろうか。

ネット証券市場の今とこれから

一時はすごい勢いで成長していたネット証券だが、最近の状況を調べるために松井証券の財務諸表を確認した。

株式市場は冷え込んでいる

松井証券の営業収益と営業利益率は、以下の通り。

見ての通り、売上高は全体として下落傾向にある。株式市場全体が落ち込んでいるので、無理もないのかもしれない。

 

東証一部の売買高・売買代金を見ると、売買高は2005年当たりからあまり変わっていないけれど、売買代金は2007年をピークに大きく下落している。

 
(東証 : 売買高・売買代金を元に作成)

 

ネット証券市場はトップ2とそれ以外

日経シェア調査195によると、ネット証券業界は株式相場の低迷によって市場規模全体が縮小。手数料の引き下げ勝負も限界を迎えており、別の差別化を図っている。3位以下は混戦。

オンライン証券業界のシェアはこのとおり。


日経シェア調査195を元に作成)

これをみると、SBI証券と楽天証券がトップ2で、それ以外は混戦の様子。SBIや楽天など総合的なサービス展開を行っている企業がシェアを築いており、ネット証券専業の企業は、体力勝負で苦戦しているようにみえる。

 

ネット証券の財務構造

松井証券の財務構造は以下の通りとなっている。資産を多く抱えているわりには売上高は小さい。

 

SBIと楽天はホールディングスになっているので財務諸表が取得できないが、マネックス証券は取得できたので掲載しておこう。

 

まあ、両方とも同じ業態なので財務構造はほとんど一緒。ちょっとわかりづらいのだけれど、松井証券の特徴は、固定資産が圧倒的に少ないことと、利益剰余金が大きいこと。営業利益率もマネックスに比べると高い。

マネックス証券の最近の業績を見ていると面白くて、2011年度で売上高が伸びると同時に、利益率が低下している。

 

ここからは推測になるが、マネックス証券は最近アジアや米国などの証券会社を買収しており、それによる資産増加が影響しているのではないかと思っている。
マネックスが買収するTradeStation(トレードステーション)とは? – Market Hack

 

日本市場は既に飽和状態で寡占化が進んでおり、金融の自由化・グローバル化によって、強固な事業基盤を築く必要が迫られている。一方で松井証券は、調べてみた限りは買収などの規模拡大は行われていない。

この業界は、今後どのような未来が訪れるのだろうか。

任天堂の売上高が4年で3分の1になっていてびっくりした

GREEとDeNAの業績を見たので、ついでに任天堂もみようと思ったら、結構な売上の下がり具合でびっくりした。

最近の任天堂はWiiのヒットも懐かしく、結構調子悪いようなことは聞いていただけど、ここまで落ち込んでいるとは。2011年度は赤字になっている。2008年には2兆円突破という絶好調っぷりだったのに。ただ、それまでの売上が5,000億円ぐらいだったので元に戻ったという考え方もあるけど。

任天堂 売上高2兆円突破を記念し、数字を色々集めてみました – 中小企業診断士 和田伸午のおもしろビジネス放談

ゲーム業界のトレンドは?

ゲーム業界のトレンドは、オンラインとモバイルに移行しているわけで、ゲーム専用機をプラットフォームとするメーカーは、このトレンドに乗り遅れて、数字に表れているという感じ。つまり、既存のゲーム機を主体としてプラットフォームを作るアプローチは、時代遅れになってしまった感がある。

誰もが持つモバイルやPCに移行した、という見方が優勢なのだろうと思う。それは、ZyngaやGREE、DeNAがすごい勢いで台頭していることからも推測できる。

かつての任天堂はなぜ強かったのか?

任天堂は、MBAのケーススタディで取り扱った。ファミコン時代の任天堂はまさに無双状態。戦略フレームワークで分析しても、抜け目なさすぎる。ファミコンというハードウェアを廉価で発売し、そこで魅力的なコンテンツを自作しつつ、ゲーム開発会社を自社に有利な条件で巻き込んでいく。さらには、年間の発売ゲーム本数も抑制することで、品質を重視するとともに市場の需要すらもコントロールする。

同じようなプラットフォーム戦略は、AppleやGREE、DeNAに引き継がれている。さらに任天堂は、DSやWiiによってゲーム市場を拡大させる。勉強や健康など日常生活の要素を取り込むことで、ライトユーザにまで幅を広げた。

ちなみに、任天堂には「枯れた技術の水平思考」という言葉がある。これは安定した技術を活用することで、廉価にビジネスを展開することを目指している。逆にいえば、先端の技術を取り込んで勝負する企業ではないんだよね。ゲーム機でもあまりグラフィックなどのスペックでは勝負せず、ユーザ体験に重視している。

任天堂、横井軍平氏の哲学「枯れた技術の水平思考」を考える。eラーニングや福祉分野等々にも考え方の応用ができる!やはり任天堂とApple社は考え方が近い。:『スマートIT』術:ITmedia オルタナティブ・ブログ

今後の任天堂はどうなる?

ここからは個人的な予想としては、どれだけソーシャルでモバイルが進んだとしても、任天堂の得意分野は「楽しいユーザ体験を生み出す」ところであり、ゲームの複雑性を下げるソーシャルやモバイルの方向性には進む感じがしない。なので、他社を追随するような方向性には進まないんじゃないかと思う。

Wiiは本当に革命だったのだと思うけれど、その成果がわずか数年で消えてしまうほどビジネスというのはシビアだ。それでも、任天堂はもう一度何かを巻き起こすだろうか。

ソーシャルゲーム市場はどこまで拡大するのか

GREEの業績をみたので、やっぱりついでにDeNAもみておくかって感じです。

こうしてみると、最初はDeNAの方が大きかったけど、2011年にはGREEはほぼ同じぐらいの売上高まで迫っている。ちなみに、財務諸表の構成も両社でそっくり。流動比率は高く、利益剰余金も高い。売上高営業利益率も高い。まあ、同じ業態なんだということが改めてわかるね、ということだけど。

 

売上高の成長率ではやや下がってきている両者で、DeNAはコンプガチャの影響をあまり受けていない、GREEは影響を受けていて売上低下予測が発生しているのはどういうことなんだろ。

朝日新聞デジタル:コンプガチャ全廃で収益明暗 DeNAは↑、グリー↓ – 経済

この記事を読む限り、DeNAはコンプガチャで出遅れた分、今回の規制の煽りを受けずに済んだということか。

GREEとDeNAのコスト構造の特徴

それぞれのコスト構造を確認してみる。以下は、売上高と営業利益の推移をグラフにプロットして、線形近似したもの。

GREE

DeNA

なんというか、両方とも本当に同じ傾向を示しているんだな。近似曲線の傾き(収益性)も同じだし、切片(固定費)もほぼゼロ。本当恐ろしい数字だなと思う。

 

で、これを踏まえると、ニュースで言われていることもわかってくる。とりあえず市場の期待としては「この成長スピードを維持できるの?」ということだと思うわけです。

一方で、国内のソーシャルゲーム市場がどこまで伸びるのか、というとそろそろ限界なんじゃないの?という話もあるわけで。

この記事の数字をそのまま使ってしまいますが、市場規模はコンソールゲーム(いわゆるプレステとかWii)が5000億円ぐらいの市場で、ソーシャルゲームは3000億円を超えたぐらい。

国内の各ゲーム市場規模を比較してみる(2012年版)|逆転裁判合同ブログ1号店

もちろん、ゲーム市場とソーシャルゲーム市場がそのまま同程度になると決めつけられないし、ソーシャルゲームは携帯をプラットフォームにしているので、ゲームをする対象や機会を増やしていると考えると、伸びそうな気もする。けど、そんな既存のゲーム市場と規模感が変わるほど市場があるのか?というのはやはり疑問が残るところ。

ソーシャルゲーム企業の海外進出

ということで、国内のパイが近いうちに飽和になるだろうから、ニュースでさかんに「海外展開」といわれる理由がわかってくる。

DeNA&GREEの海外展開についてまとめてみた【田中翔太】 : TechWave

ただ、GREEはすぐに結果が得られるような状況にはないようだ。

グリー田中良和社長「海外でいい手応えが得られたことは大きな収穫。」←虚勢?アメリカでは「ドリランド」も「釣りスタ」もランク外 | IRORIO(イロリオ) – 海外ニュース・国内ニュースで井戸端会議

 

ちなみに、最近IPOで話題になったアメリカのソーシャルゲーム企業ZyngaとGREE・DeNAとの売上・利益の違いについて書かれたTechCrunchの記事が面白かった。Zyngaは獲得ユーザ数ではGREEと桁1つ違うほど多いのに、売上も利益率も低い。これは主戦場がPCかモバイルかの違いだそうだ。

巨大ゲーム企業Zyngaが日本のGREEなどより極端に低利益なのはなぜ?このままでいいの?

 

個人的には、どこで新しい事業モデルをつくっていくんだろうということに興味有りです。

まあ、成長期なんで両社とも財務バランスなんてあまり重要じゃないよね。利益率高いし、潤沢なキャッシュ持ってるし。どちらかというと、収益の成長エンジンが止まることが最も怖い。

まとめ

  • DeNAもGREEも同じぐらい業績を上げている
  • ソーシャルゲーム市場はそんなに早くない時期に飽和になるリスク
  • 両社とも海外展開は始まったところであり、結果が出るのはこれから

GREEが今期も業績を大幅に向上

GREEって6月決算なんですね。というわけで、最新の業績が発表されたようです。

グリー、売上高・利益とも2.5倍超に 今期は成長鈍化へ – ITmedia ニュース

グリー、売上高・利益とも2.5倍超に 今期は成長鈍化へ – ITmedia ニュース

 

早速、過去3期と今期、そして来期の業績予想も記事にのっていたので、軽く数字に起こしてみた。

財務諸表(GREE)

 

過去3期は財務諸表が取れたけど、最新のものはまだ財務諸表がなかったので、売上高だけ。それにしても、本当倍々ゲームのように売上が上がっている。勢いがある産業であり、企業であることがよくわかるよね。

そして、ネット産業の特徴もよく現れている。売上高営業利益率は約50%ですよ。少しずつ下がってきてる感じはあるけどね。それに固定資産や固定負債の少なさと、利益剰余金の多さ。流動比率は180%近くあるし、自己資本比率も60%。すごい財務諸表だな。

 

来期は勢いが少し小さくなるとなっているけど、今後どうなるのか。キャッシュフローを見る限りは、営業CFでがっちり稼いで、同じぐらい投資CFに突っ込んでいるので、投資活動は盛んなようで。とはいえ、浮き沈みが激しい業界ではあるので、今後どういう風に数字が作られていくのか、楽しみ。

ビール業界大手4社の業績が不調

なんか業績が不調だというニュースしか取り上げていない気がするけど。ビール大手4社の売上が厳しいようだ。
ビール大手4社、増収減益=販促費が増加―中間決算 (時事通信) – Yahoo!ニュース

売上が低迷している要因は、震災の後遺症も落ち着いて、各社新製品でシェア攻勢に出たものの、みんなが同じようにやったので、販売奨励金がかさんだことらしい。「業績不調」というのは、半期が過ぎて、各社が打ち出している売上予想の半分に届かなかったようで。

 

あまり財務をみてもしょうがないのかもしれないけど、興味本位でみてみる。

まず、業界最大手であるキリンの財務諸表を見ると、徐々に売上が落ちてる。財務バランス上はすごい悪いようには見えない。


次はサントリー。こちらは順調に伸びてるよう。資産効率もキリンより良さそうだ。

財務諸表(サントリー)

 

次はアサヒ。ほぼ横ばいな感じ。何となく流動比率が上の2社より低くて100%を下回っているのが気になる。

財務諸表(アサヒ)

 

最後はサッポロ。こちらも売上が順調に伸びている印象。他の3社とくらべると利益剰余金の割合が低いかな。

 

2011年度について、4社を比較したのが以下。大手4社といっても売上や資産規模はこれだけ違うし、それぞれのバランスシートの構成も違う。

財務比較(ビール大手4社)

 

それにしても、当たり前だけど業態によって全然財務諸表の構成が違うよね。シャープとかNECに比べて、このビール業界は利益剰余金がちゃんと確保されてる。飲食系は短期で情勢が変わりやすかったり、原材料の値段に影響を受けやすいから、あまりリスクテイクした財務戦略を取らないんだろう。

 

で、各社の営業利益、当期純利益と、それぞれ売上高に対する割合を示したのが以下。こうしてみると、売上高営業利益率はサッポロを除く上位3社はあまり変わらないので、この業界はシェア争いが主要な競争軸になるんじゃないかと思われる。

ビール会社(売上・利益比較)

 

コカ・コーラもマーケティング会社と言われるぐらいだし、飲料メーカーというのはどちらかというとマーケティング力によるシェア争いに力点が置かれているんじゃないかと。